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夜刀

“子羊が第一の封印を解いたとき、雷のような声が「出てこい」と言うのを、わたしは聞いた”





 現在、対ネフィリム部隊として実戦投入されているのは、ほとんど最終世代のハルファス――即ち『ヴォルフ』『レーヴェ』『レオパルト』『フォーゲル』といわれる者たちである。


 しかし、それら四種を最終世代と定める前は、複数の獣たちの特性を強化して組み込んだ、より戦闘力の高い個体を生み出す研究が主流であった。

 その方針がハルファス計画の中途段階で変わった理由は、いくつかある。


 複数の獣の本能が混じり合った結果、ヒトとしての理性が著しく減退する傾向が多く現れたこと。

 生後半年以上の生存率が、あまりに低かったこと。

 研究者が意図しない形質変化――完全なヒトガタとして生まれるべき彼らが、組み込んだ獣たちの外見的要素を備えて生まれてくるケースが見られたこと。


 何より、彼らが互いを仲間として認識しなかったことが、複数の獣の遺伝子を組み込んだハルファスを生み出す研究に歯止めをかけた。


 単一の獣の遺伝子を組み込んだ者同士であれば、その特性の出方に多少の差異はあっても、互いを同族と認め、群れを形成することも容易い。

 しかし、複数の獣の遺伝子を持つハルファス――『キメラ』は、たとえ同じ獣の組み合わせで生み出された個体でさえ、己の同族とは認めなかった。


 受精卵に組み込まれた獣たちの遺伝子のうちどの特性が強く出るかは、母胎という外的要因によるところが大きい。

 研究者たちの技術がどれほど上がろうと、それだけは完全に制御できるものではなかった。

 結局のところ、すべての命を育むのは、女性の子宮にしか叶わない領域なのだから。


 最終的に、研究者たちは結論せざるをえなかった。

『キメラ』は、すべてが唯一無二の種として生まれてくる。

 ほかの個体と共通の教育プログラムを組めない以上、彼らを育てるためにはそれぞれの特性に合わせたプログラムを組むしかない。

 どれほど高い戦闘能力を持っていようと、集団教育に適応できないのでは、人類の砦を形成するだけの数を育てるのは不可能だ。


 これらの臨床結果を踏まえ、単一の獣の特性をより強化して組み込むという方針に切り替わったのが、三十一年前。

『キメラ』を生み出す研究は凍結され、それ以前に生み出された者たちの多くは十歳を越える前に死亡。

 成体となれたわずかな者たちも、研究所で次世代のハルファスを生み出すための礎となった。


 だが、どんな遺伝子の気まぐれか――

 漆黒の翼を持って生まれた夜刀は、神に抗う力を求め続けた研究者たちにとって、まさに奇跡のような存在だった。

 彼は幼い頃から非常に高い知性と優れた身体能力を発揮し、周囲が教えたことをスポンジが水を吸うように吸収していく。

 健康状態にもなんら問題はなく、多くの『キメラ』が越えることのできなかった十歳の壁をあっさりと乗り越える。


 人々が最終世代のハルファスを完成させるための研究に明け暮れる中、彼は初期計画におけるハルファスの理想型そのものの姿でそこにいた。

 強く美しく、神に抗う堕天の黒い翼を持ち、常に研究者たちの期待以上の成果を見せつける。

 いつしか人々は、夜刀にありとあらゆる知識を与え、敵と戦う術を教え、彼の潜在能力を最大限引き出すために必要なワンオフの装備を開発しはじめた。


 希望を、見たかったのかもしれない。

 どれほど理想的な姿をしていようとも、この世にたったひとりの孤独な『キメラ』に、人類すべての未来を委ねるなど叶うはずもない。


 それでも、彼の存在は確かにそれを知る人々の支えとなりえた。

 計算上では、夜刀は飛行タイプの中位種さえ単独で討伐できるスペックを持っている。

 彼は、人類がネフィリムと対等に戦えるだけの力を手に入れられるという、希望の証だったのだ。


 ハルファスは、人類を守って戦うためだけに生まれてくる。

 そのため彼らは初期計画の頃から、肉体のピーク時が長く継続するよう作られていた。

 個人差はあるものの、彼らの肉体は十八歳から二十代半ばまで成長すると、それ以降はほとんど変化を見せなくなる。


『キメラ』計画の最終期に生まれた夜刀もまた、誕生から二十二年目を境に成長を止めた。

 老化を――というべきか。


 だが、獣の遺伝子を取り込んだハルファスたちは、総じて短命であった。

『キメラ』の多くは、十歳になるのを待たずに死んだ。

 現在まで生き残っている者は、夜刀を含めて世界中でも数えるほどしかない。

 計画変更後に生まれた単一種のハルファスたちも、二十歳まで生きる者は多くなかった。


 獣は、戦えなくなったときが死ぬときだ。

 人類が彼らに押しつけた業は、それほどに深いということなのか。


 現在、対ネフィリム部隊として実戦投入されている最終世代のハルファスたちには、いまだ短命種としての兆候は現れていない。

 それでも、彼らがみな三十歳まで生きることはないだろうと言われている。


 人類が彼らにヒト以上の力を求めた代償は、彼らの命そのものだった。

 この国で唯一、対ネフィリム戦力として育成された『キメラ』の夜刀は、その事実を知っている。


 彼は、たとえ同族とは認識できなくても、同じ環境で生まれ育ってきた者たちを数えきれないほど見送ってきた。

 突然変異の変わり種として、どれほど例外的に長く生きていようと、夜刀に残された時間はそう長くないだろう。


 だからこそ、研究者たちは彼を国内最大のシェルター『ラオデキア』に配属しなかった。

 夜刀の力は、最終世代のハルファスたちとは比較にならない。

 周囲の者たちが夜刀に頼り、縋ることを覚えてしまっては、近い将来彼が喪われたときに余計な混乱を招きかねない。


 ――この国最強のハルファスは、生まれてくるのが早すぎた。

 彼が『キメラ』でなければ、これほどの力を持つこともなかったのだろう。

 だが、その知性の高さとネフィリムに対する戦闘センスは、彼が『キメラ』であるか否かという問題とは関係がない。


 夜刀が最終世代のハルファスとして生まれていたなら、と研究者たちの誰もが思った。

 この国で唯一見出された、人類の希望――フェンリル。

 彼の守護を任せるのに、夜刀ほど相応しい者はいなかっただろうに。


(……と、言われてもな。こちらも、好きで三十路の坂を越えたわけではないんだが)


