初出撃...
長いかな...?
今回もよろしくお願いします!
「起きろセイエイ。」
「んん、おはようございます。」
「起きた所悪いが、ステータスを確認して見てくれ。単刀直入に言うと、加護を与えようとしたのだがミスをしてしまった、と言う訳だ。」
「朝っぱらから何ですかそれ...。」
(まあ確認するに越した事は無い、か。"ステータス")
すっかりお馴染みの言葉を頭の中で唱え、スキル欄の項目を見る
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保持スキル
プレシャススキル:『天上神魔法』
トゥルースキル:『決心』 『高速思考』 『人間観察(体)』『復讐心』『冷静』『執行者』
スキル:拳術Lv.5 神魔回復術EX
称号スキル:____
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ん?何か凄いの増えてるんだけど...。
「えっと、『天上神魔法』って何です?しかもプレシャススキルですけど?」
「そんな物が付いてしまったか...。
まさか私の手でイレギュラーを作ってしまうとは...。一応、解説を頼む。」
「分かりましたけど...。」
怖い事言うなよお...。
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『天上神魔法』:死と再生を司る天上神の御業。魂魄の視覚化、魂魄への干渉、魂魄の持ち主のスキル継承が可能。
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「えーっと、つまり...?」
「お前は私の下位互換だが、神の様なモノになったのさ...。
フフッ、ここまで来ると笑えて来るよ...。」
なんじゃと。てかクリスさんが笑い始めた怖い。
「まあなってしまったのは仕方が無い。ギルドに行くぞ。ガングとルリィが待っている。」
「分かりましたけど、この力って...。」
クリスさんは突然振り返る。その表情は初めて会った時の殺気に満ちた表情だった。
「いいか、その力の使い所を間違えて見ろ。貴様の魂を消滅させてやる。
生まれ変わりも許さんからな...!」
「了解...です。」
「ならいい。貴様なら大丈夫だろう。」
待てよ...元はと言えばアンタのミスじゃあ...。
余計な考えを振り切り、宿を出てギルドに向かう。今日はパーティーとしては初めての戦闘になるのだ。
ここで積める経験は積んでおきたい。
ギルドではルリィさんとガングさんが待っていた。そう言えばガングさん、結構早起きだな...?
「遅いぞ二人共!もう依頼は受けてる!直ぐにでも出発しようぜ!」
「すいません。それで、なんの依頼にしたんです?」
「それが、初心者用の森に亜竜が住み着いたらしいんでな。通常、亜竜は金ランクの冒険者じゃなきゃいけねえ。
だが、俺達には『極星』クリスさんがいるからな!ギルドマスターの特別許可が下りた訳だ!」
「あ、亜竜ですか...!私初めて見るんですよ!楽しみだなあ!」
フッ。まるでピクニックだな。とは言ったが俺も内心凄く楽しみだった。
何故って亜が付くとはいえ、ドラゴンである!ファンタジーの象徴を生で見れるとは感激だ。
「それでは行くぞ。亜竜は群れで狩りをする魔物だ。全く、銀ランクが亜竜狩り等聞いた事も無いぞ。死ぬなよ貴様ら。」
クリスさんから注意を受け、俺達は気を引き締めて『ルクエ警戒森林』に向かう。
森はいつもより静かだった。
絶えず出現するゲイルウルフの鳴き声が聞こえないのだ。
「何かがおかしい。警戒を怠るな。」
「了解。」
「ああ。」
「は、はいっ。」
慎重に森を進むと、そこだけ木が薙ぎ倒されているエリアがあった。
そこには、亜竜の死骸と思われるモノが無数に転がっていた。そして、そのエリアの中心に人が一人立っていた。
「うーん。この位じゃ私の敵にならないわねェ。どうしようかな...。」
立っていたのは少しカールのかかった金髪のイケメンだった。所々金糸で装飾の施された白い礼装の様な服を着て、手には俺のガントレットと同じ意匠の施された三叉槍が握られていた。
その人物は近付いて来た俺達に気付く。
「あら?貴方達、ギルドの依頼で来たの?ごめんなさいね、私が倒しちゃった。
報酬はあげるから...って、まさかまた会うとはね...。」
「久しぶりだな。イレギュラー。」
「クリスさんに...その子は?」
「え?あ、安曇清英です。」
俺が名乗った瞬間、金髪の人物の眼が輝く。
「やだ可愛い!あ、クリスさんと居るって事は、貴方も"イレギュラー"なのね!やだ可愛い!!ルインが予想出来ない子だから、どんな子かとは思ってたけど...。かーわーいーいー!」
そう言って金髪の人物は俺の体をペタペタ触り始める。
呆然として対応出来ない俺の代わりにそれを慌ててクリスさんが引き剥がす。
「あ、あまりベタベタセイエイに触るな!気持ち悪い!」
「クリスさん、もしかして!?狡い!そんな子がいるなんて聞いてない!」
「言う必要あるかぁ!?」
何だ...?この人相当なイケメンだが、口調からしてまさか...オネエ、なのか?
