プロローグ
昔、それはとても昔、争いがあった。その争いはあらゆる種族を巻き込み、数多の大陸で行われた……我々の種族こそもっとも優れている! 我々の種族こそ生き残るのに相応しい! と声を高らかに。彼らは他の種族と言葉が通じないことを恐怖し、姿が違うことを畏怖し、襲いかかる彼らを憎悪した。争いはあらゆる所で行われた。海で空で山で――地上で地中で水上で水中で雲上で雲中で――雪原で洞窟で居住区で。朝も昼も夜も関係なく争い続けた。それは小さな島国においても例外では無かった。永い間戦い続けて彼ら自身も何故争っているかも分からなくなってしまったとき――誰も知らない神が現れた。
名も無き神が舞い降りた。その一振りの枝を携えた神はあらゆる種族の特徴を持ち、そしてあらゆる種族とも異なる姿であった。彼が枝を一回振ると他の種族への恐怖が消え、二回振ると言葉が通じるようになり、三回振ると正しき知恵が芽生えた。人々が自らの身に起きていることに驚いていると神はその光景を見渡し――微笑んだ。
「息子たちよ。おまえたちは人を憎むのではなく争いを憎みなさい。他者へ歩み寄ることをしなかった自分を憎みなさい。寛容を持ち合わせなかった自分を憎みなさい。おまえたちにはもう既にそれを為しうる力を身につけているのだから」
彼はそれだけ言うと天へと舞い上がっていき、姿を消した。残された人々は互いに震えながらも、手を握り合った。
これは日本に似た"秋皇"で彼らの子供達が織りなす物語。大帝都に蠢く怪異と異形のおとぎ話をいざ――




