第十二話「聖戦」
※この物語はフィクションです。登場人物、団体名、設定などは架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
前回からの、あらすじ。
魔物増加バーン! 調査決定ドーン!
調査隊壊滅バーン!作戦開始ドーン!
全て壊滅ドーン!
宗教黎明バーン!!宗教中興ドーン!!
現代描写バーン!!宗教分裂ドーン!!
国家乱立バーン!!断片開示ドーン!!
視界が暗転する、空間が乱れる。広がる平野の中で、立ち並ぶ長い木製の柄、穂は蒼色に煌めいている。
アルガリア王国の旗を掲げるその姿は、かつてロイエンベルクで採用されていたという、戦列歩兵にも見えた。
「…神よ、我らを救い給え、スペーロ。」
そんな声が響いたかと思うと、空間が歪み、何かが弾けるような音が響く。
同時に、アルガリアの兵士達も吹き飛ぶ。
臓腑は撒き散らされ、血しぶきは、無機質に地面に染み込んでいく。
ある者は息を呑み、ある者は一点を凝視する。
狂ったような笑みを浮かべ、穂を強く握りしめる者もいた。
彼等が見つめる先には、純白の法衣を纏う、一人の男の姿があった。
「…おぉ、道を踏み外した子羊よ、父なる神からの使命を忘れ、蛮族に魂を売った背教者よ。
ただ一つ、新たなガリア大司教ルニアから、最後の慈悲を与えましょう。」
再び空間が歪み、周囲の全てが吹き飛んでいく。
ガリア大司教に向かう兵士達諸共、大地に魔素を振りまいて。
しかし、ガラスが割れるような音と共に、爆発が霧散するように消えていく。
響き渡るは、アルガリア王国の国歌、『神よ、アルガリアを守り給え』。
黒い衣を身に纏い、フードで顔を隠した者たちが、大司教を取り囲む。
大司教は、顔を歪め言い放つ。
「あぁ、なんと忌々しい、人格派の異端者どもが、神聖なる御業を模倣するなど…。
神よ、我らの敵に、聖なる御慈悲を賜らんことを。」
煌めく閃光、紅い光と蒼い光。重なり合い霧散し地に満ちるは、紫色の魔素。
向かえばミンチになる。そんな状況でも、王国兵は止まらない。
その瞳は怪しく輝き、誰もが国歌を口ずさんでいる。
「「「「偉大なる王、我らが陛下『カール』
偉大なる国、我らが国家『アルガリア』
神よ、我らを救い給え。神よ我らを救い給え。神よ、我らを救い給え。
神が救うはアルガリア、我らは全てを受け入れよう。」」」」
大司教が腕を振るえば、紅い波動が地に満ちる。黒衣の者が印を組めば、蒼い音が鳴り響く。
はるか前方では、アルガリアとパルメリオンの兵士がぶつかりあい、蒼と紅に空間を染めていった。
止まらない、止まらない。誰も止まらない。空間が紫色の魔素に塗り替えられた頃、大司教の法衣は赤黒く染まり、それを囲む黒衣の者たちは、その数を減らしていた。
「…我らは最早止まらない、止められないのだ!
