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第0章 現代の魔法使い

素人の文章ですが、出来る限り面白く書こうと思っております。

 第0章 現代の魔法使い



 魔法という言葉をもし現実で聞いたとしたら、「胡散臭い」と思う人間が大半だろう。いや、そう思わなければ、そう思われなければおかしいのだ。それほどまでに、日本は科学色に染められた――否、『非魔法色』に染められているのか。もし魔法が精神エネルギーを糧にしているならば、そうだとしたらもはや無尽蔵――言う人は、不平等と言う。そうは思わないだろうか。原価以上のものを支払わなければ手に入れなければならないというものが、いともたやすく手に入る。現実の理に、従っていないのだ。だからこそ、人間は魔法を忌み、嫌うのでは――ないだろうか。

 ただ、もし魔法というものが使えるとしたら、どうなるだろうか――熟考する必要はない。小説や漫画やテレビで見るような紛い物の魔法使いではない。本物の、本当の意味としての魔法使いになれる。嘘ではない、フィクションではない現実で、魔法を使うのだ。

 例えば、学校に遅刻しそうな時を考えて見よう。魔法でもし、超能力でいうところのテレポートができたとしたらどうだろう。家から学校までを一瞬で移動することが出来れば、遅刻などという現象は起こらない。起こるとするならば、家にいる時点で学校のホームルームが始まっている時だが、何の。魔法で時間を巻き戻してしまえば良い。テストだって、魔法でカンニングも出来るだろう。それこそ暗記パンも作れるかもしれない。いや、周りの人を思い込ませて、点数を上げることだって、出来るかもしれない。魔法を使えば、百点満点、取れないわけが、無いのだ。

 倫理的に悪いことだって、魔法を使えば可能なこともある。犯罪、殺人、戦争。あるいは生命の創造、永遠の命、世界征服。どれも魔法を使いこなすことが出来れば、簡単に達成される。

 ともかく、魔法を使うということは、とても便利なツールを手に入れるということ。何にでも使える、チートと言われて差し支えない力を手に入れるということなのだ。そのチート性が故に、現代の魔法話では制限が強くかけられているのだが……

 だがしかし、ここまで語ってきたことはただの理想論、いや、妄想だ。魔法は結局存在していないのだ。存在している、とどれだけ熱く語る人間がいたとしても、現実では冷ややかな視線を受けるだけなのだ――何を言っているんだ。現実というのはとても、とても、とてもとてもとても辛く、悲しく、苦しいものなのだから。それに向き合え、妄言を言うんじゃ無い。そう言われてしまう。

 そう言われても仕方ない。だが――本当に、魔法は存在しないのだろうか?

 科学――そのシステムは化学(バケガク)である。電子の運動における恩恵、科学とはそれに尽きる。科学の基本であり、すべてではないだろうか。人々はそれを信じる。しかし、世界は陽子と電子と中性子と光子と中間子と……クォークとレプトンとボソンとヒッグスとダークマターとダークエネルギーで全て構成されていると、言い切れる保証は――今のところ、実は、無い。

 もっと深く。科学――化学のような大きな世界ではなく、もっと細かな――最深の理。魔法が存在するとしたら、おそらく、その場所にある。そしてその場所はまだ、人類が足を踏み入れていない領域――!!

 魔法は、存在するかもしれない。

 そして、それを使う魔法使いがいるとしたら、おそらく――


「ほいほいほーいっと!」

 秋の香り立ち込め、少し寒くなってきて、彩を増す市街地を走り回る少女。楽しげに走っている。しかし市街地、という言葉には語弊がある。正確にはビルの屋上を飛び回っている。

 もちろん、並の人間にそんなことは不可能だ。ビルの屋上から屋上まで――隣接しているならまだしも、道路を挟めば絶対にひとっとびすることは出来ない。いやそもそも隣接していたとして、それが同じ高さであるはずがない。絶対に『飛び回る』ことは出来ないはずなのだ。

