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四の異世界英雄譚(旧:四人の悪人)  作者: サンソン
安曇清英編 第1章「魔王国にて」
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ルーキー狩りの噂

色々考えてたらまたこんな時間に!!

本当にすいません...。

「ぎああああっ...!」

「へえ〜。ルーキーにしちゃあイイもん持ってんじゃねえか?」

「か、返せ...。」


若い冒険者が大剣を持った男に両足を斬られ、持っていた剣を奪われる。


「お前らが...ルーキー狩りか...!」

「だったらどうするんだ?なあルーキーさんよお、知らない人に付いて行ったらいけないって、教わらなかったかあ!?」

「ぎゃあああああ!」


男は倒れていた冒険者の胸を足で押さえ付け、両腕を切り落とす。これで若い冒険者は四肢を失ってしまった。


「チッ、早く殺せ。その剣売れば飲み代にはなるだろ。」

「なあ、どうせ殺すなら新しく覚えた魔法の実験体にしていいか?」


大斧を背負った狼人ウェアウルフの男が急かし、フードを被り木の杖を持った男が提案する。


「おう。」

「んじゃやるぞ。"ヘイトオーバー"」


フードの男が魔言を唱えながら杖を振ると、倒れていた冒険者の下に赤く光る魔法陣が現れる。


「んで、これは?」

「魔物の注意を惹き付ける魔法だ。さっ、金品取ってずらかろうぜ。」

「了解だ。」


フードの男がそう言うと、大剣の男がそれに応じて冒険者のポーチをあさぐり硬貨やらを奪っていく。

すると、周りから呼び寄せられたかの様にゲイルウルフが続々と現れる。


「そろそろだ。行こうぜ。」

「じゃあなルーキー!」

「ま、待って!」


三人の男は走ってその場から逃げてしまう。残されたのは四肢を失った若い冒険者とゲイルウルフの群れになった。

ゲイルウルフは一斉に冒険者に群がり、その肉を食らう。


「ぎいいいあああ!やめっ、やめろ!ひいいあああ!死にたくない...!」


冒険者はひとしきり絶叫した後、動かなくなる。ゲイルウルフ達は冒険者の肉を残らず食い尽くし、そこには引きちぎられた革鎧と骨しか残らなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ルリィさんに言われた通りギルドを出て左に曲がりしばらく歩くと、確かに外に出るための門があった。

鎧を着けた門兵らしき犬人ウェアドッグに声を掛ける。初めて見た亜人が男ってのはアレだが、この人は犬の部分があまり出ていないんだな。犬って分かるのは尻尾や耳ぐらいだ。

個人差があるのだろうか。


「すいません、依頼で森に出たいんですけど。」

「冒険者か。冒険者証はあるか?」

「ええ。これですよね?」

「...うん。よし!通っていいぞ!お前、見たところルーキーだな?」

「はい。今さっき冒険者になりました。」

「俺はガング。犬人ウェアドッグだ。お前の名前は?」

「アズミセイエイです。」

「よしセイエイ、初任務だ。生きて帰ってこれたら飯でも奢ってやる。」

「有難うございます。約束ですよ?」

「ああ。約束を破っても俺に得が無いからな。それに、これは俺の習慣みたいなもんなんだ。

ああそうだ、最近はルーキー狩りがいるって聞く。許せねえが犯人がまだ分かってないらしい。くれぐれも気を付けろよ!」

「分かりました!それじゃあ行ってきます。」

「無理はするなよ!」


門兵のガングさんに見送られ俺は街を出る。

確かに壁の向こうはすぐ森だった。この森にゲイルウルフがいるのだ。ソロは少し不安だが、一応自分の実力を知っておきたい。


「森か。いくら初心者用の依頼でも森で迷うのは嫌だな...。」


最悪の場合を想定しつつ、森を進む。

幸い五分程度散策したところで目標のゲイルウルフを見つけられた。

図鑑で見たオオカミと見た目はほぼ同じだった。群れで来られると厄介だが、今目の前にいるのはたった三匹だ。ゲイルウルフはこちらを見て唸っていた。

三匹の内の一匹が飛び掛ってくる。


「遅いよっと!」


飛び掛って来たゲイルウルフの頭を殴って地面に叩き付ける。頭は潰れており、一撃で絶命したと見える。

後の二匹は慌てて逃げたしたのだが、それでも遅いので瞬時に追い付いた。


「逃げるにしても遅い!」


手刀で首の骨を折り二匹のゲイルウルフを絶命させる。証拠となる尻尾を三匹分ナイフで切り取り、ポケットに入れておく。


(これはポーチを買っておく必要があるな...。いくらか分からないけど、買えそうな分稼いでおくか。)