て言うかクリスさんが嫌がる相手がいるとは...。
「あ、自己紹介がまだだったわね。私はアルハム。アルハム・B・トライデントよ。よく見ればリュカオンのお嬢さんもいるじゃない!それに、そこの犬人の方も素敵...。」
「ヒイッ。」
「ああ!貴方がまさか、かの"勇者"なのですか...?」
「そうよ。ルクエには暇潰しに来たわ。だって、王宮はやる事が無いし貴族は面倒だし、嫌になるわ。」
「ゆ、勇者様...!凄いわ!」
まさかシュレア王国の勇者とこんな所で会う事になるとは...。
ルリィさんは大興奮してるけど、ガングさんは顔が青ざめてるな...。
「ねえセイエイちゃん?」
「えっ俺?」
「そう!セイエイちゃんは魔大陸の勇者でしょ?これは運命よ!ここで出会っていなかったら、悲劇的な結末になっていたわ!
だって、私はこんな可愛い子と戦えないもの!」
「てか、俺が魔大陸の勇者って事知ってたんですね...。」
「当然よ!そうだセイエイちゃん!魔王様ともお知り合いなんでしょ?なら、シュレアと同盟を組まない?」
「え?そんな事が可能なんですか!?」
「出来るわよ!応じなかったら滅ぼせばいいのよこんな国。どうせその内、帝国とアスカントに滅ぼされるんだしね。」
なんつーかすげえなこの人。あ、ルリィさんとガングさんが混乱してるな...。まあ、後で説明しよう...。
「そろそろ帰らないと王様が煩いのよね〜。あっ言っておくけど、私がこういう口調なのは他言しちゃダメよ?」
「は、はあ。」
「また今度、絶対会いに来るからねー!じゃあね!」
そう言ってアルハムは礼装の背中部分から生えてきた羽で飛んで行ってしまった。なんと言うか、嵐の様な人だったな...。
てか何気に凄いもの見たな...。
「...セイエイ。」
「...セイエイ様。」
「は、はい。なんでしょう?」
少し間を置いた後、ルリィさんとガングさんは同時に同じ事を喋った。
「説明しろ!」
「説明して下さい!」
「わ、分かりました!『コロナル亭』に行きましょう!そこで話します!」
「これは私にも責任があるな...。」
俺達は急ぎ足で『コロナル亭』に向かう。
さて、どうなるかな...。
〜コロナル亭〜
「さあ、説明して貰うぞ。もう頭が滅茶苦茶だ。」
「私も話に付いて行けないですよ...。」
「分かりました。いいですね?クリスさん。」
「構わん。」
いつも通り冒険者で賑わう『コロナル亭』二階のテーブル席に俺達はいた。
俺は小声で話を切り出す。
「まず初めに、俺はこの世界の人間ではありません。別の世界の人間です。」
「ふむ。ふむ?」
「そんな事が...?」
ルリィさんはともかくガングさん絶対分かってない顔だよアレ。
話を続ける。
「俺は魔王様に魔王国側の勇者として召喚され、この世界に来ました。」
「何かされたか?」
「魔王だなんて...。」
「実は、魔王様は大変お優しい方です。俺はその魔王様の娘が好きです。」
「魔王が...」
「優しい...?」
驚くのも無理は無い。魔王のイメージってのが分からなくなるよな。分かるぞ。
「これが本当なんです。本当に優しいんですけど、俺はその魔王様に魔王様の娘と一緒にダンジョンに置いて行かれました。」
「魔大陸のダンジョンにか!?」
「やっぱり魔王じゃないですか!?」
「二人共声が大きいですよ!!」
「す、済まない。続けてくれ。」
「俺はそこで戦闘経験をある程度積みました。だからルーキー狩りも倒せましたしね。ついでに聞きたいんですけど...。」
「納得が行ったぞ。それで、何だ?」
「ルビーホーネットって強いんですか?」
「「え?」」
ルリィさんとガングさんは二人揃って気の抜けた声を出す。表情からして驚いているが...?
「ルビーホーネットって言ったら白金ランクの冒険者にしか依頼が行かない魔物だぞ...?それこそ、天災級の魔物だ。
ルクエには白金の冒険者はクリスさんしかいねえからな。出たらルクエは終わりだろうな。」
「そうですよ!まさかセイエイ様、ルビーホーネットと戦ったんですか!?」
「あ、はい。素材見ます?まだ持ってるんですよ。」
俺は持っていたポーチからルビーホーネットの針を取り出す。
「尖っていて危険なので、慎重に扱って下さいね。」
「本物...初めて見たぜ...。」
「綺麗...!」
「どうでしょう、信じてもらえましたか?」
自然と心臓の鼓動が早まる。異世界の人間と知って、途端に対応が変わる事も不思議では無い。それに俺は魔大陸出身だ。
「まあ、俺にとってはお前はルーキーだよ。違う世界があるなんてのは分からねえが、もう仲間だしな。とことん付き合うぜ?」
「そうですね!私はセイエイ様のお陰で憧れの冒険者になれたんです!今更何も変わりません!」
「有難う、ございます...!」
(良かった...!やっぱりいい人だった...!俺は運が良いんだ!)
「私からも話がある。貴様らは『死神』を知っているな?」
「ああ。」
「はい。」
「私がその『死神』だ。」
「「え?」」
「正確には天上界に帰って来た魂を、次に産まれる生命に入れたりする役目の神だがな。ただ生者を殺すだけでは無い。」
「ふむ。ふむ?んん?えっ!」
「あわわわわ...!」
「他言をすれば...どうなるかは分かるな?」
「だ、大丈夫だ。問題無い。」
「あわわわわ!」
ガングさんは何処ぞの天使みたいなってるしルリィさんはもう何も言えなくなってるし...。
まあ、無理も無いか...。
そろそろ別の主人公視点に移ります!切り方雑になるかもしれませんが、平にご容赦を...。