アルガリアよ、背教者の軍勢よ、諸君らの行く末に、大いなる災いがあることを…!!」
大司教がそう叫んだ直後、紅い閃光が全てを塗りつぶす。
閃光が消えた時、其処には何も残っていなかった。
遅れて響き渡る轟音、戦場そのものが跡形もなく消し飛んでいる。
ガラス化した大地に、ただ一つ残ったのは、紫色の魔素。
余りにも膨大なソレは、何時迄も残り続け、周囲へと拡散していく。
魔素に触れた植物は、骨のような残骸へと枯れ果てる。
そして動物は断末魔の叫びを上げ、触れた端からただれ落ち、煙を上げながら腐敗していった。
景色が変わり、視点が絢爛豪華な城へと肉薄し、その内部に移っていく。
白く輝く、大理石の円卓。其処には4つの重厚な椅子が有り、円卓の中央には蒼いタペストリーが、椅子の背後には、アルガリア、エトルリア、イスパニョーラ、ノルデンラントの旗が其々掲げられていた。
アルガリアの椅子に座る男、アルガリア王カールは、円卓を囲む他の王の顔を、一人一人確かめるように見つめ、最後に一つ息を呑むと、アルカイックスマイルを浮かべて口を開く。
「本日は、この神聖なる円卓に足を運んでいただき感謝する。
我等が今この時、この場に集えたこと、これはまさしく、神が我らを祝福し、其の正統性をお認めになられた何よりの証しであろう。」
そうして、一拍を置いて息を吸うと、カールは再び声を上げる。
「であるからこそ、我等の敵は神の敵であり、神が我らに認めし統治権を干犯せんとする者、即ち神格派からの攻撃から、我等の国教会を守護することは、我等の王権、神より与えられしソレに基づく使命であることは、明らかである。」
諸王は深く頷き、軽い拍手を送る。カールは満足気にしつつ、右手を少し上げて場を鎮める。
そうして、声を張り上げた。
「諸君!我が同胞たる、大いなる諸王よ!
今や、神格派は一線を超えた。先日、ランティシュルクの地にて、神格派のルニアによる、『神威』が発露したことが、黒衣騎士団により確認された。
奴等は大陸の脅威であり、切除しなくてはならない病理に他ならない事を、奴等自身が証明したのだ!
『神威』は恐るべき力である。
全てを焼き尽くし、消し去り、瘴気を撒き散らす。
しかし、案ずることは無い。『神威』に対抗する術を、我等は既に知っている。
余は、今ここに、『覇王』の使用を提言する。
魔を業火に包み、悪を滅し、奴等に汚された地を浄化する、神に祝福されし我等の御業。
その力は、我等四王が、一丸とならなければ用い得ない。
神の御意志に従い、我等の王権により民を護らんとする賢王よ、余と共に、この大陸に平穏を齎し、真の救済を人心に膾炙しようではないか!!」
ソレまで沈黙を貫いていた、王の一人、イスパニョーラ王ルイが、静かに告げる。
「…余は、アルボルンの地を見てきた。神格派より奪還した、我が愛すべき都市を。
其処には地獄があった。男は首を切られ、皮を剥がれ、血が抜き取られて打ち捨てられていた。
女は四肢を切断され、歪んだ欲望の吐け口とされ、最後には臓物を引きずり出されている。
赤子すらも地面に叩きつけられ、脳を地面に撒き散らしていた。
神格派にも信仰がある。同じネルキア教徒だと、余はこれまで彼等との和平を、この円卓でも主張してきた。
それこそが、ネルキア教徒の団結こそが、神より与えられし、我が天命だと信じていたからだ。」
そこで一度言葉を切り、ルイは顔を伏せて肩を震わせる。
何かを堪えるように、目頭を押さえると、しばらくしてから顔を上げ、怒りに満ちた声を発した。
「神格派は…奴等は悪魔だ。その所業は、最早ネルキア教徒とは思えない。
野蛮にして凄惨、残虐にして傲慢。悪魔の愉悦に魂を売り渡し、その信仰から自らを引き離した愚か者に他ならない。
余は、『覇王』の使用に賛成する。我等四王が、この世から神格派を消し去り、奴等に支配される、哀れな民衆を解放しようではないか。
これこそが、余の新たな天命であろう。」
広がる大地、山脈をパルメリオンの旗が埋め尽くさんとした時、黒衣騎士団が祝詞を発する。
「「「主よ、我等は成し遂げん。主よ、奴等に災いを。奴等の名はパルメリオン。奴等の主は悪魔の愉悦。
悪魔の軍勢、その行く末に、大いなる王の輝きを与えん。」」」
瞬間、蒼い閃光が、全てを塗りつぶした。
本日も、ご読了頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして。チャデンシスと申します。大体2週間に1話で投稿しています。
前後作も読んだ方が、時系列が分かりやすくなると思うので、オススメです。




