満開の桜の下で
時代設定は【江戸時代】と明記はしてありますが、しっかりした設定はしておりませんので、ゆる~~い感じで読んでくださいませ。
桜が満開だった。
はらはらと落ちる花びらを、大きな黒い瞳が追う。風が枝葉を揺らすたびに、薄桃色の花びらがくるくると回りながら落ちるのを、飽きもせずに見つめている。
縁側に座り、垂らした両足を交互にブラブラさせながら、紅色の花をあしらった小袖を着た少女は、少し厚めの唇を尖らせながら、何かを口ずさみながら桜を見つめていた。
「瑠璃、寒くはありませんか?」
はたはたと乾いた足音をさせながら、少年がやってきた。少女――瑠璃は、くるっと小さな顔を少年に向け、静かにニコリと微笑んだ。
「那津様でしたか。寒くはありません。ここは日がよく当たるので、時折吹く風が気持ち良いくらいです」
「あぁ、そうですね。この辺りだけ、とても暖かい!良いところを見つけましたね。それに、満開の桜が瑠璃の頬に色を映しているみたいだ」
「もうすぐこのお庭で、花見をするそうですよ」
「それは楽しみだ。是非私も!」
「もちろんです!」
少年――那津は、瑠璃の横に座ると、同じように足をぶらぶらさせて、桜を眺めながら、他愛の無い話を始めた。
そんな二人の様子を、侍女たちはニコニコと笑顔で見守りながら、仕事を進めるのだった。
地方の大名である初司田政吉の娘瑠璃と、隣の領土の大名、元町勘三の次男那津は、出逢った当初からとてもウマが合うようで、幼い頃から仲睦まじい姿を見せていた。
最初は、男子に恵まれなかった政吉が、勘三と結託し、次男を養子縁組させようと画策して会わせたのが始まりだったが、二人の心配をよそに、那津と瑠璃はすぐに仲良くなった。
「許嫁とは、将来、共に過ごすことらしいですよ」
「今も、しょっちゅう一緒にいるではありませんか」
那津の言葉に、瑠璃はころころと笑いながら首を傾げた。那津は瑠璃の持つ鞠を取り、同じく笑って頷いた。
「そうですね。でも本当に、今と変わることなく、一緒に過ごしていきたいですね」
純粋な瞳で視線を送る那津に、瑠璃は笑顔で返した。
那津も瑠璃も、お互いを想い、すでに将来を約束されたという見えない鎖さえも気にする事もなく、未来へと進んでいた。




