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side /ユイ(11)

寝ちゃった。疲れた顔してたもの。

忙しかったって顔に書いてあるくらい、眠そうだったし。

公園で寝入っちゃうくらい疲れてたのに、出てきたんだ。

あたしに、会いに?

ユイの心臓はひとつ大きく鼓動を打った。


今日のハタノはなんだか男の人に見えて、見当が狂うと思った時、違うよ、と自分の声が聞こえた。

男の人だったんだ。ずっと前から。


ハタノがたてる規則正しい寝息が聞こえる。

ユイが帰らずにそばについている、と確信しているように。

ユイが酔いつぶれても、ハタノは置き去りにしたことなどない。

お互い、ずいぶん無防備だ。


ハタノと手を繋いだのなんて、何年振りだったんだろう。

一緒に帰った高校生の頃に繋いでいた手とはずいぶん違う、厚い手のひらやゴツゴツした指になった分だけ男の人になっていたのに、気がつこうともしなかったから、ずいぶん遅くなってしまった。


絡んだ芝を落とすために、ハタノの髪を指で梳く。

気持ち良さそうな顔して寝ちゃって、子供みたい。

髪を梳きながら、高校生の頃の小鳥のついばみのようなキスを思い出した。


手の感触が変わるように、唇の感触も変わるのだろうか。


自分の考えに、自分が驚く。

何考えてんの、あたし!

寝てるヤツの唇をどうしようって?

いや、キスしちゃおうなんて考えてない!

大体、そんな関係じゃないし!

本人の意思確認もできないのに!


でも、ハタノは熟睡中だし。

別にキスでどうこうって歳でもないし。

ハタノが知らないうちなら、自分の中だけで無かったことにできる。


あたりを見回してからハタノの頬を軽くつつき、深く眠っていることを確認して、ユイはゆっくりと顔を近付けていった。

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