見かけによらず(?)
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俺は現在十七だ。まだ日本にいたなら、まだ誕生日の来ない高校三年生だった。もし召喚されていなかったならば、父に望まれるまま大学に行き、然るべき職に就いていたのだろう。
元々、俺はプレッシャーに弱いタイプだ。周りからは分からなくとも、自分の中でパニックに陥るタイプだと自覚はある。だから仕事をするにも、出来るだけプレッシャーの少ない職に就きたい等と思っていた。
しかし
「セイエイ様ー!早く早く!」
大仕事は唐突に来る物だと、今ハッキリ分かった。
「ルリィさんッ...!あまり一人で先に行かないでくれッ!もう緊張で胃が...!」
「大丈夫かセイエイ...。まっ、こんな所で大した怪我なんてしねえさ!気軽に行こうぜ!」
「手短に終らせてパーティー手続きをしたい。急ぐぞ。」
「簡単に行ってくれますよ全く...。」
俺達はルリィさんの望みを断つべく、ルリィさんの旅団(仮)入団試験を行う事になった。
とは言っても胃が痛い!貴族の娘にもしもの事があったら、それはもう元の世界に帰るどうこうでは無くなってしまう!そう考えると、ソリットさんの悲痛な叫びの意味が嫌でも分かると言うものだ。
「セイエイ様有難うございます!私、冒険者になって旅をしたりするのが夢だったんです!しかも『五騎士』の一員とも旅を出来るかも知れないと思うと!はぁ〜っ!」
「ハハハッ...!元気で何よりさ...!」
可愛らしいルリィさんの頼みを断れる訳が無かった。ただでさえ本物の美人に驚いてる所に、今度は年下の美少女である。卑怯だ...!
今ルリィさんの来ている服装は、質素なドレスに鎧のパーツを何個か付けたような物だった。
見守る俺のストレスは物凄い物だが、可憐な少女が鎧を着けて微笑んでいるのである。コレはコレで目の正月と言うものだ。
「ところでさっきから気になっていたのだけど、ルリィさんは武器を持っていないんですか?」
「やっぱり、気になりますよね?でも大丈夫です!私にはコレがありますから!」
そう言ってルリィさんが俺に見せたのは、指輪物語もかくやという厚さの本だった。
「何なんですそれ?」
「これはですねリュカオンの家系に代々伝わる秘術『錬金召喚』の魔道書なのです!」
「『錬金召喚』?」
「はい!この本に書かれている魔言を唱えると、それに応じたリュカオンを何千年と守って来た守護神様達を呼び出せるのです!」
は?何それ?え、怖い。
「誰にでも扱える訳では無さそうですね?」
「どうやらそうみたいなんです。私はリュカオンの家系でも持って生まれる者が極めて少ない『錬金王の印』というプレシャススキルを持ってるそうなんですね。そして、そのスキルを持つ者だけが使えるそうなんです。」
「...一応聞きますが、これまでに使った事は?」
「一回、人攫いに遭いまして...。その時に咄嗟にケイオン様を呼び出してしまい、大変な事になりました...。」
「その、ケイオン様と言うのは...?」
「リュカオン家の紋章に描かれているドラゴンです。その時は、人攫いごと建物を何棟か消し飛ばしてしまいまして...。」
「それを何故ルリィさんが持つ必要が?誰かに預けた方がいいのでは...?それを狙う者もいるだろうし...。」
「それがまた不思議なんです。この本必ず私の近くにあるんですよ。ルクエに来る時、家の金庫に入れて、何重にも封印を施して貰って来たんです。でも、私の部屋にいつの間にかこの本があったんですよ!」
怖い話かよお...。
ここでリュカオン、錬金術というワードが出た事で俺の中で確信が生まれた。そう、ルリィさんは恐らく魔大陸のダンジョンで戦ったヨハンの子孫だ。
そう言えば、ヨハンは本当に殺せたのか...?ここに来て妙な胸騒ぎがするが、魔王様やアスィもいたし大丈夫だとは思うが...。
「大丈夫だセイエイ。いざという時は私が止める。」
「クリスさん、いざと言う時はお願いします...!」
「心配するな。ルリィには傷一つ付けさせん。」
やだ、超イケメン...!
