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006 脱出

「っは!?」

目が覚めた瞬間、甲高い警報音が耳を刺した。

坑道全体に反響し、頭が割れそうになる。

ここどこよ?ってか真暗だな。

確か廃棄所にいたよな。少なからず薄暗いだけで真暗になることはないと思うがてかオビどこいった。

『目覚めたかマスター』

真暗な空間に機械音声のような音が響きわたり、赤く点滅するモノアイがあらわれる

「…! びっくりするわ!ってかここ何処だ?お前俺を何処かに運んだの?」

『いや、流石に運ぶなんてめんどくさいことは効率悪いしな。この辺の岩壁に擬態して、マスターを見つからないようにしただけだ』

オビはそう言いつつ、周囲の真暗な空間に光がさした、徐々に周りの壁が変形し黒い球体のオビが現れる。

「スッゲーなオビ、こんなこともできるんだな」

『もっと褒めていいんだぞ』

「前言撤回、性格に難があるわコイツ」

『おぉん?』

とてもただのAIとは思えないな。普通に感情みたいなのある気がする。

「てか、さっきから揺れている気がするんだが……」

パラパラと坑道の上から砂や小石が降ってくるしな。

『それはだな、今海賊同士の小競り合いが始まっている。早速チャンスが来たようだな。このままこの星をでるぞ』

「まてまて、宇宙に出たとしても俺は行く宛なんて……」

『いいのか?このままだとダヴィのハーレム要員にされるぞ?』

「よし!行こう」

 うん、そうだ。俺アイツから逃げるためだったわ。肉体改造して、強くなったとしてもヤツのあの視線を浴びるのはゴメンだわ。

『即答だな。ではドッグまで行くぞ。そこで戦闘機を奪ってこの星から脱出する。あとはまぁ何とかなるとだろ』

「何とかっておい」

『おっと、センサーに反応だ。こっちにゴブリン共の監視員が来るぞ。ちょうど良い試しに強くなった身体で倒すがいい』

「本当に大丈夫だろうな?倒せるんだよな?」

『やればわかる。余裕で倒せる。心配ならそこの物陰に隠れて後ろから殴ればよい』

「おっし、そうするわ」

『情けない。』

「仕方がないだろ。心配症なんだから」

『はぁー』

コイツ本当に機械か?あの中に小さい人間でも入ってるんじゃねーか?

