ナトリウムと燻製肉
グルメ回(?)です。ご指摘などありましたらお願いします( *・ω・)ノ
ーーチュドオオオオン!
爆発音と共に湖に巨大な水柱が出来る。
「フゥ〜!」
「これ凄いわ!!ドーンって!」
「セイエイ、もう一回だ!」
何故俺達がこうも興奮しているのか。時間は少し遡る。
「ダイナマイト漁って何?何をするの?」
「ダイナマイトは特殊な薬品が無いと作れないけど、代わりに出来そうな物があるんだ。」
「ふむ、それで我に作って欲しい物があると。」
「そうです。」
ダイナマイトはニトログリセリンがあれば土に染み込ませて...と出来るのだが、衝撃で爆発する物なので危険過ぎると判断した。なので今回はナトリウムを水に入れた時に起こる化学反応を利用する。
金属ナトリウムは、水に入れるとナトリウムから水に向かって一気に電子が放出される。電子が無くなり、正電荷を帯びたナトリウムは内部で強力な反発力が発生し、破裂四散する。そして細かくなったナトリウムは水と接触する表面積が増大する為、化学反応が連鎖的に進行し、最終的には爆発する。
「それでは、お願いします。」
「うむ。」
先程の燻製器は触ってみた感じ鉄だった。ならば金属ナトリウム塊も再現出来るのでは無いか!?という事だ。まあ俺が呼吸出来てる時点で大抵の元素あると思うけども。
すると、リリアナの両手から30cm四方の金属塊が出て来る。成功かな?
「セイエイよ、この金属を何に使うのだ?我には脆い金属にしか見えんが。」
「うん。何だか簡単に割れそう。」
「まあまあ、見ててって。」
俺は恐らくナトリウムである金属塊を殴って割り、手の平程度の大きさにする。そしてそれを湖に向かって投げる。
「それっ!」
ポチャン。と音がして湖に波紋が出来る。
そして...
ーードオオン!
爆発音がして水柱が出来る。
「む!?」
「キャッ!?」
この爆発には流石のリリアナも驚いたようだ。アスィの女の子らしい声も久しぶりに聞いた気もする。
湖には俺の見た事も無い魚が浮き上がっていた。湖の水に含まれている魔力と魔力で作ったナトリウムが反応して、予想以上の爆発になった。これは思わぬ成果だ。
中には明らかに湖のヌシ的な魚竜がいるけど、食べられるのかな?
「いいい、今のは何!?」
「どういう魔法なのだ...?」
凄い驚いてるな。だが無理も無い。金属の塊を水に投げ入れただけで爆発が起こるのだ。化学反応を知らないこの世界の住人にとっては、確かに摩訶不思議だろう。
「リリアナさんに作ってもらった金属は水に入れると爆発する性質を持つんです。そんな事よりほら、魚回収しましょう!」
「面白い事をするな!良かろう前菜という訳だな?」
「大漁じゃない!」
「セイエイよ、まだ例の金属は余っているな?」
「ええ、余ってますけど。」
「我にもやろせろ!」
「リリィがやるなら私もやるわ!それちょうだい!」
「了解!!一応危険な遊びだから、くれぐれも気を付けてね?」
「分かっておる!」
「大丈夫よ!心配性なんだから!」
俺は2人に適当な大きさに砕いたナトリウムを渡す。
「てやァッ!」
「それっ!」
リリアナは水切りの要領で投げているのだろうが、アレかなり速くないか?一方、アスィはプロのピッチャー張りのフォームで湖に投げ入れる。球速は甲子園最速だろう。知らんが。
2人の投げたナトリウムは、ほぼ同時に湖に入る。そして
ーードドオオオオン!!
「なかなか楽しませるではないか...!」
「爽快ねこれ!」
「じゃあ最後に余った部分を投げ入れようか!」
また使う機会があるかもしれないので、手の平に収まるくらいは残しておく。これ1キロあるんじゃないか?この大きさの魔製ナトリウムを入れたら、爆発の規模はどうなるのだろう?
