三度の決心
昨日と深夜のアクセス障害で遅くなりました!
すいません...。
「ううっ!」
「大丈夫かアスィ!今治癒しよう。動くなよ。」
「ありがとうリリィ。危なかったわ。」
アスィの腹部は貫かれて等いなかった。浅い傷はあったものの、リリアナの治癒魔法で直ぐに塞がる。
「無事でなによりだなァ?」
「アンタ誰よ!セイエイに何をしたの!」
「まァ、落ち着けって。フッ!」
そう言いながら、セイエイはアスィの方を見ながら後ろから来た敵の頭を裏拳で吹き飛ばす。
「心配しなくても、俺は俺だァ。今は少し相棒の体を借りてる。相棒はお前が攻撃されるのを見てたからなァ!ちょーっと幻覚を見せて怒った時に入れ替わったんだよォ。」
「アンタ...やっぱり誰なの...!?」
「しつけえなあ。まっ、しいて言えば安曇清英の凶暴な部分ってこった。ん?どうだ、分かったろ?分かったなら座ってろ。コイツらは俺がやる。あぁ竜野郎、テメエもだ。さぁて...一匹残らず駆除してやるぜェ!!」
音を聞きつけて集まったのか、軽鎧の人間兵士は10人にまで増えていた。セイエイを名乗る人物はその陣の中に突っ込んで行く。
その中の一体がセイエイを迎撃するべく前に出る。
「遅ェよ。まずは一匹。」
その一体の頭を加速させた右拳で撃ち抜く。頭は爆発したかのように破裂し、頭を無くした体は地面に倒れ、動く事は無かった。
仲間の悲惨な倒され方を見ても、軽鎧兵士に恐怖等の感情は見られない。
「面白いモン見せてやるよ。名前は〜、そうだな。"オキシジェンデストロイヤー"!!」
またも突っ込んで来る兵士の左腕を、手刀で切断した後首を掴んで持ち上げ、魔言らしきものを唱える。
突如、兵士の体を泡のようなものが包む。泡に包まれた兵士の体は、瞬く間に崩れて消えて行き骨もボロボロと崩れ落ちてしまう。
(何だあの魔法は...!?我の知るモノでは無いぞ...。)
リリアナは驚きを隠せなかった。魔法が生まれる以前から生き、魔法が生まれてからはありとあらゆる魔法を我が物として習得して来たのだ。なのに、アレは知らない。触れただけで相手が分解されて死ぬ魔法等、知るはずが無い。
(我が知らぬ魔法等無いはず...。だとすれば、アレは何だ?新しい魔法を創造したとしたとでも...!?ヤツは一体何者なんだ!?)
リリアナが推測をしている間に、セイエイは既に2体を殺していた。一体は手刀で首を刎ね、もう一体はファイアボールを撃ち、爆発四散させた。
「チッ、やっぱ人造人間は殺した感じがしねえ。...んだよ相棒。なに?お前もやりてえのか!そうか!だが相棒。お前が殺すのを渋ったせいでアスィは傷付いた!そうだろ?なら引っ込んでろォ!」
セイエイは何も無い天井を見ながら、誰かと会話をするように喋る。
「リリィ、今のは何?誰と喋っていたの?」
「あくまで予想だが、いつものセイエイとセイエイの凶暴な部分が、体の主導権を巡って争っていると見える。だとすれば、ここまで人格同士が互いを認識しているのは初めてだ。会話もしている。」
「セイエイ!早く戻って来なさいよ!私はそっちのセイエイは嫌いなんだから!」
「なあっ...!?ア、アスィは俺が、嫌い、なのか...? ......ぐうう!うおおお!!テメエらのせいだあ!!」
離れていたアスィから掛けられた声に、凶暴な方のセイエイは予想外に傷付いていた。
余程精神にダメージを受けたのか、セイエイは先程の敵を侮る態度から打って変わって激昂する。
「嬲り殺しなんて面倒くせェ!!テメエら皆殺しだァァァ!!"限界突破 Lv.Ⅰ"!!」
セイエイはそう言うと、限界突破の魔言を唱え敵陣に突っ込む。セイエイが地面を蹴った瞬間、一体の兵士が、瞬時に迫ったセイエイに上半身を拳一発で消し飛ばされ、力無く倒れる。
