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黄昏

「にゃあむ」

ぱしこん。

「みゃ!」


「にゃあむ」

ぱしこん。

「みゃみゃ!」


「あのー、お父さんもうその辺で……」

「にゃあむ」

しゅたっ。ぱしこん。

「ぎゃ!」


夕暮れの中、家に帰った魔法使いと子猫はお父さん猫にぱしこんされました。

貫禄ある白猫のお父さんの前足がぱしこんぱしこんと高速で二人の額を小突きます。


「……みゃむ」

「イテテ……」

「にゃ」


額を押さえる二人をお父さんがむすっと睨みます。

お前らが冒険など百年早い、と言ってるようです。


「みゃ!」

スカッ。

「にゃあむ」


子猫、反撃のぱしこんはさっとかわされてしまいます。

子猫、涙目です。


「お父さん、すいませんでした!」

「……みゃう」


魔法使いが土下座します。

子猫もしぶしぶ隣で土下座です。


「……にゃあむ」


待ってろというようにぺしんとしっぽで地面を叩いてお父さんはどこかに行ってしまいました。

子猫は不満顔です。


「みゃん!」

「おおう!」


子猫はぺしりぺしりと魔法使いに八つ当たりの猫パンチしてふいっとそっぽを向いてしまいました。

ご機嫌ななめのようです。


(……なんのかんの言ってお父さん好きなんだよなあ)


魔法使いは苦笑いです。

子猫のお父さんは引く手あまたの優秀なハンターです。

力はありませんが鋭い爪と素早い身のこなしを持っています。

魔法使いも何回か勧誘されているところを見たことがありました。


子猫はそれをずっとうらやましそうに見ていました。

「いつか私だって……」。

そう言うような横顔を魔法使いも度々見かけていました。


ある意味で。

自身の成長について諦めてしまった魔法使いにとって、それは。

まぶしいと感じた、それが――この子猫に魔法使いが構う理由でした。


「にゃあむ」


いつの間にか戻ってきたお父さん猫は口に赤い木の実をくわえていました。

そしてそれを魔法使いの足元に落とします。


「……貰っちゃっていいんですか?」

「にゃあむ」


お父さん猫は鷹揚に頷きました。

魔法使いは軽く頭を下げて木の実を摘もうとして――


「みゃ!!」


その一瞬前。

子猫は疾風のごとく走り去り木の実を口にくわえました。


「ちょ、ちょっと……」

「にゃ!」


止める間もなく――子猫の喉が動きます。

こくりと――嚥下して。

そしてそのまま――とさりと倒れました。


子猫は知らなかったのでしょうか。

この木の実が適合者に力をもたらす一方、資格なき者が手にすれば死をもたらすと。


「ちょっと待てよ……待ってくれよ!!」


悪い夢なら覚めてくれよ!

魔法使いの叫びが夜の空に溶けました。


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