入国
「ただ今より国民の皆様の生存権と結びつけたキーワードの配布を開始致します。キーワードの再確認や再発行は受け付けておりませんのでご注意下さい。それでは良き日々を」
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自分の命と繋がった三文字のキーワードを頭の中で何度も反芻しながら僕は自分に無償で与えられた家へと向かった。
「何故この国はこれで成り立つのだろう…」
そんな疑問が浮かんでしまうほど僕に与えられた家は立派だった。
リビングでくつろぎながらテレビを眺めていると自動でチャンネルが切り替わり、この国の大統領の『いかにも私がこの国のトップです』という雰囲気の姿が映し出された。
大統領は一つ咳払いをしたのちに少し間をあけて新しい国民に向けて歓迎の言葉を述べた。
「ようこそ皆様コトノハの国に。入国していただく前に説明した通りこの国には国民が果たすべき義務はたったの一つしかございません。『自分のキーワードを守る』これさえ守っていただければ働く必要も勉学に励む必要も一切ございませ…」
そこまで聞いたところで僕は反射的にテレビの電源を落としていた。
どうにもコイツの顔は嫌いだ。
嫌悪感と共に噛んでいたガムをゴミ箱に吐き捨て、電気を消し、1日を終えた。