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四の異世界英雄譚(旧:四人の悪人)  作者: サンソン
安曇清英編 第1章「魔王国にて」
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ファースト・キス

カッとなってやった。今は後悔している。

それは置いといて、今回もよろしくお願いします!

2000PV超えました!有難うございます!

「さて、肝心の旅団(ブリゲード)の名前なんですけど、何か良いのありますか?」


ルリィさんの入団が決定した事で、俺達は旅団(ブリゲード)設立の条件を満たした訳だが、設立する事になるなんて考えていなかった。当然ながら、名前の事等考えているはずも無い。

そういう訳で、旅団(ブリゲード)の名前を決める為に冒険者ギルドの酒場で会議をしている現在に至る。


「そうだな...。『黄金の夜明け団』とかどうだ!?」


どこの秘密結社だよ!?


「却下だ。」

「あれっ?結構良いと思ったんだがなあ...。」


ガングさんの出したどこぞの秘密結社的案は、死神によってあっさり却下された。


「そうだな...やはり『死神』と言うワードは入れたいな。」


逞しいなこの神は...。


「なんだってそんなもんを?」

「なんとなくだ。」

「なんとなくで死神かぁ?」

「わ、私『アスカント英雄伝』大好きなんです!だから、『英雄』っていうワードを入れたいです!」


『アスカント英雄伝』は天啓を受け立ち上がった英雄アスカントと、種族も考え方も違う四人の仲間と共に現ナリア大陸を平定するまでの道のりを描いた冒険譚だ。

ルリィさんの意見は入れるのが難しいが、一考の価値はある。やってみるとなかなか、キーワードを組み合わせて何かの名前を決めると言うのも悪くない。


「『死神』なんて縁起が悪いがな。セイエイ、どうするんだ?」

「そうですね...。」


これ、後々直せんのかな...?そうだっとしても、今は真面目に考えねばならない。


「なら、『死神の大鎌ラ・モール・フォシーユ隊』で行きましょう!」

「うむ!決定だっ!」

「なかなか物騒な名前だな、おい。」

「何か分不相応って感じがしますう。」


一柱(ひとり)を除いて反対だったが気にしない。俺とクリスさんの目的と合っていると思うし、この名前にする事で死神のイメージ改善も図ろうという訳だ。

...本当は『愉快な死神』ってのも考えていたのだが、どうしてもお下げのアイツが思い浮かんでしまうので、自分の中で密かに却下していた。


「そうだセイエイ、お前絵は描けるか?」

「何でです?」

「エンブレムだよ。エンブレム専門の絵師もいるが、あいつらは収入源が少ないからぼったくる奴が多い。それに、意見を反映させながら出来るからな。」

「そういう事ならやりますよ。これでも絵は得意なんです。」

「おう!イカすのを頼むぜ!ちょっと待ってろ、紙とペンを買ってくる。」


ガングさんは、酒場の近くの売店で手っ取り早く紙とペンを購入して来る。


「ほらよ。」

「有難うございます。では。」


実は俺の中で描くエンブレムのデザインは決まっていたのだ。

自分の記憶を頼りに、出来るだけ精巧に描くことを心掛けて描いていく。五分程でエンブレムは完成した。色塗りは旅団(ブリゲード)自体のランクが上がらないといけないので、今は保留だ。


「こりゃまた...。」

「い、いいんですかね...?」

「ほほう。なかなかだな。」


ガングさんとルリィさんは驚き、クリスさんは何処か楽しそうにしていた。そう、俺の描いたエンブレムは魔王アドラメリク家の紋章である。

しっかりと百合の花を描いておくのも忘れない。


「何で魔王のエンブレムなんだ!?」

「色々ありまして...。俺には思い出深いというか...。」

「ハァ。一体お前何があったんだよ...。」


アスィは今どうしているだろうか。あのダンジョンには魔王様もいたし、リリアナもいた。無事抜け出せているとは思うがアスィの事だ、俺を探しにナリア大陸まで来て、凄腕の冒険者にでもなっていそうだ。

もしも、もしもアスィがこれを見たらという願いを込めて『死神の大鎌ラ・モール・フォシーユ隊』のエンブレムは完成した。

エンブレムの描かれた紙を持ってカウンターに行く。

ここではルリィさんは受付嬢だ。


「ではルリィさん、お願いします。」

「はい承りました!この紙に旅団(ブリゲード)の名前と入団条件等をお願いします。」


名前は『死神の大鎌ラ・モール・フォシーユ隊』だ。入団条件は...「悪を憎み、正義を信じる者」っと。

これぐらいか?


「はい。受理しました。セイエイ様!旅団(ブリゲード)を頑張って大きくしましょうね!」

「はい!これから宜しくお願いします!」

「こちらこそ!」


言わばこれは起業だ。社員を増やし、他社に負けない個性と力が無ければ倒産してしまう。一代で財閥にまで上げてやる...!


