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四の異世界英雄譚(旧:四人の悪人)  作者: サンソン
安曇清英編 第2章「七剣姫編」
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大賢者

仕事が忙しい上に疲れるので眠くて更新滞ってばかり...何卒のんびりと...


「なんだよ...清英のヤツ、また休みか?」

「これで一週間...安城君は安曇君の事心配してるの?」

「ああ.?まあ、そんなとこ.....。」


安曇清英の小学校からの幼馴染、安城雪平は隣の席の女子からの質問を軽く流し、また思考に没頭する。


(アイツが俺に何も言わずに居なくなったり何処かに消えたりなんてしないはずだ...。)


「安曇はまだ旅行中だそうだ。よーし朝のホームルーム始めるぞー。」


担任が来てからも雪平の頭の中は清英の事で埋まっていた。


(なんか引っかかるな...清英...お前は、今何処に居るんだ...?)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「......。」

「えーと......。」


アスィの鎧改修の依頼をした翌日、何故か俺はクリスさんと喫茶店で二人きりになっていた。


「確か、姉さんが呼んだんですよね。アスィも話を合わせたみたいですけど、なにか聞かされてます?」

「その、この場を作るよう頼んだのは...私なんだ。」

「クリスさんが?何かあったんですか?」

「その...言うほど大事では...いやいや!私にとっては自分自身の存在に関する問題なのだがな...。いや、その、なんと言うか。」

「は、はあ。」


クリスさんは俺にあまり目を合わさずに挙動不審な動きをしていた。


(いや、可愛いんだけど...クリスさんがこんな顔する事なんて見た事無かったな...。よほど重要な事なのか...。)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(クソッ!何でこんなに緊張しているんだ私は!?ルリィのせいで...奴が変な事を言ったからじゃないか!!)


「どうしました?気分でも悪かったりします?」

「だ、大丈夫だ。も、問題無い。」

「凄いフラグっぽい...。」


(ま、不味い。何から話せば良いんだ...!?というか何を話すんだ!?ま、まずは目を合わせなければ...ッ!)


「ぐぅぅ...!」

「ど、どうしたんです?そんな怖い顔して。やっぱりお腹でも痛いんじゃ...?」

「そ、そんな事は無い!ただ...。」

「ただ?」

「やはりダメだ!」

「ええ!?ちょっと!クリスさん!」


(やはり私には無理だ!目を合わせていると思考が働かなくなってしまう...!)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ええ...クリスさんどうしちゃったんだよ...。」


クリスさんはいきなり席を立つと、店から出て行ってしまった。あまりにも突然過ぎた上に紅茶もまだ運ばれて来たばかりだった。


「まあ、しばらくすれば戻って来るだろうし...。ん...この紅茶、美味しい...。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


店を出たクリスは走って近くにあった物陰に入る。


「なんで戻って来たんですか!」

「ダメだ!やはり私には無理だ!言葉が出て来ないし心臓がうるさくて考えられない...!」

「ビシーっと言っちまえばいいんだよクリスさん!あんたそういうの得意だろ?」

「それとこれとは訳が違う!」

「取り敢えず行ってください!何でもいいから結果を残して来てください!」


クリスはルリィに押されて泣く泣く喫茶店に戻る。セイエイはまだテーブルに居た。


「クリスさん!どこ行ってたんです?」

「ああ、少し外の空気を吸いに、な。」そんな事はいいんだ。話というのはだな......。

「はい。」


(緊張する...こんなに心臓がうるさいとは...!)


「セイエイ、私は...その...お前が...。」

「俺がどうかしたんですか?」

「お前の事が...。」

「俺の事が...?」

「す...」

「クリスさん!こんな所に居た!セイエイ君も一緒だね。」

「アル!何でここに?」


突然入ってきた勇者の登場で喫茶店は驚きに包まれる。


「訳は後で。クリスさん、『マーリン』が話をしたいと。」

「...分かったが...!」

「クリスさん?」

「私はこの怒りを...どこにぶつければいいんだッ...!!」

「ええ...?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺達はアルに連れられ、王城の中でもかなり奥に位置する部屋の大扉の前に居た。俺達と言っても、ルリィさんやガングさん、三人組は王城の外で待ってて貰っていた。


