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013 ハンター

「兄ちゃんたち、ここでの仕事は初めてだろ? ならまずこの辺りの仕事をどれかやって成功したらハンターとして登録ができる。どの依頼も簡単なものばかりだ。まぁ頑張れ」


 そう言って店主グリオは、束になった書類を俺に押しつけた。


 酒と機械油の匂いが充満する店内。

 壁には無数の手配書。

 笑い声と罵声が入り混じる。


 ここで簡単なんて言葉を信用していいのか?


 ……まぁいい。


 ハンターか。

 中世ファンタジーなら冒険者みたいなもんだろう。


 胸の奥が、少しだけ熱くなる。


 この世界に来てから初めてだ。

 SFの世界でもこうやって依頼を受けて仕事するってのは、ワクワクするな。


 俺は書類を一枚ずつめくった。



◆運び屋◆

指定宙域で受け取ったコンテナを検問を避けつつロウタウンの倉庫に届ける簡単業務


報酬 500万エネル


条件

・高速移動可能な機体推奨


◆◆◆


 五百万。


 “簡単業務”の金額じゃない。


 検問を避けつつ、って時点でアウトだろ。


「次だ次」



◆軌道上アシスタント業務(初心者歓迎)◆

指定座標にて待機し輸送艇から投下される荷物を回収。

中身確認不要。開封禁止


報酬 200万エネル


補足

・依頼主の正体は非公開

・失敗時の責任は自己負担


◆◆◆


 初心者歓迎、ね。


 開封禁止。依頼主非公開。責任は自己負担。


「一体何を運ばされるんだ……」



◆書類回収代行(短時間・安全)◆

ダストールの某高齢者から機密データチップを受け取るだけ


報酬 300万エネル


補足

・依頼人は直接名乗らない

・質問は禁止

・武装推奨


◆◆◆


「って、どれもこれも闇バイトかよ!! 武装推奨って何が起こるんだよ!」


 近くのハンターが肩を震わせて笑う。


「新人か? この星で“安全”なんて言葉は飾りだぜ」


 やっぱそうだよな。


 他の書類も似たようなものばかりだ。

 怪しい依頼ほど報酬が高い。


 その中から、まだ現実味のある一枚を抜き取る。


「これなら無難だと思う。どう思うよ?」


 セリアとカグツチに見せる。



◆交易船護衛任務◆


資源輸送船団の外縁護衛。


報酬:参加報酬 100万エネル

撃破報酬:敵艦撃沈数に応じ加算


条件

・高速機動可能機体

・他ハンターとの協調行動必須

・命令系統は現場判断


備考

・死亡時補償なし


◆◆◆


 交易船の護衛。

 守る対象も明確だし、やることも分かりやすい。


 少なくとも、裏で何か隠している依頼ではなさそうだ。


『あの中では一番妥当だと思います。私は賛成です』


 カグツチが即答する。


「セリアちゃんはどうだ」


「ちゃん付けで呼ばないで。少佐って呼びなさい」


「じゃあセリア元少佐ならどれに?」


「何で元少佐なのよ!?」


「今の立場何よ? 指名手配されてんだろ」


「きぃーっ!」


 セリアは睨みつけるが、すぐに書類へ視線を落とした。


「……てか、何で私が手伝わなきゃいけないわけ?」


「何だと?」


「まずカグツチの本体を返しなさい。それが条件よ」


 この状況で交渉してくるとは。


 正直、この女と縁を切るのも手だ。

 しかし、この世界の事情はわかる奴は欲しい。


「俺は返してもいいと思ってる。ただ、オビ次第だな。あいつに権限がある」


「アンタがマスターでしょ? 命令すればいいじゃない」


「聞くとは思えないんだよ。性格悪いし」


「マスターの命令を聞かないAIって何よそれ」


「異世界人と未来から来たAIだぞ?」


 セリアは大きくため息をついた。


「……いいわ。今回は手伝ってあげる。その代わり、口添えしなさいよ」


「分かったよ」


 取引成立。


 その後、交易船護衛の仕事を受けるとグリオに伝えた。

 グリオは片眉を上げ、にやりと笑う。

「ほう、護衛か。無難なところ選んだな。出発は明日だ。第七ドック、早朝集合。遅れるなよ、新人」

「了解」

 ダストールでの初仕事。

 交易船護衛――明日が本番だ。

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