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Obliterator  作者: んご
4/12

第4話 Dawn

王城の一室。

厚いカーテン越しに差し込む朝の光は、眩しいほどなのにどこか冷たい。


シエルはベッドに腰かけ、掌をじっと見つめていた。

ドラゴンに剣を振るった瞬間、腕に走ったあの異質な力。


 ( あの力…あの時体に流れ込んできたものだ。

  何故だかそれだけは分かる。

  そしてその力は少しずつ大きくなってる……)


力は確かにある。

だが、それを扱っているのは自分ではないような違和感。


 「……俺は、一体」


言葉にはできない不安が喉にひっかかった。



王座の前に立つと、国王はこれ以上ないほどの笑顔を浮かべていた。


「昨日はすまなかった! 

 まさか一人でドラゴンを討つとは!

 神の加護を受けた光の勇者よ!」


つい昨日まで不審者扱いだったことなど無かったかのようだ。

シエルは曖昧に頷くだけ。


胸は少しだけ痛んだ。


(……勇者なんて立派なものじゃない、

 結局たくさんの人が死んだ)


国王は玉座にふんぞり返り、声を張り上げる。


「そこでお前に勇者としての使命を与える。

 諸悪の根源たる魔王! そいつを倒して参れ!」


「……魔王? 本当に、そんな存在がいるのか」


「この世界ヴェルグレイスは魔王の脅威に晒されておる。

 だが貴様が倒せば世界は救われるのだ!」


シエルは思わず問い返す。


「……それは、誰かの……役に立つのか」


「むろんだ! 悪を倒すのだぞ? 人々は歓喜する!」


その言葉に、わずかな期待が芽生える。


(誰かの役に……?

 俺にも、そんな価値が……あるのか)


シエルは小さく、しかし確かに頷いた。


「……分かった」



兵舎へ戻る途中、聞こえてきたのは冷たい囁き声だった。


「アイツが勇者? 正体不明だぞ」

「魔物を一人で全滅とか……おっかねぇ」

「ドラゴンまで倒しちまったからな」

「強すぎて逆に怪しい。魔王の手先じゃねぇのか」


シエルは聞こえないふりをする。


こういうことは慣れている。

ただ、胸の奥がわずかに疼くだけだった。



魔王討伐の遠征は1ヶ月後、

それまで特にすることもためシエルは、街の中を歩いていた。


その時、耳に入った子供の騒ぐ声。


見ると、小さな少年が数人に囲まれ、殴られていた。


「やめろ」


短い一言と同時に、シエルは手を伸ばし、少年をかばう。

いじめていた少年たちは大柄な彼を見上げ、青ざめて逃げ出した。


「大丈夫か?」


少年は涙目で頷く。

その背後から慌てて駆け寄ってきた少女。


白い法衣に身を包んだプリースト、リーナ。


「助けてくれてありがとうございます! 

 怪我は……えっ!

 あなた、まさか……

 ドラゴンを倒した光の勇者様ですよね!?」


シエルは戸惑い、視線を逸らす。

兵士たちの冷たい影口を思い出す。


立ち去ろうとした彼を、リーナは慌てて呼び止めた。


「お礼に食事をご馳走させてください!」



酒場。

机を囲む三人。

リーナはキラキラした目でシエルを見つめ続けた。


「だって、ドラゴンを倒すなんて! 

 本当にすごいです!」


隣の少年──カイトも拳を握って興奮して言った。


「シエル、おれも強くなりたい! 

 特訓してくれよ!姉ちゃんを守れるように!」


シエルは俯いたまま、何も返せない。


「お前たちは……怖くないのか?」


ぽつりと漏れた声。

リーナが首をかしげる。


「え?なにがです?」


「俺が……兵士たちの言うように、何者かわからないから」


「なに言ってるんですか!

 あなたは一人で戦って、

 たくさんの人を救ったんですよ?」


その言葉は真正面から胸の内に届いた。


だが、次の瞬間──


酔った兵士がふらふらと近づき、嘲るように笑った。


「よく言うぜ。

 こいつは魔王の手先かもしれねぇんだぞ」


リーナが立ち上がる。


「そんなことありません!

 彼は必死に戦って──!」


「うるせぇな偉そうに!

 テメェらプリーストは俺たちの後ろに隠れてるだけだろ!」


今度はリーナに矛先が向く。


シエルは静かに立ち上がり、兵士の前に立った。


無言。

ただ、鋭い眼光で見下ろす。


酒場の空気が凍りつく。


兵士は一歩後ずさった。


「……ちっ。化け物め」


吐き捨てて去っていく。


沈黙。

リーナが申し訳なさそうに視線を落とす。


「ごめんなさい、私のせいで……」


「いや……俺のせいだ。巻き込んで悪かった」


リーナはふっと微笑んだ。


「やっぱり、優しいんですね」


シエルは言葉を失う。

胸の奥に、生まれて初めて灯ったような温かさが広がった。


それは確かに──希望だった。


第4話を読んでいただきありがとうございます。

この先の展開も楽しんで頂ければ嬉しいです。

第5話は12/22、13時に投稿予定です。

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