 耳にたこができるほど聞いた研究者たちの嘆きを思い出し、夜刀は小さく息をつく。

 普段は砂に隠れている『ワダツミ』の地下入り口に『ラオデキア』の高機動車を誘導しはじめたとき、インカムに連絡が入った。


『夜刀。彼らの中に、負傷者はいるか?』


 ここの統括責任者、海上自衛隊一等海佐の渡部だ。

 夜刀は、先ほど挨拶を交わした者たちの姿を思い浮かべ、答えた。


「全員、見た目はほぼ無傷。ただし、血のにおいをさせている者が六名。その内二名は、かなりにおいが濃い」

『了解した。――おそらく、フェンリルに負傷を知られないようにしているのだろう。彼らの努力を無駄にするな』


 なるほどな、と夜刀は苦笑する。

 見た目は二十歳前後の青年でも、フェンリルの実年齢はまだ九歳だ。

 いくらすでに実戦投入されているとはいえ、仲間の負傷を冷静に受け止めるにはいささか幼すぎる。


 だが、たとえフェンリルが見た目通りの年齢でも、彼を守護する者たちは、わざわざ彼に負傷を知らせるような真似はしなかっただろう。

 大切な主に己の不甲斐なさを露呈したがる者など、いるわけがない。


 夜刀が地上での移動に使っているのは、大型のバギーだ。

 背中に羽根を背負っているため、屋根のある車両だとつっかえてしまうのである。

 愛車のハンドルを操り、砂の中にぽっかりと開いたスロープを下っていく。

 二台の高機動車が続いて入ると、ゆっくりと天井が降りてくる。


 スロープを下りきったときには、空へと続く道は完全に閉ざされていた。

 それを少し残念に思いながら目的のポイントでバギーを止め、ハンドサインで高機動車に駐車スペースを指示する。


 エンジンを切った高機動車から、真っ先に白い髪の『ヴォルフ』が降りてきた。

 チームリーダーの六花だ。

 夜刀に敬礼し、口を開く。


「先ほどは、ご支援ありがとうございました。――我々の『ワダツミ』派遣は、こちらでは秘匿事項なのでしょうか?」


 現在、この地下スペースにいるのは、夜刀と彼ら『ラオデキア』のメンバーだけだ。

 本来なら常駐しているはずの整備員たちの姿が見えないのを、不思議に思ったのだろう。


 長旅とネフィリムとの連戦で疲弊しきっているだろうに、一瞬で周囲の状況を確認するとは、随分空間把握能力の高い『ヴォルフ』だな、と感心する。


「はい。このまま、直通エレベータで本部まで参ります。高機動車の整備と物資の補給については、すでに手配しておりますのでご心配なく」

「了解しました。よろしくお願いいたします」


 彼らを先導しようと踵を返しかけた夜刀は、そこで自分に向けられる強い視線に気がついた。

 思わず振り返れば、フェンリルが好奇心いっぱいの瞳をきらきらと輝かせている。


 ――ハルファスたちは『キメラ』の存在を学んでいたのだろうが、フェンリルは一般家庭で育ったネイティブの子ども。

 はじめて見る翼を持つ人間に、興味津々のようだ。


『ワダツミ』に配属されてからも、夜刀は一度も収容されたネイティブと接触したことがない。

 いくら対ネフィリム戦において貴重な戦力であっても、何も知らない者たちにとって、夜刀の姿は間違いなく異形である。

 不要な混乱を避けるため、今後もネイティブの前に姿を現す予定はなかった。

 ……当然ながら、夜刀は彼らとの対応マニュアルなど持っていない。


 どうしたものかと思っていると、六花がまったくの無表情のままフェンリルを見る。


「彼の翼は、本物。興味があるなら、あとで触らせてもらいなさい」

(おい)


 何を勝手なことを、と思ったが、フェンリルが「はーい」といい子のお返事をしたので、夜刀は六花に抗議するのをやめた。

 他人に翼を触られるなど想像しただけで虫唾が走るが、フェンリルならば問題ない。


 エレベータで地上の本部に入り、フェンリルと六花、それにフェンリルの専属サポーターである『ヴォルフ』の冬騎以外のメンバーは、適当な理由をつけて医療棟に向かわせる。

