014 マテリアルコア
多分もっと説明とかいるよなーとか思いつつ、取り敢えずアップしよ。書くのが練習だしなって感じですわ
酒場でハンターの依頼を受けた俺たちは、
開始までの猶予を使ってカグツチの待つドックへ戻った。
薄暗い通路を抜ける。
重厚なゲートが唸りを上げ、ゆっくりと左右に開いていく。
そして――
「何なのこれは!? カグツチは!?」
セリアの声が、悲鳴に近い震えを帯びる。
そこにあるはずだった。
赤と黒を基調にした、威圧感すら漂わせる巨体。
銀河治安連邦の誇る最新鋭艦――戦艦カグツチ。
だが。
ない。
代わりに鎮座していたのは、無数の黒い装甲板が折り重なった異形の艦体だった。
艶のある外殻は、生き物の甲殻を思わせる滑らかさ。
中央部を走る緑の光が、ドクン、と脈打つ。
……まるで心臓の鼓動のように。
どう見ても、別物だ。
『落ち着いてセリアちゃん』
静かな声がドックに反響する。
「落ち着けるわけないでしょ! 私のカグツチはどこに行ったのよ!」
セリアの拳が震える。
そのとき。
天井付近に黒い球体が、ふわりと浮かび上がった。
オビだ。
『マスター戻ったか? で、何でこの女がいる?』
「あー……色々あってな」
「ちょっとアンタ! あれ何よ! 私のカグツチをどこへやったの!?
事と次第では宇宙の塵にしてやるわよ!」
『はーやれやれ。だから処分してこいと言ったのだ』
「物騒なこと言うな。顔見知りは多い方がいいだろ。
例えそれがセリアでも」
「聞こえてるわよ!?」
俺は黒い艦体を見上げた。
「で、あれ何だ? 俺たちの戦艦どこいった?」
わずかな間。
黒い艦体の中心が、ドクン、と強く脈打つ。
『あれが元・戦艦カグツチだ。再構成した』
「……は?」
空気が一瞬止まる。
「再構成って何よ!?」
『カグツチにはマテリアルコアが搭載されている』
「マテリアルコアって何だよ」
黒い艦体の中心が、呼応するように脈打った。
緑の光が装甲の隙間を走る。
『マテリアルコアはマテリアル粒子を生成する。
粒子は物質を再構成可能。
戦艦カグツチは粒子構成艦だ』
「……つまり?」
『姿形も、構造も、識別信号も書き換えられる』
ガコン、と装甲の一部がわずかに変形する。
セリアの顔色が変わった。
「まさか……」
『艦体は再構成済みだ』
「物質固定テンプレートを書き換えたの!?」
声が裏返る。
『うむ』
即答。
緑の光が一段階強く脈動する。
セリアの喉がひくりと鳴る。
「戻るのよね……?」
沈黙。
ほんの一秒。
だが、やけに長く感じる。
『戻す予定はない』
空気が凍った。
「……え?」
セリアの目が見開かれる。
「ユーマ! あんたのAIでしょ!? どうにかしなさいよ!」
「言ったろ。オビは俺の言うこと聞かん」
『流石、理解が早い』
その瞬間。
ドクン。
艦体が、ひときわ強く脈打った。
緑の光が全身を駆け巡る。
ドックの照明が一瞬だけ落ちる。
『当艦は既に再定義されている』
オビの声が、やけに澄んで響く。
『名称変更も完了済みだ』
セリアが固まる。
『戦艦――』
艦体表面の一部に、淡い緑の文字列が浮かび上がる。
《MAGATSU》
『《マガツ》』
低い振動が床を伝う。
「ま……が……つ……?」
『災厄の意を持つ名だ』
セリアの肩が震えた。
『現在の我々に相応しい』
「誰が災厄よ!!」
叫びがドックに反響する。
『なお』
追撃。
『旧戦艦カグツチ端末AIの上位監理権限は私に移行済みだ』
「は?」
『じつは現在、統合管理AIオービタルの監理下に入っています』
カグツチの声は変わらない。
「カグツチ……あなたまで……」
『本体の権限は無くなっても、私だけは味方だよ』
一瞬の静寂。
そして。
「いーーーーやああああああああああああああああっ!!」
悲鳴が、ドックを揺らした。
黒き艦は、静かに脈動する。
まるで。
新たな主を選び終えたかのように。
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