「そぉりゃっ!」
俺は身体強化を行い、ナトリウム塊を湖に投げる。ボチャンと音がなりナトリウムが湖に入る。
ーーチュドオオオオン!!
「フゥ〜!」
「これ凄いわ!!ドーンって!」
「セイエイ、もう一回だ!」
「残念ですが今ので最後ですよ。」
「なッ...。」
リリアナはあからさまに落胆した後、何かを思いついたような表情をする。
「我がもう1度作ればいいではないか!」
「そろそろ燻製も出来てるでしょうし、食事の後にしましょう。」
「お腹減ったしそうしましょ!。」
「そ、それもそうだな...。だが、むう。」
リリアナはかなり残念そうな顔をしていたが、余程気に入ったのだろう。主に爆発を。
俺達はある程度魚を回収した後、燻製器の置いてあった場所に戻る。
燻製器を開けると煙と共に食欲をそそる香りが鼻を突き抜ける。俺はトレントチップに付けていた火を消し、来る途中リリアナに作ってもらった皿に肉を置く。俺達が座る為の鉄のイスと食べ物を置く鉄のテーブルもリリアナ製の物だ。俺は魚を焼くための金網と七輪も作ってもらってしまった。このスキル、便利過ぎる...!悠久の時を生きた竜は一人軍隊ならぬ、一人工場になり得ると言うのか...?まあ簡単な物に限るから百均限定だろうがネ!
「お肉は私が切り分けるわね!」
「俺は魚を焼いとくよ。」
「これが燻製という物か。なかなか良い香りがする。アスィ、早く我の分も切り分けてくれ。」
「分かったから、急かさないでよ!」
そう言うとアスィは手際良く肉を切り分ける...のだが妙にアスィの分だけ多いな。気のせいか?
俺は後ろ髪を引かれる思いだったが、今は魚を焼く事に集中する。弱めの"プロミネンスピラー"で上からも焼くため、直ぐに焼き上がる。腹に詰めた香草の良い香りがする。そうして焼きあがった魚を皿に乗せる。
準備完了だ。テーブルには、取り分けられた俺自慢の異世界燻製肉と異世界焼き魚が皿に乗せられてある。
「美味しそうじゃない!」
「燻製とやら、堪能させて貰おうか...!」
「それじゃあ食べようか!頂きます!」
俺は早速燻製肉を1切れ頬張る。鼻を突き抜けるスモークの香ばしさ、肉もジューシーで美味しい。これはヤバイぞ、手が止まらない。
「美味しい!これ凄く美味しい!」
「肉の旨みと香ばしさが絶妙だ...!これが燻製という物かッ!!」
アスィは美味しいという言葉しか出てこないようだ。リリアナもかなり美味しそうに食べている。
燻製を食べ終えた俺は、焼き魚に手を伸ばす。一応普通そうなモノを選び、かつリリアナに食べれるものか否かを見極めてもらった物だ。
異世界初と言える魚は淡白な味だった。丁度いい塩味と香草のいい香りが絶妙にマッチしている。なかなかイケる!
あっという間に肉と魚を食べてしまった俺達は、皿等の後片付けや、余った食材の処理をした後に今後についての話をする。
「さて、食事も済みましたし先に進みましょうか。リリアナさんも来るんですよね?」
「うむ。ここにいても暇なのでな。」
「それじゃあ行きましょ!えっと、この先は何があるんだったっけ?」
「少し前に滅んだ古代文明の遺跡だ。狂った錬金術師らの作ったゴーレムや醜い魔物がそこらじゅうにいる所だ。アレは到底認められぬ。」
「ゴーレムに人工の魔物ですか...。」
「ここまではほんの肩慣らしだぞ?次のエリアから、敵の強さは段違いだ。覚悟しろ、僅かな油断が死を招くぞ。」
「分かってます。」
「大丈夫よ!行きましょう!」
まだ見ぬ敵に緊張を抱きながら、俺は先に歩くリリアナとアスィの後を付いていく。死にたくは無いな、と思いながら。
森林エリア終了です!燻製肉の感じとかダメだったんじゃないかと心配ですが...^^;