告白
あの日…お兄ちゃんの部屋に泊まってから、お兄ちゃんはさらに冷たくなった気がする。当然かもしれないけど……。
でも、傷つくな…。お兄ちゃんに冷たくされるのは…辛い。…クラスの地味なイジメよりも。
はっきり言おう。僕はイジメと言われる類のものを受けている。でもそれは誰にも気づかれないようなものだ。
例えば、教科書の落書き。
例えば、掃除の押し付け。
例えば、悪口の手紙。
そんなのが毎日だ。でも苦痛じゃない。友達だっているしそれに…お兄ちゃんがいるから。
「枝紗ぁ?部活行こうぜっ!」
「あっ…うん、ごめんね…待たせちゃって…」
僕は親友に謝って一緒に歩き始めた。
「また…あいつらか…?懲りねえな…俺からなんとか言おうか?」
「や、やめてっ…あ、えと…大丈夫だから…おに、副部長には何も言わないでね…」
親友は何も言わず僕の頭を撫でてくれる。とても優しく…。
「そこ、早くしなさい!あと5分で合わせ練習の時間ですよ!」
「「はい!部長!」」
僕らはいつもより少し手厳しくなっているような部長に挨拶をし教室に入った。
そして部活終了後、僕はお兄ちゃんに残るよう言われて残っていた。
いつの間にか眠気に襲われた僕はそのま大聖堂で寝てしまっていた。起きた時はもう外は暗かった。
「あ…ごめんなさいっ…あの、僕…何か、しました、か?」
敬語になってしまった。だって、そこにはお兄ちゃんだけじゃなくて…部長もいたから…。
「なんで敬語なんだ。…こいつがいるからか?…だからさっさと帰れっつったのに…」
「まあまあいいじゃないですか。…いいんですよ枝紗くん。僕にタメ口をきいても。」
お兄ちゃんは機嫌が悪そうに僕の目を見てくる。
そして、僕に言った。部長がいる中で、僕に真剣な目つきで。
「愛してる。…もう我慢ならないんだ。これ以上…黙ってお前がいじめられてるのなんか見たくないんだ。付き合ってくれ。許されることじゃないことくらいわかっている。でも…お前を守るくらいのことはさせてくれ。」
あのお兄ちゃんが僕に真剣に言った。
付き合って、と。
…それと同時にいじめられてることがばれていることに涙した。どう頑張ってもお兄ちゃんに隠すことなんてできないんだ…。
そんな僕にお兄ちゃんも部長も驚いていた。
「おにっ…ちゃっ…!僕も…お兄ちゃんのこと大好き…大好きだよ、僕でいいなら…付き合って、欲しい…っ」
「枝紗…っ…お前でいいじゃなくて…お前がいいんだ!…もう辛い思いは絶対にさせないから。」
お兄ちゃんは僕をふわりと優しく抱きしめて、微笑んだ。
そして……キスをした。
「枝紗…名前を…呼んで…?枝鬼…って」
「枝、鬼…お兄ちゃん……だい、すき…」
僕らはしばらくの間見つめあっていた。それを、その空間を破ったのは、部長だった。
「はいはい、…らぶらぶするのはいいけど、ここは聖なる大聖堂ですよ?」
「あっ…部長そういえばどうしてお兄ちゃんと一緒に…?」
僕は少し疑問に思っていたことを聞いた。
「んー言っていいんでしょうかね…実はね、枝鬼に言われたんですよ。近くにいて欲しいとね。…見守ってて欲しかったらしいですよ、ね?」
お兄ちゃんは少し部長の方を向いてから僕の手を引いて大聖堂を出た。
「お兄ちゃん…待って…いたっ…痛いよ、っ…」
「あ…悪い……その…部屋…来るか…?」
僕は何も言わずぎゅっとしがみついて頷いた。