表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

side /ハタノ(6)

ちょっと早いかな、と待ち合わせ場所に向かう途中でハタノは足を止めた。

向かい側から歩いてきたのは、待ち合わせの当の相手だ。

もうひとり、年配の男性が一緒にいるが。

ユイはハタノに気付くこともなく、ゆっくりとした足取りで待ち合わせ場所ではない方に歩いていく。


どこに行く気だ?

そう思って進んだ方向に目を向けると、ユイの右肩に置かれた左手と、白杖が目に入った。

サポートの道案内をしているんだと気がつき、声をかけずにそのまま後ろを歩くことにする。

僅かな段差で「段差があります。一歩下におります」と声をかけている。

へぇ、慣れてるじゃないか。意外かも。


タクシー乗り場まで男性を案内してタクシーに乗せた後

時間を気にして小走りになろうとしているユイに声をかけた。

「もう、ここにいるから戻らなくてもいいよ」

ハタノの顔を認めた瞬間のユイの反応は予測外だった。


顔に朱がのぼるとはこのことだ、と言わんばかりに赤くなり、うろたえた表情をみせる。

「いつから、そこにいたの?」

「駅から出て来た時から、後ろ歩ってた。声、かけたほうが良かった?」

「それは、おじさんが気を使っちゃうから声をかけられないほうが有難かったかも」

まだ耳まで赤いままだ。

「おまえ、案外と気が使えるいいヤツ...」

言いかけると同時に、脛を蹴られた。


もしかして、照れてんのか。

蹴られた脛は痛いが、そうだとしたら文句は言えない。

「いいヤツとか言われたくてサポートしたんじゃないし!手なんか貸せる人が貸すの、アタリマエでしょ!明日の我が身かもしれないし!」

そう思っても、人間ってのはなかなか声なんかかけられないし、サポートの作法なんて知ってる人は少ないと思う。

いつでも手助けできるように準備してるだろ。

今、それを口に出したら、もう一度蹴りが来そうだ。


やっと普通の顔色に戻ったところで、時間は大丈夫かと確認された。

劇場までの道を急いで歩きながら、ハタノは考えていた。


威勢がいいだけで、気が小さいヤツだと思ってたのに。

ユイは俺が知ってるだけのユイじゃないかも知れない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