ポーチの値段について考えていると、後ろから人が近付く気配がする。


「よお、凄かったじゃねえか。だけど見ない顔だな?」


近付いて来たのは冒険者だった。大剣を背中に背負い、獣の革が付いた軽鎧を着けていた。


「ああ。昨日来て冒険者登録をしたルーキーだよ。」

「本当にルーキーか?ゲイルウルフが二匹以上いりゃあ、そこら辺のルーキーならとっくに逃げ出してるぞ。」

「そうか。ところで誰だ?」

「すまんすまん。俺はセッツだ。仲間とダンジョンに向かっててな。仲間を待たせて小便してたら、ゲイルウルフの鳴き声が聞こえてな。見に行ったらお前だった訳だ。」

「なるほど。俺はアズミだ。」

「アズミか。俺達と一緒にこの先のダンジョンに行かないか?お前もいずれ行くんだから、今のうちにダンジョンについて知っていた方がいいと思うぞ?」


セッツの視線は明らかに俺の戦闘服トレンチコートとガントレットに行っていたのが、敢えて言わずに誘いに乗ってみる。


「確かに。ならお言葉に甘えさせて貰うよ。」

「貴族様みたいな言葉遣いだな。決まりだな、行こうぜ!」


セッツに付いて行き、森を歩くと少し先に人が二人いた。一人はフードを後ろに垂らして杖を持った魔道士の男、もう一人は大斧を担いだ狼人ウェアウルフだった。

二人がこちらに気付く。


「おいセッツ!遅いぞ!...ん?ソイツは誰だ?」

「コイツはアズミ。見所のあるルーキーだったんでな。ダンジョンに一緒に行かねえかって誘ったのさ。」

「ふうん...。まあいい。俺はドルジ。」


狼人ウェアウルフの男は納得した様子で名乗る。


「アズミだ。よろしく。」

「ああ。コイツはベラント。」

「ベラントだ。魔道士をやってる。ルーキーにしてはいいナリだな。」

「上司からの餞別みたいなものさ。」

「上司?店ででも働いてんのか?」

「そんな所だ。」

「ベラント!質問は歩きながらでも出来る!行くぞ!」


セッツに急かされ、ベラントは質問を止める。俺も聞きたい事はあるので、歩きながらセッツに聞く。


「三人のランクはどのくらいなんだ?」

「俺達は三人共銅だ。もう少しで銀のはずなんだがなあ。」

「ベテランって感じか。」

「そうだな。経験はある。」


面倒な事態を想定し、ダメ元で心の中にいるはずのもう一人の自分に呼び掛ける。


(おーい俺、起きてるか?)

(んだァ?人が折角気持ち良く寝てたってのに...。)


おお...!返事あった。


(テメエが起こしたんだろ...。で、何だァ?)

(それなんだが、多分今から人を殺す事になりそうだ。正直言うと面倒だからその時は任せたい。言っておくが、終わったら体ちゃんと返せよ?)

(本当か相棒!?イイねえ!昂ぶるなあ!何人だ!...ほお、三人か。しかも冒険者と来た!)

(その時は合図をする。それまで待ってろよ?)

(気が利くじゃねえか!オーケーイ...久々に動けるぜ...!)


