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責務の王国  作者: Chadenshisu
第二章「熱狂」
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第七話「酩酊」

※この物語はフィクションです。登場人物、団体名、設定などは架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

シノドス…司教と教王により、教会の方針を決定するための、合議。


前回からの、あらすじ。

魔物増加バーン! 調査決定ドーン! 

調査隊壊滅バーン!作戦開始ドーン!

全て壊滅ドーン!

宗教黎明バーン!!

 揺蕩う意識。己の境界が過去と混ざり、見えぬものを現出させる。


 「…アルガリアの王、ランドルフに、ガリア大司教聖ペドロが、聖別を行う。

汝に、父なる神の赦しがあらん事を。

スペーロ」


 神聖魔法…そう呼ばれる、タダの魔法にしか見えぬ代物は、流麗な光の群れを演出する。

大教会に集まる貴族たちは、その様に感嘆したかのように、溜息を漏らし、万雷の拍手を送っていた。


 「見よ、我等の王が、アルガリアの覇王が、司教に跪いておられるのだ…」

 「これで、我等アルガリアの民も、ネルキアの武威に護られる…」

 「司祭に祝福された大地は、豊穣を約束されると言うぞ…」


 ある所では奇跡を演出し、ある所では、その武威を持って魔を退けている。

『大司教の武威は、並の騎士千人に匹敵する。』

そのように称される大司教、教会の尖兵が従うは…


 大教会の地下、物理的にも、魔法的にも隠蔽されたその部屋は、赤い光が照らしている。


 「聖ペドロ、13使徒が1人、ガリア大司教。報告せよ。」


 何処からとも無く、声が響く。その地に住まう者であれば、神聖な響きに感じるのだろうか。

しかし、ただただ不気味であった。


 「枢機卿猊下に、ご報告申し上げます。

未開の地アルガリアにて、我等の神聖なる武威を示し、見事蛮族の王を、神の威光に包ませる事となりました。

各地の司教は、穢れたる貴族より、その権を、正当なる主に帰依させております。


 聖典に従い、我等の使命のため、来たるべき終末に備え、民を統御することこそが、我等ネルキア教会の天命の示す道と、心得ております。」


 話す相手も分からぬような有様、しかし、確かに、応える声がある。


 「素晴らしい。実に素晴らしい成果だ、聖ペドロ大司教。

教王猊下も、安堵される事であろう。

して、聖ペドロ、喜ばしき報せである。アルガリアの王、その聖別を持って、全ての大司教区において、穢れは浄化された。」


 頬を紅潮させ、熱に浮かされたように、聖ペドロが叫ぶ。


 「それは本当で御座いますが!

あぁ、神よ、感謝を。我等の使命が、その達成が、直ぐそこまで迫っているのですね!」


 ただ淡々と、枢機卿は話す。


 「近々、シノドスが行われる。既に、最遠方の大司教区では、出立の用意を整えている所もある。

ガリア大司教区は近傍、されど教王猊下が総攬なされるシノドス、万一にも遅延など許されぬと知れ。」


 気を静めたのか、それとも枢機卿の口調が移ったのか。

聖ペドロもまた、淡々と応じる、


 「わざわざお教えくださり、誠感謝に堪えません。

承知致しました、直ちに業務を司祭団に委託し、シノドスへ向かいます。」


 大司教、枢機卿、司祭団、教王、そしてシノドス。

ロイエンベルクでは、聞かなくなって数百年は経つような、古臭い言葉の群れに、少し動揺するも、それに浸る間もなく、意識が移り変わる。

境界は離れ、直ぐに交わるのだから。


 そこは、繋ぎ目の見られない大理石で建造されている、半径約7.5km、最高高度580m、総人口20万人を超える巨大都市であった。

直感する。此処こそが、聖都ロマリアである、と。

すべてが一続きの建造物であり、巨大教会の一部であるようだ。


 道を歩く市民は、見た所、2つに大別される。

一つは、白く綺麗な衣装を身に纏い、胸にネルキア教会の象徴たる、二本柱がXにより繋げられている、ロサーリオと呼ばれる、小さなペンダントを下げているグループ、全体の4分の1程度であり、残る4分の3は、非常に質素、しかし清潔な貫頭衣を身に纏い、ロサーリオを下げる人々に付き従うグループであった。