 そして飛び回っているのは少女だけではない。その青髪の少女の後ろに、15人ほど黒服の男性がいる。いや――少女を、追いかけているのだ。

「……『緑の蔦で暴れる子羊たちを鎮めよ』。喰らえッ!『CPS』!」

 緑色の、異様に光るつたが、『CPS』と呼ばれた彼女に向かって伸びていく。どこから現れた? そう叫んだ男の手から生えてきたかのように見えた――魔法のように。

 そして、事実、それは――


 魔法である。


「うぉぉう!」

 彼女はその緑色のつたにぐるぐる巻きにされ、一瞬ビルの屋上が彼女の脚の裏と離れて、今度は彼女の背中と触れることになった。

「いてて……」

「捕まえたぞ。『CPS』。おとなしく『魔法行』に帰ってもらおうか」

 男たちは追いつき、倒れてしまった彼女、『CPS』の周りに群がる。

「えー。本人が望んでもいないことをするんですかー? 日本国憲法に反してますよー」

「黙れ」

「いやでーす」

 威圧感を放つ十五人の男たち。しかし『CPS』はまったく動じず――というか、聞き分けのない子供のような口の利き方をしていた。

「貴様、自分の立場が分かっているのか?」

「あなたたちも――自分の実力分かってるんですか? 私を捕まえたくらいで、調子に乗るものじゃないですよ。魔法でジャンプして私に追いつけなかった時点で、あなたたちの負けは確定してるんですよ? 普通に考えて」

 魔法――『CPS』という少女は当たり前のように『魔法』と言った。

 その通り、彼らがビル郡の上を飛び回ることが出来たのも、緑色のつたを手から出せたのも、すべて、魔法である。つまり、彼らは、正真正銘。魔法使いなのである。

「……我々を舐めるのも大概にしてもらいたい。我々はいざとなったら、お前を殺すことも出来るんだぞ」

「脅しですか? 効きませんよ。にしても『我々』ね……ふふふふ」

 神経を逆なでするような物言いに、男たちは苛々し始めた――そしてその様子を見て、『CPS』は愉快だ、と思った。

「ずいぶん『魔法行』に固執してるじゃないですか。私を捕まえることによって、どんな報酬が得られるんですかねぇ」

「……お前に対する罰は、何だと思う?」

「いやいや、罰を受けるのは、あなたたちでしょう? だって、あなたたちは、私を取り逃がすんですから」

 『CPS』の右手が、青白く光り輝く。太陽光線とはまったく違う。科学の産物で似ている光を上げるとすれば、LEDの光だろうか。その光が、どんどん強くなっていき――

「くらえー。『フラッシュ』!」

 目を潰すほどの光を発した。

 それが光っている間に、『CPS』は異様なつたを切り、男たちを掻き分け、今度はビルから飛び降りて、今度こそ市街地に駆け下りていった。男たちは、とあるビルの屋上に、取り残された。


「あー、疲れた」

 少し走った後路地裏に入り、さてこれからどうしようか――と、『CPS』は考える。どうしよう、というのはぶっちゃけたところ、先ほどみたいな『追っ手』が来ないようにするにはどうすればいいのか、ということだった。

「ってか、こういうことになるってことは聞いてたけど、まさかあんなにザコいとはね。びっくりびっくり」

 別に、あの男たちは弱いわけではない――のだが。彼らと『CPS』では目的が違う。

 彼らは『捕獲する』ことを目的にしており、

 『CPS』は『逃走する』ことを目的にしているのだから。

「でも、流石『魔法行』――3ヶ月も追いかけてくるなんてね。あーでもこういうのって何十年にわたる逮捕ーとか言われるようなことなのかな。まあいいけど」

 空を見上げる。暗い路地から見る雲は、当然のように秋の雲だった。


「『魔法行』――『魔法使いを隠す施設』から抜け出したから、当然そうなるのか」


 『CPS』。本名『ハードシアン』という魔法使いは、現在逃亡中であった。



                   第0章・終

                   第1章へ続く

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