無事承諾を得られて良かった。ガス抜きの様なものと思えばいいか。コイツらが噂のルーキー狩りなら、アイツの方が上手く料理してくれそうだし。


「着いたぜ。ここがダンジョン『暁の礼拝堂』だ。地下墓地がいつの間にダンジョンになってたらしくてな。それのせいでこの有様だそうだ。」


目の前には廃墟になった礼拝堂があった。かなり時間が経っているようで、あちこち壁が欠けていたり植物が至る所を覆っていた。


「行くならさっさと行くぞセッツ。」

「そうだな。少し稼いだら直ぐにでも帰って飲むぞ。」

「分かってる。行くぞルーキー!付いて来いよ!」

「大丈夫、努力するさ。」


いざ廃墟となった礼拝堂の中に入り、地下へと続く縦穴を降りる。

地下はかなり広くトンネルのようになっており、壁に開けられた窪みに棺の様な物が何個も横にされて入れられていた。全員降りたところで奥に進む。

少し進んだところでいきなり周りの棺が震えだし、中から何体もの死体が這い出てくる。


「おっと!早速お出ましだな!コイツらは『コフィンアンデッド』だ。動きは遅くても油断するなよ?攻撃されてもなりふり構わず突撃して来るぞ!」

「分かった。"ファイアボール"!!」


這い出てきたコフィンアンデッドの一体に魔法を放つ。ファイアボールの直撃を受けたコフィンアンデッドは粉々になり、残骸も直ぐに灰に変わる。


「なっ...!」

「魔法か...しかもこんな強力な...。」

「おいセッツ、アイツホントにルーキーか?」

「ああ。見た事無い顔だったからな。移民か何かだろ...。こっちの方が人数は多い、大丈夫だ。」


あの三人、やっぱり黒か...。ヒソヒソ喋ってる様だが、こっちは『集中』のスキルで聞き取れる。

セッツは証拠として生かすとして、後の二人はこの際殺してもいいだろ。あっちからやるまで待つのも癪だけど、仕方が無いか。


「どうした?」

「いや、お前魔法が使えるのか。」

「人並みにな。」

「人並みってなあ...。」

「魔法を使うなんて当たり前だろ?」

「前衛職が全員魔法を使ったら魔道士の立場が無いぞ!それに、魔法を使えるのは一部の奴だけだ。」

「そうなんだな...。」


(魔法は使えるだけで凄いって事か?なら、ガントレットに感謝だな。)


コフィンアンデッドの群れを倒した後、かなり奥に進んだはずだ。俺の勘が正しければ、もうすぐ何かしらの形で仕掛けてくるはずだ。本当にルーキー狩りなら、絶対に許さない。


「なあ、アズミ。」

「何だ?」

「その篭手、かなり強力そうだが何で出来てるんだ?」

「確か、神鉄オリハルコンだっけな。」

神鉄オリハルコンだと!?本当か?少し見せてくれよ!」


そう言ってセッツは俺のガントレットに手を伸ばして来る。サラッと避け、面倒になったのでこちらから仕掛ける。


「ハハハッ。何言ってんだよセッツ。殺すぞ(・・・)?」

「え?」

「これに触ったら殺すぞって言ったんだよ、ルーキー狩りさん?いや、達か。」


俺の発言に三人は驚いた後、俺から距離を取って一斉に構える。


「何でバレた?...まあいい。アズミ、その篭手と金品出せば命だけは助けてやるぞ?長生きしてえだろ?」

「どこからバレたか知らんが、生きては返さねえ。」

「そうだなあ。さっきの魔法についても喋って貰わないとねえ。」

「まあ、バレても一人なら勝ち目なんかねえぞ?大人しくソレ、渡せ。」

「...ハァ。」


すぐに態度を変えた三人にもう溜息しか出ない。


(おーい変わってくれ。誰もいないから、好きにやっていいぞ。終わったら替わってくれ。)

(オウケェーイ!さあて、暴れさせてもらうぜェ!!)

(言っとくけど、大剣の奴は四肢もぎ取って生かしとけよ!)

(了解!了解!)


もう一人の自分に必要事項を伝えた瞬間、俺の意識は一瞬暗くなり、意識が戻ると視点は同じまま体が動かせなくなっていた。


「ふう...。久々に好き勝手出来んだァ。覚悟は出来てんだよなあ?」

「お前...誰だ...?」


再び、殺戮の獣が放たれる。


もう深夜更新安定になりそうです...。

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