「次だ...!"マジックエクスプロージョン"!」
魔言を唱える。一人の兵士の体が爆発し、血と肉がそこら中に飛び散る。
体内の魔力を強引に爆発させられたのだ。
そのまま次の兵士の元に突っ込み、手刀で首を刎ね、後ろにいた兵士は爪先で鳩尾を突いて殺す。
少し離れた所にいた兵士に、別の兵士が持っていたナイフを投げる。身体強化と限界突破で強化された右腕で投げられたナイフは兵士の頭を貫通し、後ろにあった建物に刺さる。
「次で最後かァ!?簡単には殺さねえ...。...何ッ!?止めろ!相棒ォォ!...くそ...が...。」
突然何かと会話をすると、そのままセイエイは仰向けに倒れる。
「セイエイ!」
「どうなったのだ...。」
セイエイが起き上がる。その目は優しさの含まれている目だった。
「勝手に人の体使いやがって...。一体ぐらいは俺がやるさ。あ、アスィ、ただいま。リリアナさんも。」
「もう!何やってんのよ!心配したのよ!?」
「あのまま戻って来ないのかと思ったぞ...。」
「ごめん。俺なりに決心が出来たよ。最後、やって来る。」
そう言うと、セイエイは右拳に火を付与する。そして最後に残っていた兵士に突撃し、兵士の頭を掴む。
「殺せないってのは甘えだったんだな。だから、俺はもう躊躇わない。アスィは俺が守ってみせる。」
手に更に力が篭る。
「だから...!」
掴んでいた兵士を自分の真上に投げ、右拳を上に掲げる。
「俺は、大切なものの為に戦う!"ファイアボール"!!」
それは真上に飛ばされた兵士に直撃し、爆散する。
セイエイはスッキリとした顔でアスィの元に戻る。
「セイエイ貴様、なかなかしてくれるではないか。アスィは俺が守る。だったか?良きかな良きかな。」
「いや、それはですね...。」
「ねえ、セイエイ。」
「何?」
「私はセイエイにとって大事なの?」
「勿論さ。俺はアスィに嫌われたく無いと思ってるし、アスィが嬉しいなら俺も嬉しい。凶暴な俺だって、アスィを守る為に出てきたんだ。つまり...。」
「つまり?」
「多分、俺はアスィの事が好きなんだと思う。もしそうじゃなかったとしても、俺はアスィを守りたいと思ったんだ。」
言った時にふと気付く。アスィの顔は赤くなっていた。
「ふふふ、セイエイめ貴様なかなかやるな。この女たらしめ。」
「茶化さないでよリリィ!」
「アスィも嬉しいのだろう?」
「まあ............うん。」
「ならば良い事だ。さて、阿呆の決心も固まった所で探索再開だ。」
「阿呆は酷いですよ。決心グラグラだったのは認めますけど。」
軽口を叩きながらも、俺は心の中の自分に感謝する。
(ありがとな。お前が居なかったら俺は一生ああだったかもしれない。)
(いいって事よ相棒。困ったらお互い様だ。そこで早速お願いがある。後で体を少し貸してくれ、アスィに嫌われたくない。)
返事にも驚いたのだが、アスィに嫌われたままというのを恐れているらしいのが1番驚いた。
(考えとくさ...。説明もしないとだしな...。)
(宜しく頼むぜ相棒。俺は少し眠る。大丈夫だ。危機が迫ったら起きて助けてやるよ。じゃあな。)
そう言ったきり返事は無かった。俺はもう一度ありがとうと言いながら魔王様の言っていた事を思い出す。
"人間とも戦う事になる"
今度は本当に生きた人間を殺すのだろうか。だが、誰であろうとアスィに危害を加える奴は殺す。不必要な悪もだ。もう決心は揺るがない。
「大丈夫さ。俺が出来たなら大丈夫。」
そう自分に言い聞かせ、街の探索に集中する。
今日もあともう1話更新したいと思います!