side /ハタノ(7)
翌日、日曜日。
ハタノは携帯電話を見つめていた。
やっぱり、様子がおかしかったよなぁ。
途中から具合が悪くなったのに、無理してたのか?
送ったほうが良かったのか?いやいや、つきあってる訳でもないし。
それとも、なんか不機嫌にさせたか?
いや、それだったら噛み付いてくるはずだし。
だいたい、俺は何を気にしてるんだよ。
タクシー乗り場で振り向いた時の、真っ赤な顔が浮かんだ。
こんなに気になるのは、予想外の顔を見たせいだ。
会わなかった何年かの間、ユイが何をしていたのか知らないのに
ここ数ヶ月で全部把握している気になってた。
なんだか、俺ってすごく迂闊じゃないか?
携帯電話のフラップを開いて、メールを打ち込む。
―気分はどうだ?
我ながら芸のない言葉だと思いながら送信すると、すぐに返信が来た。
―元気だよ♪昨日はヘンだったね。ごめん。
ごめん?ユイが?
やっぱり、どこかおかしい気が。
そして、俺もどこかおかしい気が。
ハタノは自分の神経を自分に集中させ違和感の正体を探る。
しばらくして、うすぼんやりと見えてきたものがある。
ユイが概念として女ってだけじゃなくて、ちゃんとした女の子に見えたんだ。
それで?とハタノは自分に問う。
だからって、今更ユイとのつきあいの方向が変わるか!
自分の出した結論に半ば腹を立てながら、ハタノは更に複雑な顔になった。