 そう思いつつ、物陰に隠れることにした。


『いいか?ためらうな。やる時やれ。それが生きるための術だ。よし!今だ』

 ゴブリンの背後が見える。

 考えな今はただ全力で力を込めたこの素手であの忌々しいゴブリンの後頭部をぶん殴れ。

「おらっ!」

「ぶっ……」

 悠真の不意打ちによって、ゴブリンは岩壁に叩きつけられる。岩壁にはべったりと血が垂れ流されていた。

「お、お、お」

『言っただろ?余裕だと』

 身体中が熱い。

 この興奮、アドレナリンが凄い。この1年、ここで奴隷鉱夫として散々酷い目に合わされて、太刀打ちもできなかった俺が今ゴブリンを倒した。

「やべっ、ゴブリンを一撃で倒した。今の俺ならここのゴブリン全て倒せる」

 そう思わせるものがあった。

『そうだな』

 ん?素直に認めるとは珍しいな。

『もし私がゴブリンなら』

 嫌な予感がした。

『戦艦に乗って、この星ごとマスターを一斉砲火するだろうな』

「やめろよ!キメたつもりだったのに台無しだろ!」

『合理的判断だ。単体が強化された程度で、正面から挑むのは非効率だ』

「ぐぬ……」

確かに正論だ。

正論なんだが、言い方ってものがあるだろ。

「もうちょっとこう……

 “頼もしいですねマスター”とかないのか?」

『ない』

即答だった。

「ほんと性格悪いな、お前」

『事実を述べているだけだ』

その割に、どこか楽しそうなのが腹立たしい。

『繰り返すが、ここは戦場だ。力を得たからといって、無敵ではない』

「……分かってるよ」

拳をもう一度、握る。

さっきとは違う。

浮かれるだけじゃ、ここでは生き残れない。

「だからこそ――逃げるんだろ?」

『その通りだ』

オビが前方へと進む。


■■■



ドッグへ向かうには、どうしても奴隷鉱夫を閉じ込めている牢の前を通らなければならない。

 嫌な場所だ。

 通路に差し掛かった瞬間、こちらに気づいたゴブリンが数体、雄叫びを上げて突っ込んでくる。

 だが、今の俺の相手じゃない。

 腕を軽く振るう。

 それだけで、ゴブリンたちは壁に叩きつけられ

床に転がった。

 死んだのか、気絶したのかは分からない。

……どうでもいい。

 今は邪魔をするな。

 牢の前を駆け抜けようとした、その時だった。

「ユーマじゃねぇか!」

「なぁ、俺たちも出してくれよ!」

「友達だろ!? 一緒に逃げようぜ!」

 柵越しに、奴隷たちが一斉に騒ぎ出す。

……どの口が言う。

 俺が弱いと知るや否や、

 道具みたいに使い、危険な作業を押し付けてきた連中だ。

「悪いな」

 足を止めずに、吐き捨てる。

「俺はこれから自由を手に入れる。

 お前たちとは――ここでお別れだばぁぁい」

 罵声が飛んでくる。

 恨み言、怒鳴り声、泣き叫ぶ声。

 全部、無視して走り去ろうとした、その時。


「ユーマ……!」


 背後から、粘ついた声がした。

 振り向かなくても分かる。

 ダヴィだ。

「どこへ行くんだよぉ……だったら俺も連れてってくれよ! 一緒に脱出しよう!」

 とんでもない。

「じゃあな」

 短く、それだけ言って駆け抜ける。

「待ってくれユーマ!俺は今まで! お前のためにここにいる奴らをぶちのめしてきたんだ! 愛してるんだユーマぁあああ!!」

 断末魔みたいな叫びが、坑道に響く。

「……俺、男は無理だから。ごめんな」

 適当に返して、全力で走った。

 背後の声が遠ざかる。

 さらば、ダヴィ。

 もう二度と会うこともないだろう。

『マスター』

走りながら、オビがぽつりと言った。

「なんだよ」

『モテますね』

……なに言ってるんだ、こいつ。

 壊したろーか。

 悠真は無言のまま走り続けた。


■■■


ドックに近づくにつれ、空気が変わった。

 重く、ざらついた振動が、床越しに足裏へ伝わってくる。

 次の瞬間――

 金属を引き裂くような甲高い警報音が鳴り響いた。

 耳を塞ぎたくなるほどの音が、広いドック全体で反響する。

 視界が一気に開けた。

 巨大な空間。無数の照明。

 天井近くを走るクレーンと、雑然と並ぶ整備用の足場。

 そして――

 走り回るゴブリンたち。

 工具を抱えたまま怒鳴り合う者。

 通信端末にかじりついて叫ぶ者。

 何が起きているのか分からないまま、ただ混乱している様子だった。

『マスター、あの小型艇がよさげだな。乗り込むぞ』

 オビの声に促され、視線を走らせる。

 端の発着レーンに、比較的小さな艇が一機、固定されていた。

「それはいいが……今さらだけどさ。

 このまま乗り込んで大丈夫なんだよな?

 俺、操縦なんてできんぞ」

『問題ない。任せろ』

 そう言った直後だった。

 視界の端から、黒い影が跳ねた。

「――うおっ!?」

 冷たい感触が、首元に触れる。

 次の瞬間、何かが皮膚の上を這った。

 ぞわり、と鳥肌が立つ。

 黒いものが、腕を、胸を、脚を覆っていく。

 服の上から――いや、皮膚そのものに張り付くような感覚。

「なんじゃこれ……!」

 気づいた時には、全身が黒一色だった。

 鏡がなくても分かる。

 これ、完全に“悪者側”の見た目だ。

 ヒーロー映画で見たことあるぞ。

 宇宙生命体に取り憑かれるやつ。

『この形態なら、スーツとしても使える。

 私が直接、身体を動かすことも可能だ』

「……今、勝手に動かせるって言ったか?」

『非常時だ。仕方がなかろう。

 それに、肉体はすでに改造済みだ。すぐ慣れる』

 不安を言う暇もなく、身体が動いた。

 足が前に出る。

 手がハッチを掴む。

 まるで、操縦方法を“思い出している”みたいに。

 小型艇に滑り込んだ瞬間、外の喧騒が遠のく。

 計器が点灯し、振動が伝わる。

 ――発進。

 ゴブリンたちの叫び声が、通信ノイズに変わっていく。

 制止の声も、警報も、すべて振り切って。

 俺は、初めて――

 自分の意思で、この星を離れた。

「……お」

 視界いっぱいに広がる、星の海。

 無数の光が瞬き、静かに、果てしなく続いている。

 言葉が出なかった。

「……SFってのも、悪くないかもな」

 本来の予定では、剣と魔法でモンスターを倒しているはずだった。

 間違っても、宇宙に放り出される展開じゃない。


 人生、何が起きるか分からない。

 転生しても、それは同じらしい。


『進路はこちらだ。場所は任せろ』

 頭の内側に、オビの声が響く。

 さて。

 どうなるんだ、俺の異世界転生生活。

 ――まぁ、何とかなるだろ。

 そう思った、その瞬間。


『止まりなさい。そこの小型艇』


 正面の虚空が、赤く染まった。

 巨大な戦艦が、進路を塞ぐように姿を現す。

「……ちょっとくらい、空気読んでくれよ」

 誰にともなく呟いた。

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