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武の触診

「こんにちは。今日はどうされましたか?」

「はい。この子、お腹の調子がよくないっていって学校休ませたんです。二日前からずっとお腹が痛いって言ってましてね。」

「ちょっと、お腹見せてくれる。触診します…。…うーん、胃腸炎ですかね。」

「…そうみたいなんです。」

「…。…おい、紗枝!」

紗枝がやってきた。

「はい、先生。」

「…胃腸炎。」

「…はーい、わかりました。」

すると紗枝がその子のお腹に手を当ててしばらくしていると、一瞬怯えたような顔つきになって、すぅっと息を吸い込んだ。紗枝はそのままカーテンの裏に行くと「ゲフッ。」とゲップをした。

それを聞いていた患者の母親が変な顔をしていた。

「では、薬出しておきますね。夕食後に一錠お飲み下さい。」

「あ、ありがとうございました。」

娘を連れたその患者は\1200払うと医院を後にした。

武と紗枝は一見普通の街医者である。だが、その治療の裏には武の類まれな学と紗枝の巧みな技があった。

武は表向きは医者として通っているが、実は本業は(かんなぎ)と呼ばれる審神(さにわ)であり、妻は(みこ)と呼ばれる霊媒(れいばい)なのである。

審神とは巫に降りてきた神霊が、本物かどうか否かを判断する目利きの出来る特殊な男性のことである。

武が覡として活動する前は、ごくごく普通の医学生だった。しかし、24歳の冬に友人たちと龍山神社の奥宮がある雷塚の峠をバイクで走っていたときに、大きな事故を経験して生死の淵を彷徨ったのである。彼はその中で不思議な体験をした。

彼は事故直後に自分の肉体を傍で見ていた。自分が口から血を流して倒れている様子を傍で見ていたのである。

武は自分が二人居ることにびっくりしていた。武はパニックになって、周りの友人たちに何度も声をかけたが、誰一人として武の声に気付く者はいなかった。武が事故現場で自分の肉体を見ながら半狂乱になっていると、一人の男性がどこからともなくやってきてこう言った。

「武くん…。武くん…。…久しぶりやの。」

その男性はどこかで見たことのある顔の様な気がした。

「…僕、死んじゃったんですか!?どうなってるんですか!?」

「…。…まぁ、ついてきなさい。」

男性は武の肩に手を掛けた瞬間、急に空間が捻じれて穴が空いて、そこに二人は吸いこまれていった。

そこはどこかの境内だった。よく見ると、それはあの奥宮の境内だった。

「武くん、心配せんでええよ。君はまた戻れるから…。」

「え?どういうことですか?…おじさん、一体どなたですか?」

「失礼だな!覚えとらんかね。」

「…。」

「まぁ、ええよ…。…ちょっとお茶でもするか。」

すると男性は神社の社に案内した。社の中には何人かの男女と見たことの無い動物が居た。

「お兄さん。御苦労さま。」

部屋の入口に居た女性が武にそう言ったので、武はそのように会釈した。武は丸い木卓の脇にその男性と一緒に座った。

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