誓い
遅れました...今回も宜しくお願いします。
「ッラァ!!」
「あがっ...!」
『アリスッ!』
セイエイは勢い良く踏み込むと、アリスの腹部に思い切り拳を撃ち込む。アリスは吹き飛ばされ、地面を転がる。
『セイエイさんどうしたんですか!?』
「どうしたもこうしたもあるか。ソイツを殺す。それだけだ。」
『待って...!』
「どきやがれッ!」
「ぐああっ!」
アリスに向かって歩くセイエイを止めようとしたエクリジットはセイエイに蹴り飛ばされ、元の姿に戻りながら地面に打ち付けられる。
「エク!...セイエイさん!こんなの酷いですよ!」
「止めるんだサナリィ...!今の彼は...セイエイさんじゃない...!」
「...。」
「アイツらは何なんですか!?一体何と戦っているんですか!」
「敵は...ギルテカリス。神って奴だよ。」
「え...?」
セイエイの言葉を聞いたエクリジットと駆け寄るサナリィは少し呆然としてしまう。
「信じられないなら良い。だがアレを作らせたのは間違い無く奴だ。」
「そんな...事が...。」
「でも...!だからって!アリスを殺す必要なんて無いじゃないかっ!」
「いいか、よく聞け。あの女の身体は魔法陣の刻印やら薬やらでもうボロボロだ。今ああしてるのも脳みそ誤魔化して無理矢理動かしてるだけだ...!その痛みはお前にも、俺にだって分からん。だが苦しいのは見て分かるだろ!?...だから楽にしてやらねえといけねんだろッ...!」
「でも...そんな...!」
エクリジットは俯き、悔しさから地面を殴る。
「セイエイ...。」
「大丈夫だ死神。これは『相棒』と話し合って決めた事だ。」
「そうか...だが...くっ...!」
「で、覚悟は出来たか?」
「あっ...ぐっ...死にたくない...死にたく、ないよ...!生きたい...!」
「今更何を...。」
「そうだな。だが、希望は...。」
「て、テメエ!」
泣きじゃくるアリスに後ろからアルフレートがゆっくりと近付く。そしてアリスの肩に手を置くと、何かを呟き始める。
「ぅうぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
「お前!?何しやがった!!」
「はっ...!?まさか、ここまで読まれていたとは...キュレアデアァ...!!ぐっ!おお...。」
「アルフレート...!」
「アルビオ...お前は...本当に騙されやすいな...。」
アルフレートは後ろから突進して来たアルビオの剣に胸を貫かれる。アルフレートはアリスの頬に手を当てる。
「アリス...私を...憎んでくれ...。私は...何も出来なかった...私は...。」
「ああ...あああ...!」
アルフレートは言葉の途中で倒れ、そのまま息絶える。アリスは再び剣を構える。
「私は...また...1人に...。」
「君は、1人じゃないだろ!」
「え?」
「エクリジット!危ない!ソイツから離れろッ!」
「アリス...僕と一緒に暮らさないか?サナリィだっている!寂しくなんか無い!」
アリスは剣を離しはしないが、エクリジットの言葉を聞く度に後退る。
「そうだな...分かった。」
「...クリスさん!」
「私が殺す。」
「は...え...?」
静かに告げるクリスの言葉を飲み込めないエクリジットはその場で固まってしまう。
『体、使うぞ!』
(畜生ッ...どうなってんだかな!)
「クリスさんっ!何をする気なんです!?」
「私が原因だ。私が片を付ける。ー"天装"。」
「...クリスさん!」
クリスさんは魔言の様な言葉を短く呟くと、体が黒い煙に包まれる。煙が晴れた時、今まで生きてきた中で感じたことの無い寒気が全身を駆け抜ける。
(な、なんだこれ...!?)
膝が震える。脳が、本能が危険信号を発し続けている。姿を変え、ボロ布の様なものを纏うクリスさんを、動物として残っていた最低限の本能が危険だと知らせている。手には巨大な鎌。おとぎ話と同じ姿の死神が居た。
「セイエイ...そこに居ろ。私が全て終わらせよう。」
「あ、ああ...!」
上手く口を動かせない。クリスさんはそのままアリスへと向き直る。
「...クリスさんっ!やめて下さい!ア、アリスは!」
「強い子だ。エクリジット、分かっているはずだ。彼女はもう助からないと。ならばその命、私が回収する。」
クリスさんは大きく鎌を構える。だがまだ間合いには入っていない。
「アリス...ッ!」
「...エク...!」
エクリジットはアリスをクリスさんから護るように抱き締める。
「嗚呼...美しい...。だが..."アニマ・リベラシオン"。」
クリスさんが鎌を振る。何が起きたかは分からないが、エクリジットの泣き声で何があったのか分かった。
「アリスッ!死なないでくれ!生きるって...生きるって約束したのに...こんなの...!」
俺は元の鎧の姿に戻ったクリスさんに駆け寄る。
「何を...したんですか?」
「...魂を解放した。あらゆる呪縛からな。その結果、苦しみは消えた。だが体はとっくに限界だった様だな...。」
エクリジットは倒れるアリスを抱き起こし、必死に呼び掛けるが、アリスは弱々しく微笑むのみだった。
「エク...約束、守れなくてごめんね...。私の人生は...こんなだったけど、エクは大切な人を守ってあげて...。」
「アリス.....ああ!サナリィもおばあちゃんも村のみんなも、僕が守る!約束する!」
「エクは...やっぱり強いね...。こんなに幸せなら...生きてて...良かっ...た...。」
「アリス...!」
アリスは微笑みながらエクリジットの腕の中で静かに息絶える。
「エクリジット...私は...。」
「...大丈夫ですよ。クリスさん。アリスは必死に生きたんです。でも、納得は出来ていません...。」
「そう、だな...。」
「アリス達の様な存在が必要な世界...それを変えてください。」
「...約束しよう。」
エクリジットは俺の元へ駆け寄って来る。
「セイエイさん、僕はこの村を守ろうと思います。大切な人もいる、この村を。」
「それが、約束か。」
「はい。」
「...もうこの村を離れるよ。建物の改修は王都の業者でも来させる事にするよ。」
「それは大丈夫です。村の事は村のみんなで解決します。」
「もう、一人の男だ。エクリジット。」
「ありがとうございます。アリス達のお墓を作ろうと思うんです。手伝ってくれませんか?」
「...ああ。」
その後、怪我をしていたガングさんと眠っているアスィをサナリィの家に預け、四人の遺体を森に運ぶ。森の奥で四つの穴に遺体を埋め、墓標代わりにアリスとアルフレートの長剣を深く突き刺しておく。
「アリス...君の分まで生きるよ。だから、見ていてくれ。」
「アルフレート...お前は確かに私の友だった。お前の剣に誓おう、私は真の騎士になる。悪を悪として斬り、正義を成す騎士に!」
アルビオンさんは自分の剣とアルフレートの剣を交換し、そう宣言する。俺達は村に戻り、アスィを起こしガングさんを立たせて王都に戻るため出発する。
『ポリュージョン』との戦いは終わった。セイエイ達はアスカントの王都侵攻を防ぐべく、再び『勇者』アルハムと騎士達の元へ赴く。
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現『魔人解放戦線』団長、アトリアに会うべく王都に向かう俺達。そこでクリスさんとアルに紹介された『マーリン』とは...?
次回、『王宮魔術師』 嫌な予感しかしないなあ...。
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