 渡部の指示で、ハルファス専属の医療班が待機しているはずだ。

 血のにおいのしない者も、これだけ厳しい旅のあとだ。

 一通り、メディカルチェックはしておくべきだろう。


 やはりフェンリルにメンバーの負傷を知られるのは不本意だったのか、六花が視線で感謝を伝えてきた。

 彼女の左手には、無骨なジェラルミンケース。

 完全抗体サンプルが入ったそれを『ワダツミ』のトップに届けるのが、彼女に与えられた第一の任務だ。


 彼らを本部中央棟の最上階応接室に案内すると、渡部と彼の副官である初老の三等海尉、そして研究所の人間が二名待機していた。

 六花が渡部たちに挨拶し、ジェラルミンケースを手渡す。

 渡部はすぐにローテーブルの上でケースを開き、中を検めてうなずいた。


「『ラオデキア』からの貴重な贈り物、確かに受領いたしました。それでは――」


「渡部くん。完全抗体とやらのサンプルが届いたそうだね。まったく、待ちくたびれたよ」


 突然響いた声に、その場の全員が振り返る。

 渡部が、強張りきった顔で声の主を見た。

 彼の許可がなければ入室を許されないはずの応接室に現れたのは、場違いに上質のスーツに身を包んだ中年の男。


 男は、夜刀に気づくと一瞬驚いたように目を瞠り、それから不快げに目を細めた。


「きみたちが、けだものと人間を混ぜて作った化け物を兵器として使っているのは承知しているがね。そんなものを、私の目に入るところに置いておかないでくれないか」


 その瞬間、室内に渦巻いた殺気は、『ラオデキア』から命がけの長旅を越えてきたハルファスたちが発したものだ。


 夜刀は、男の背後に能面のような顔で控えている若い准海尉を、心底げんなりとした気分で見た。

『竜宮』と『ワダツミ』とのパイプ役である彼は、コンピュータシステムへのハッキングの腕を買われて任官されたと聞いている。

 フェンリル一行の訪問も、あちらにすべて筒抜けだったということか。

 そっと、ため息をつく。


(この『竜宮』の腰巾着がいなけりゃあ、渡部のオッサンもずっと楽に『ワダツミ』の統括官をやってられたんだろうな)


 ハルファスたちの放つ殺気にあてられ、渡部たちばかりかフェンリルまで青ざめている。

 しかし、男はこれほどあからさまな敵意にも、まるで気づいていないらしい。

 堂々とした足取りで、室内に入ってきた。


 そして、怯えた顔で冬騎の背後に移動したフェンリルを見ると、訝しげに片眉を上げた。


「資料には、九歳とあったはずだが……十九歳の間違いだったか。――きみが、新堂拓己くんかね?」

「……は、い」


 フェンリルが、震える声でぎこちなく答える。

 男は満足そうにうなずいた。


「そうか。私は、海底シェルター『竜宮』の代表、尾木真澄という。我々は、きみを歓迎するよ」


 夜刀は、驚いた。

 いずれ『竜宮』のお偉方のひとりだろうとは思っていたが、まさかトップが直々にやってくるとは思わなかったのだ。


 フェンリルは、ますます怯えたように身を縮めている。

 見かねた渡部が、尾木に声をかけた。


「尾木代表。彼らは『ラオデキア』から到着したばかりです。彼とのお話は、またの機会にしていただけませんか」


 尾木は一瞬むっとしたように眉を寄せたが、すぐにやれやれとうなずいた。


「まぁ、いい。これから彼は、『竜宮』で暮らすのだからな。話をする機会など、いくらでもある」

「……は?」


 目を瞠った渡部に、尾木は当然だろう、と笑う。


「彼は、我が国で生まれた唯一の希望だ。危険な地上になど、置いておけるはずがない。――新堂くん、ついてきたまえ。『竜宮』の一員となる者が、いつまでもそんな薄汚いけだものどもと同じ格好をしているものではない」


『ラオデキア』のハルファスたちの放つ殺気が、今にも明確な殺意に転じようとしたとき――


「――夜刀」


(……っ!?)