「『マーリン』って誰なんですか?」

「彼女だけは名前があまりにも有名過ぎて混乱を避けるために普段でもコードネームなの。」

「何をしたんです?」

「ナリア平定に貢献した英雄の最もそばに居た人。そして魔法の発展に尽くし続けている大賢者。」

「え!!それって!!」


アルの言葉を聞いた途端にアスィは大声で驚く。


「しーっ。彼女は変に神経質だから、うるさいのは厳禁。だからこんな奥に部屋があるの。」

「その『マーリン』って人はやっぱり...!!」

「そう、大賢者『フィオラ・カルナ』。魔法の理を知り、英雄の傍でその偉業を支えた魔道士。」


アルはそう言いながら大扉を開ける。金具が軋みゆっくりと扉が開くと、部屋は膨大な数の、それこそ数えるのが正気の沙汰では無い量の書籍によって埋め尽くされていた。

そしてその奥には一人の小柄な女性が座っている。


「凄い...!なんだこの部屋...!」

「『アーサー』か。それに...天上神...いや、死神殿。ん...なんだこの馬鹿げた魔力は。魔王でも来たかな?」

「正確には魔王の娘よ『マーリン』。」

「ふむ...興味深い。では名乗ってくれ、魔王の娘、そして勇者と同じ異世界からの旅人よ。」


『マーリン』は椅子に座ったまま、俺達にそう要求する。


「俺はセイエイ。安曇清英。」

「私はアスィよ。アスィ・アドラメリク。」

「メイファ...。」

「それにこれは...記憶に無い魔力...これは死神殿と似て非なる何か...?」

「リリアナ・グローリー。これが我が名だ。」

「なるほど、白竜は旅人の味方になったか。妹君はどちらに?」

「愚妹は分からん。アレは生来気まぐれでな。どこかをふらついているか、犬死にしているかだろうよ。」

「なるほどなるほど。」


女性は机に立てかけてあった、先端に宝石や何かの金属で作られた何かが付いた杖を持つ。

そして今度は椅子に深く座ると、俺達に向かって手招きをする。


「近くに来て欲しい。今度は私が話す番だろうからな。」

「聞きたい聞きたい!」

「ふふふ...魔王の娘は好奇心旺盛だな...。話と言っても昔話...童話や英雄譚より少し詳しい程度だが。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ある街があった。街の長の息子の名をアスカント。彼は正義漢であり、優秀な冒険者でもあった。彼は人望もあり、次の長は彼で決まりだと皆が思っていた。


アスカントと小さい頃から一緒に育って来た少女が居た。少女は彼に想いを寄せており、彼もまた彼女を想っていた。少女は将来彼と結婚し、夫婦として冒険者としてこの街を守っていくのだと思っていた。


しかし世の争乱はそれを許さなかった。


それもそう、当時はシュレア騎士団、帝政同盟、魔竜率いる魔物の軍勢、この三つがナリア大陸の覇権を争い大陸全土を戦場にしていったのだから。


そこからはほぼ英雄譚通り、アスカントは神と名乗る『ギルテカリス』の啓示を受け戦場へと向かうのだ。少女は彼に付いて行った。彼だけを行かせたくないとね。


街の皆に見送られ、旅は二人から始まり、そして最高の職人を目指すドワーフ、後に恋敵になるエルフ、善人であり天秤となる堕天使。この五人で魔竜を倒し、二つの勢力を和解させ彼自身はギルテカリスの教えを広める為の国を作った。そしてナリア百年戦争は終結、大陸に千年の平和がもたらされた...。


しかし、そこからだ。


奴は、ギルテカリスは彼を連れて行ってしまった。そして私は彼に想いを伝える事も出来ず、奴に不老不死の魔法を掛けられた。


なぜなのか?


もう皆死んでしまったかもしれない。だとしたら何で私は生かされているのか。理由を探す為、奴に話を聞く為に私はまだ生きている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「こんなところだろうか?」

「アスカントは生きているの!?ほんとに?」

「恐らく、だがね。私がそう信じたいだけかもしれない。千年...想い人を待つにしてはあまりにも長過ぎるよ...。」


カルナはそう言うと寂しげな表情を作る。


「昔話はこれくらいにして、本題に入ろう。アスカント共和国への侵攻戦、私は前線には出れない。なので『アーサー』や君達に頼みたい。奴ら...とりわけ枢機卿達は絶対に何か、重要なものを隠し持っているから絶対に捕まえて色々吐かせろ。勿論教皇は取り逃してはいけない。アレはもう敬虔な信徒の一人とは言えないだろう。」

「分かってます。神ってのと絶対関係がありますし、俺にとってはここが分岐点になります。」

「ありがとう。ようやく私にも転機が訪れそうで久々に心後落ち着かない。こんな気分になれるとは死神殿には本当に感謝しなくてはならない。」

「なに、話のわかる人間は貴様ぐらいなのでな。」

「ふふふ、エルフには負けるがね。」

「ハハハ、エルフは頭が固いのが多い。まあ仕方が無いがな。」


そう言って『マーリン』とクリスさんは笑い合う。こうして見ると仲のいい友人の様である。


「話は終わりか?」

「ああ。下らない話で済まない。」

「そんな事ないわ!だって大賢者カルナに会えたんだから!それだけで嬉しい!」

「私にもファンが出来る日が来るとは。余程才能のある作家と吟遊詩人が居たんだろう。ありがとうアスィ。」


まだその知の深さを見せていないであろう大賢者カルナとアスィは楽しそうに戯れる。どちらも規格外なのだという事を除けば実に微笑ましかった。


(さて...鍛冶屋に少し顔出して確認して...明日は早そうだな...。)


初の大規模な戦闘への参加に一抹の不安を抱きながらも、頭にはしっかりアスィの鎧を気にする余裕があった。

きっちり最後まで更新できるか...一応終わらせるつもりです。気長にお待ち下さいな!

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