 付き従う人々には、ロイエンベルクでは、憲法により禁止され、尋常では見られないものとなった、奴隷紋が刻まれていた。


 中央に聳え立つ、白い巨塔。その中程は、今や開かれている。

少しずつ集まる人々は、部屋の前で、宝石のような何かを翳すと、ホールのような巨大な部屋の中に歩みを進め、外縁から着座していく。


 後々になれば成る程、衣装は華美な物になっていき、色も変わっていった。

外縁は紫、中程は赤紫であり、中央部の百余名に至っては、荘厳な衣装に、赤を纏っていた。

私語も無く、場は静まり返る、パイプ・オルガンが聖歌を奏でる中で、絢爛豪華な衣装を身に纏い、純白のベールを着た者が現れると、場にいる全員が立ち上がり、祈りを捧げる。


 純白の者が着座すると、他の面々も再び着座していく。

絶えず騒がしい議会を見てきた身からすれば、実に羨ましく、そして不気味にすら感じる程の静寂。

それが中央部の赤き人々により破られる。


 「教王猊下に申し上げます。我等司教位階一同、シノドスの宣言に従い、参上仕りました。」


 純白の者、教王と呼ばれる存在は、視線を全く動かさず、静かに口を開く。


 「これより、シノドスを開会する。このシノドスが、神の意思の代弁足らんことを願う。

スペーロ。」


 「「「「「スペーロ」」」」」


 一斉に口を開き紡ぐは祈りの言葉。そして、シノドスは始まる。

各大司教区、そして司教区の報告は、赤き人々こと枢機卿評議会の議員から、教王に伝えられている。

それに基づき、指標を決定する。それこそが、シノドスの存在意義であった。


 ただの指標である筈だった。広大な領土を統御することは、大変な苦労を伴う。

だからこその、意思統一の為の合議。

しかし、眼下に広がるのは、合議とは言えない。

魔法による熱狂は、正常な思考を奪っていっている。


 教王が、最後に演説を行う。


 「ネルキア教の聖典には、こう記されている。

大いなるイリスティウス・ネルキアは、世界が終末を迎える時、天より降り、教徒を天界に導く、と。

我等ネルキア教徒の使命は、ネルキアが天より降る時、より多くの人々を天界に導く事である事は明らかだ。


 で、あるならば!今こそが、その時とは言えぬだろうか!

ネルキア教は、愛すべき教徒の、弛まぬ努力により、全ての蛮族を統御し、大いなる信仰に目覚めさせている。


 この信仰は、父なる唯一神に基づく、永遠の物だ。

しかし、この世は我等の手を持ってしても、苦悩と死、罪過に塗れている。

余には、信徒に、これ以上この世で生きる努力をせよ、とは、口が裂けても言うことなど出来ない!


 彼等は、我らは、ネルキアの蘇生から、既に241年待った。多くの弾圧を乗り越え、人口に膾炙し、蛮族を下した。

既に、十分苦しんだのだ!


 救済が、救世が必要なのだ、今すぐに!

そして、我等は、この苦悩に溢れた現し世を救うことは出来なくとも、救世を齎すことは出来よう。


 余は、今此処に提言する。

『救世の法陣』コレの構築を、開始すべき時は、今である、と。


 おぉ、父なる神よ、哀れな我等を救い給え…スペーロ。」


 意識が薄れる。境界は離れる。彼は思考する。

「救世の法陣」とは何なのか。ただ一つ確信する事は、ソレの中核が、果たされたということだ。

本日も、ご読了頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして。チャデンシスと申します。大体週一〜週三ペースで投稿しています。

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