side /ハタノ(4)
パチンとどこかを叩かれた表情で、ユイはハタノを見つめた。
俺、何か地雷踏んだか?
一瞬うろたえたハタノの顔をすくい上げる角度で見ながらユイは言い放った。
「へぇ?ハタノは楽しいことができれば、女の子を部屋に連れ込むんだ」
ケンカ腰の物言いに、少し怯む。
「楽しいことのできる相手じゃなくて、ご・め・ん・ね!」
論点がズレてる。
俺はそんなこと言ってない・・・筈なんだが。
大体なんで怒ってんだよ、勝手なこと言ったのはそっちだろ。
「泊めてって言ったの取り消し。終電がなくなる前に帰る」
ユイがすたすたと歩き出したので、慌てて隣を歩こうとすると
「あんたは歩いて帰るんでしょ!方向が違うわよ!」と、不機嫌な声が飛んだ。
「何をいきなり怒ってるんだよ!」
ユイの口調につられるように、語気が荒くなった。
おい、俺、やっぱり酔ってないか?頭の中の冷静な部分が自分に問う。
「そんな帰り方されたら、こっちだって寝覚め悪いだろうが!」
ユイは一瞬きょとんとした顔をした後、バツが悪そうに笑った。
「なんだかいつもと立場が逆。ごめん、ハタノは悪くない。あたしが」
言いにくそうに言葉を切ってから、更にバツが悪そうに続いた。
「あたしが、ハタノは生物学的には男だってコト忘れてたの」
「で、今ね、男なんだって思い出したらびっくりして動揺した。悪い!おやすみ!」
早足で駅の方に歩いていくユイを見て、ハタノも逆方向に歩き始める。
バツが悪そうに笑う顔がなんだか可愛かった。
俺も今日、ユイが女だったって思い出した気がする。