「いよし!今夜は旅団(ブリゲード)結成記念だ!セイエイ、行くぞ!」

「はい!...あれっ?クリスさんは行かないんですか?」

「私は少し用事がある。仕事前に酒は飲めんのでな、失礼する。」


そう言ってクリスさんはギルドを出て何処かに行ってしまう。


「『コロナル亭』に行くぞセイエイ!今夜は飲むぞ!」

「そうですね!ルリィさん、俺達は飲みに行きます。明日からどんどん依頼をやって行きましょう。」

「はい!ではまた明日!」

「はい。行ってきます!」


俺とガングさんは『コロナル亭』に向かう。今夜は楽しくなりそうだ。なんせ、男同士で飲む酒は初めてだから楽しいに違い無い。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


薄暗い建物の中をクリスは歩いていた。正確には地下深くに造られた、大型の神殿の中を。

歩く度にカツーンと音が響く程中は広く、床は全て水晶で出来ており、神秘的な雰囲気を出していた。

少し歩くと、クリスの前方に二人の人物が待つように立っていた。

一人は真っ黒いカーディガンにフードを深く被り、もう一人は真っ白いカーディガンに同じくフードを深く被っていた。


「お待ちしておりました。我が主よ。」


黒いフードの人物は重く低い声で喋る。


「麗しき我が主よ、お待ちしておりました。」


白いフードの人物は良く通る澄んだ声で喋る。


「うむ。早速だが、帝国の様子はどうだ?」

「帝国は着々と戦の準備を進めている様です。」

「アスカントも何かを企てています。」

「帝国はやはりイレギュラーが?」

「は。イレギュラーの持つ力とカリスマは凄まじく、『黒蝶』が彼を慕っている程です。」

「彼の力は魔王に匹敵します。早急な対処が必要かと。」

「ならん。下手に介入すれば更なる混乱を招くのみだ。これも人の営み、見守らねばならん。」

「「はっ。」」


『黒蝶』は帝国出身の冒険者であり、『五騎士』の一人だ。宝石の様な美貌を持ち、国を揺るがす程の強さがあった。それに加えて、自由奔放かつ好奇心で動く性格だった。その彼女が慕うとは、俄には信じ難い話であった。


(奴とは一度話をする必要があるな。)


「アスカントは何を企んでいる?」

「は。アスカントは魔族排斥派が大多数を占めたようで、帝国と結託し魔大陸侵攻も考えているとか。」

「魔族を一部迎合しているシュレア王国にも攻め入る予定だとか。」

「近々戦争が始まる。監視をせねばならん。準備を進めておいてくれ。」

「「仰せのままに、我が主よ。」」


黒と白のフードの二人は深く頭を垂れる。クリスは次の問に移る。


「他のイレギュラーはどうなっている?」

「"勇者"も着々と力を付けて来ています。帝国との戦に備えているものかと。」

「アスカントの"勇者"は依然として行方が分かっていません。ナリア大陸全土で目撃例がありましたが、その目的は掴めていません。」

「そうか...。ご苦労。私はルクエに戻る事にする。帝国もしくはアスカントに何か動きがあれば報告せよ。」

「「は。主の御心のままに。」」


クリスは後ろを振り返る事無く来た道を戻る。


(祝賀会か...。一応顔を出しておこう。)


そんな事を考えながら。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


セイエイは『コロナル亭』裏の宿屋で酔い潰れて寝ていた。

爆睡しているらしく、起きる様子は無い。


「セイエイ...お前は私を恨んでいるだろうか。フフッ。私のエゴで無理矢理連れて来たのだから、当然か。」


セイエイの寝るベッドの脇に座り、黒い髪を梳く。自分でも無意識の内に独り言を喋っていた。


「んむ...ガングさん...もう、呑めませんよ...いやホントに...。」


セイエイは寝返りを打ちながら、うなされるように寝言を言う。


「可愛い奴だ...。許してくれ、私はそんなお前をこの様な道に引きずり込もうとしている。全てが終わった時、罪を償おう。

どうかその時まで、私の剣となってくれ。

"死すら穿て我が想い(ラブ・ラグナロク)"」


寝ているセイエイの頬に手を当て、顔を近づける。セイエイの吐息が顔にかかる。人の体で過ごした中でこれ程緊張した事は今まで無かったし、心臓の音がうるさいと感じたのも初めてだった。

そっと、触れる様にキスをする。


しかし何に反応したのか依然として寝ているセイエイは、クリスの背中と後頭部に手を回し、押さえ付けるように力を入れる。


「んむ!?」


口付けによる加護の譲渡は、何万年と生きて来て初めての試みだった。ヒトにとっては愛する者に対してする行為だからこそ、軽々しくは出来なかった。

そして今初めてする所で、この事態である。極度の緊張の中での突然の事態に、パニックに陥ってしまう。そんな時、更に追い打ちを掛けるような事が起こる。


(何故コイツは舌を入れてくるー!?)


セイエイが舌を入れて来たのだ。余りの驚きにあっさりと舌の侵入を許してしまい、そのまま口内を蹂躙されてしまう。


「んんっ!んー!」


キスは三十秒ほど続き、クリスはやっとの思いでセイエイの拘束を解く。


「ハァハァハァ...。本当に寝てるのか...?うっ!?」


突然体から力が抜けベッドに倒れる。強烈な眠気に襲われ、目蓋が重くなる。

当人であるセイエイは、何事も無かったように懇々と眠り続けていた。


(魔力切れ...か?何万年振りだろうか...。便利程度の加護を与えるつもりだったが...これは、想定外だ...。)


そのまま意識は闇に沈んで行く。



やる事はやった感(?)です!

感想レビュー等お願いしますm(_ _)m

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