 ぶわり、と全身が総毛立った。

 低く己の名を呼ぶ、その声に。


 尾木に牙を剥く寸前だった『ヴォルフ』のふたりが、同時にフェンリルを振り返る。


「拓……己?」


 冬騎の呼びかけに、フェンリルはくくっと肩を揺らして顔を上げた。

 そこに、幼く怯えた表情はかけらもない。

 彼はゆっくりと腕を組み、傲然とした眼差しで夜刀を見た。


「来い」


 その命令に、夜刀の体は勝手に応えた。

 渡部の背後の壁際からフェンリルの前まで、ほんの数歩のこととはいえ、己の意思によらず動いた体に驚愕する。


 体の支配権を奪われ、不快に感じて然るべきなのに、フェンリルを間近に見上げる夜刀の全身を包んでいるのは――紛れもなく、歓喜だった。

 ぞくぞくとした陶酔感に、背筋が震える。


 フェンリルは、完全抗体の入ったジェラルミンケースをちらりと見ると、困惑しきった顔をしている研究員のひとりに視線を向けた。


「それを、今すぐこいつに投与しろ」

「……は?」


 ぽかんと瞬きした相手に、フェンリルはすぅっと目を細めた。


「聞こえなかったのか? その完全抗体を、今すぐ夜刀に投与しろと言ったんだ。どうせ、予備のサンプルも入っているんだろう」

「は、はい……。しかし」


 研究員が、わたわたと無意味に両手を踊らせる。

 フェンリルの声が、一段低くなった。


「おまえは俺に、三度も同じことを言わせる気か?」


 明確な怒気を孕んだ声に、研究員がますます蒼白になる。

 ひんやりと、肌に触れる空気が温度を下げた。

 顔を強張らせた研究員が慌ただしくジェラルミンケースを開き、同梱されていた注射器のパッケージを開く。


「や……夜刀。腕を」


 促されるまま、消毒用アルコール綿の感触と注射針の小さな痛みを、どこかぼんやりとした意識で受け入れる。


 完全抗体のサンプルを使うのは、渡部の部下だと聞いていた。

 有能で年若く、将来『ワダツミ』を率いていくのに相応しい――こんな、いつ寿命を迎えてもおかしくない自分などではなかったはずだ。


 夜刀に残された時間は、あまりに少ない。

 それでも最後に、生まれてはじめて体の芯から震えがくるほどの歓喜を知った。

 生きていてほしい、と心の底から願える存在に巡り会えた。


 これが同族意識というものなのか、それとも違う何かなのか。

 なんだっていい。

 ただ、彼の目に自分の姿が映ったとき、感じた。

 彼は『キメラ』として生まれた自分から、孤独を奪った。

 彼がこの世に存在する限り、自分はひとりではないのだと。

 たったそれだけのことが、どうしてこんなにも胸が痛むほど嬉しくてたまらないのだろう。


 そして――少しだけ、悔しかった。

 自分が生まれてくるのがもう少し遅ければ、あるいは彼と出会えたのがもう少し早ければ。

 ……そうすれば、これからも彼のそばにあることを、最初からあきらめずとも済んだだろうに。


 空になった注射器が離れていっても、まだ実感がわかない。

 わからない。

 なぜ彼が、こんなことを命じたのか。

 自分の体から発症の危険を拭い去って、一体なんの意味がある。

 未来のない自分が彼のためにできることなど、せいぜい死ぬまでの間にわずかな敵を屠るくらい。


 そんな夜刀の顎をぐいと強引に持ち上げたのは、この場を支配している覇王の指だった。


「なぁ、夜刀。――今ここで、おまえを殺せる男の名を言ってみろ」


 目眩がする。

 彼の瞳に、今は自分の姿だけが映っている。


「フェン、リル」


 それは、夜刀の主の名。

 彼は、満足げに笑ってうなずいた。

 なんという――法悦。


「そうだな。おまえに命じていいのは俺だけだ、夜刀。これからは、俺のためだけに飛べ。おまえの翼は、俺のもんだ。必ず、俺の腕に帰ってこい。今後おまえが、ほかの人間の腕を止まり木にするのは許さない」

「……はい」


 最初で最後の主に、頭を垂れる。

 夜刀は、孤独と人類への隷属から解放された。

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