四人で話をしていると、俺達の前方から試験課題であるゲイルウルフが五体現れる。いきなり数多くなーい?あっ、ここで胃が痛くなって来た...!
「来ましたね...!セイエイ様、ここは私が!」
「ウッ!ク、クリスさん、お願いします...。」
「了解した。ルリィ、いつでもいいぞ。」
「では、行きます!」
やる気に満ちた顔でそう言った後、ルリィさんは深呼吸をして魔言を唱える。魔道書は手に持っているだけのはずなのだが、勝手にページが捲られて行く。
「"リュカオンの名の下に仕る。誇り高き砂漠の賢者よ、我が呼び声に応え我が敵に裁きを下せ!" お、お願いしまぁーす!」
ルリィさんが魔言を唱え終えると、勝手に開かれたページから文字が空中に飛び出す。そしてその文字は、文字同士が高速で融合し何かを形作っていく。融合した文字達は唐突に眩い光を放つ。
その光が収まると、俺達の目の前にはライオンの体に頭は人間の男性の顔、顔の周りには金色の装飾が施されており背中には巨大な翼があった。
「お久しぶりです!スフィンクス様!」
「幾年かぶりの外の空気...!ああかざりなし!かざりなし!してルリィ殿、敵はいづこに?」
「あのゲイルウルフ達です!バシッとやっちゃって下さい!」
「心得た!」
俺達の目の前に現れたのは『スフィンクス』だった。そう。俺のイメージとほぼ同じあのスフィンクスである。
てか声は女性なんだなあ。古語っぽいの使ってるしすっごい特徴的だな...。
「汝らに問ふ。朝は四本、昼は二本、夜は三本の足で歩く生き物とは何ぞ?答え給へ。」
スフィンクスは五匹のゲイルウルフに問題を投げかける。そう!有名なスフィンクスのなぞなぞである!
だがしかし、人語を理解出来ないゲイルウルフに謎掛けとは些か無理があるのでは無いだろうか?
「ゲイルウルフって言葉喋れたか?(ヒソヒソ」
「言葉を理解出来ねばそれ以前の問題だろうに(ヒソヒソ」
だよネ。
「グルルル...!ギャオオオン!」
スフィンクスの問題をやはり理解出来なかったのか、はたまた本当に分からなかったのかは不明だが、逃げる事をとうに諦めていたゲイルウルフ達はスフィンクスの問いに威嚇で返す。
「違う!違うぞ!あやし悪者めが!」
当然ながら不正解だったらしい。なぞなぞを間違えられたスフィンクスは、不機嫌そうにゲイルウルフを五体纏めて前脚で薙ぎ払う。
凄まじい爆音と共に着弾地点の大地は抉れ、そこに生えていたはずの木と本当に今の今までいたゲイルウルフは跡形も無く消し飛んでいた。
「いとあいなし。知恵無きはあやしぞ。」
「スフィンクス様、ご苦労様です!また何かあったらお願いしますね!」
「うむ。うむ。」
スフィンクスは満足そうに頷いた後ルリィさんの持っていた分厚い本の中に光の粒子となって戻って行った。
「ふう...。どうですかセイエイ様!」
「へっ!?え、ええ〜でも、ねえ?」
意見を求める為クリスさんとガングさんのいる方向に視線を投げる。
「「(スッ)」」
オイコラ。二人揃って視線を逸らすな。
ううむ。課題はクリアしてしまってる訳だしなあ...。
「う〜ん...!仕方無い...!課題は通ったし、ようこそ我が旅団へ!まだ名前は無いがね!」
「や、やったぁ〜!」
跳ねて喜ぶルリィさんに引っ張られる形で、足早にギルドに戻り報告する。
「何だって...!それじゃあ...!?」
「ソリットさん、今までお世話になりました!これからは旅団専属受付嬢兼冒険者として頑張る所存ですので、宜しくお願いしますっ!」
「ぐおおおお...!君のお父上に何と報告すればいいのか...!」
「お父様には私から言いますから大丈夫です!」
「そうじゃなくってね...?」
こうして、俺達の名も無き旅団に可愛らしい仲間が加わったのである。
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