side /ユイ(4)
え?ちょっと、何?
この展開だと、あたし、ハタノとつきあってるみたいじゃない。
ひょっとしてハタノ、あたしのことスキ?ありえない!
あんなこともこんなことも全部喋っちゃってるのに。
ってゆうか、当のハタノが固まっちゃってるし。
「ごめんねぇ。ハタノくんはあたしの保護者だからぁ。今度、また機会があったら誘ってぇ」
ユイはとりあえずのフォローを入れて、ハタノを隣に座らせた。
そして、テーブルの下ですばやく脛に蹴りを入れる。
一瞬ハタノの顔は痛みで歪んだが、頭は正常に動き出したようで同僚に向き直る。
「俺、こいつの兄みたいなもんだからさ・・・」
「そうなの、過保護な兄で困ってるの」
同僚はしらけた顔で、席を移動していった。
「おまえ、ちょっと隙だらけじゃない?」
「どういう意味よ、それ?」
「簡単に誘われるなって言ってんだよ!」
「あたしから誘ったんじゃないでしょ!」
もちろん、隣同士のこそこそ声での話である。
「ねぇねぇ、ホントに仲いいよねー。実はつきあってない?」
次に声をかけてきたのは、ユイの同僚だった。
「さっきから、なんだか二人の世界つくってない?」
「つくってない!」
ふたり同時に声が出た。
三次会は流れ解散になり、ユイとハタノは帰り道、また肩を並べて歩いていた。
「電車に乗って帰るの、億劫だなー。ハタノのうち、要町でしょ?泊めてよ」
ユイにしてみたら、寝オチした後に何度も運ばれている部屋だ。他意はない。
にもかかわらず、ハタノはギョッとした表情になった。
「だから隙だらけだって言ってる!おまえだって東武練馬で電車一本だろ、帰れ!」
「えー?だって電車に乗ったら寝ちゃうし。いつも泊めてくれてるじゃん」
「それはおまえがツブれた時だけだろ!」
また、ムキになってる。いいじゃない、今まで何にもなかったんだし。
あれこれ内情バラしちゃってるハタノと、どうこうある訳ないし。
それに、もう歩くの面倒。
「いいじゃない。友達なんだから」
ユイがそう言いかけると、被せるようにハタノは言った。
「手も出せない女を部屋に泊めてどこが楽しい!」




