お兄ちゃん
僕は、生家先生にお兄ちゃんの部屋番号を聞いて部屋に行く。緊張するなぁ…。
お兄ちゃんはきっと僕のことが嫌いだ。…だって…いつもそっけないから…。
コンコンッ
誰ですか、とお兄ちゃんの声がする。声が裏返る。
お兄ちゃんが誰…とイラついているように言う。
「あ、の……僕…です……枝紗です…」
「何してんの?……入れば」
お兄ちゃんは意外にもすんなり入れてくれた。意外だった。…嫌われていると思ってたから。
「おにい…っ…えっと…副部長…「二人きりだからお兄ちゃんでいいよ、おいで。」…っえ…?」
お兄ちゃんはにこやかに笑って手を広げた。いつもみたいなそっけないものじゃなくて…優しくて、心地いい…昔みたいな。
「おにい…ちゃん……」
僕はゆっくりとお兄ちゃんに近づく。
するとお兄ちゃんは僕を抱き寄せた。僕は驚いてお兄ちゃんの顔を見る。
「ん?……ごめんな、枝紗。冷たくして。…でも仕方ないんだ、ごめんな。」
「ううん…大丈夫……僕…お兄ちゃんの事大好きだからっ」
お兄ちゃんが映画を観るって言うから僕も一緒に観ることにした。
お兄ちゃんはやめろって言ったけど、僕もう高校生になったんだから、大丈夫だよ、と返事をした。
でも……無理だった。気持ち悪い。ホラーは大丈夫だけど斬られたり撃たれたりするのが苦手な自分を呪った。
僕はそっと離れてトイレで吐き出した。
「っは…ぁっ…ぅぁ……けほけほっ」
口元を拭いて僕はソファに戻った。
お兄ちゃんは僕をいきなり抱きしめた。
「だから…やめろっていっただろ!………無理するな、もう…やめろ、な?」
その間も映画は流れてる。
「ごめんなさい……で、でももう大丈夫だから…お兄ちゃんの好きな映画…観たいよ…」
お兄ちゃんはずっと僕に抱きついたままだった。そして、お兄ちゃんは言った。無理になったら言え、と。その約束で再び映画を観始めた。お兄ちゃんはたまに僕の頭を撫でてくれたり、手を握ってくれたりした。そのおかげで、とりあえず最後まで観ることができた。
「どうする?枝紗。戻るか?…それとも、ここで寝るか?」
「……こ、こで…寝てもいい…?…っ…ゆ、床で寝るからっ大丈夫だよ!迷惑かけないから!」
慌てて迷惑をかけないという。
「…その方が迷惑だ。……あまり心配かけさせるな、ベッドで寝ろ。俺もベッドで寝るから。」
「…ごめんなさい……」
お兄ちゃんは微笑んで僕を抱きしめた。