7「もっとも彼女たち二人は至極平凡に暮らしていたし、僕が彼女たちを見分けることができないのに気付くとひどく驚き、そして腹さえ立てた。『だって全然違うじゃない』『まるで別人よ』」※7
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佐矢の次に会ったのは約束通りに小学校五年生、11歳の女の子だった。
肩まで髪をたらしている美人系のコだった。
ただ返事もなく、ずっとスマホでツムツムをしていた。
―こんなコトをしたくないから、自分はゲームに熱中していますよ、という子どもながらのバリヤーなんだろうあ、かわゆい!
名前は新菜、そして新菜の父親の名は真郎で四十路の平凡な男で、物書きをしていると言う。
そこで、私もそんなに興味あるワケではないが、社交辞令で「どんな本を書くんですかい」と尋ねると「聞かないでください」と答えた。
「いや、興味あります。教えてください」
「教えられません。わかるでしょう?僕らがどれだけ罪深いことをしているか?」
アリバイ作りのようなことを云うなぁ、と思った。
後日、その彼が小説家だと判明した。
本名で活動していて、顔もフツウに晒していたから、直ぐに見つかった。
ミステリがジャンルなのだろうが、難しいロジックや新規なトリックがあるワケではない、サスペンスとかイヤミスとか云われるジャンルで、妻の不倫や前の男の種で産まれた娘、というモチーフが何度も登場していた。
そういえば、TVドラマ化した2時間ものは観た記憶が蘇ってきた。
今回は部屋を二つに分けなかった。
広めの部屋を取り、その部屋の中に個室があり、そこでお互いの娘を交換して、性的に様々に・色々愉しむのだ。
「且又さん、もし新菜が飛び出し・駆け出し・隣室の私に助けを求めたら、そこで終わりにしてくれませんか?勿論透子さんがそうしてもそのようにします。私は娘の意思を尊重したいのです」
娘の意思を尊重するのならば、こういうこと自体やめろや!とツッコミたくなったが、今は新菜ちゃんにツッコむことを最重要課題にしたので、もうくだらぬ会話はしたくなかった。
透子は無表情で真郎に伴われ個室に連れ込まれ、新菜はやはりツムツムをしながら部屋に入り、私が身体中をまさぐったり・クンニリングスをしたりしてもツムツムをやめはしなかった。
おそらくカノジョとしてはそれが抵抗の一種だったのだと思う。
ゲームに熱中することで、悲鳴も喘ぎ声も出さない、そんなことをしても私はゲームしか興味ない、だから、私はオマエになんか汚されないどころか、オマエをなんとも思っていない、そんな抵抗だ。
だが結局私が勃起した男性器を自分の女性器を挿入される瞬間、新菜の表情は醜く歪んだ。
おそらく三多のサークルで何度かこのようなことを既に経験していて、数人とはゲームで熱中している態度で興ざめを誘い、本番を逃れたという成功体験を持っていたのだろう。
その表情で、新菜の思考を十二分にトレースできた。
それからの悔しがる表情、捨て鉢になっていく表情、全てを諦めた表情、どれもたまらなく愛おしかった。
―このコと結婚してもいいかな?でも佐矢が嫉妬するなぁ。
私は今から偽善を心の中で唱えるが、新菜の気持ちが私の心の中に入ってきて、私は心が苦しかった。
「新菜!愛している!オレがこの地獄からキミを救ってあげる!」
耳元で囁いたが、新菜の諦めた表情に変化はなかった。
―ノリの悪いコだなぁ。
シャワーを浴び、身なりを整え、私と新菜を個室を後にした。
真郎氏にメールを入れたが反応なく、更に10分まったが、リビングに出てくることもないので、私は真郎氏と透子の個室のドアのノブをひねって、開けた。
ノックをしなかったのは透子がどのように犯されているかを見てみたいという助平根性があったことをここに明言しておく。
ところが、声を上げていたのは真郎氏の方だった。
透子の未だ狭いお腹に顔を押し付け、声を殺し泣いていた。
涙が頬を伝わるのも確認した。
「安心してください。新菜ちゃんはここにいます。ほら、透子、帰るよ」
私は真郎氏のただならぬ気配を感じ、部屋を去ることにした。
車内で何度かあらためたが、透子には汚された形跡どころか、服を脱がされたことすらなかったようだ。
―自分の大事な娘を赤の他人のオジサンに差し出すのがたまらない、か。
いや、あの部屋は元々あの親子の宿泊先であったのだから、私と新菜が性交した個室にはカメラやマイクが仕込んであったとみる方が穏当であろう。
―今頃二人でその様子を再生して観ているとみた方が正しい。
神パパには色々いるんだなぁ、と思ってしまうオレがいる。
「ガストン、こんなに巧く使うヤツ、初めて見たよ」
これはずっと最中に考えていた、新菜への捨て台詞だ。
―つまり撮影していいんだな。
三多からは撮影は禁止だと、それに一度提供された少女と会うことは二度とないと言われていたが、一枚岩ではないと悟った。
次に紹介された少女は中学一年生の12歳で名前はメイファ、中国人だ。
「三多にはナイショね」とメイファの父親はホテルのラウンジで話し始めた。
おたくの透子ちゃんを私が犯すことはない、でも裸の写真を撮らせてもらいたい。顔は隠す。勿論メイファとあんたがセックスするのはかまわない、もう何度もしているから簡単に入るハズだ。うちは子どもが9人いる、上は大学生で、下は透子ちゃんと同じくらいの年齢。みんな裸の写真を好事家に売り、三多や他のバイヤーを通じて、このように抱かせて見返りを受けたり・売春させたりしている。そういうものだと理解させている。男の子も従っている。そうすれば有名校の学費を出してやると言ってある。したくなければ、本国の山奥で農民をすればと云ってある。日本でいい生活と高い学歴を望むならば、高値で売れる数年だけガンバレ!と云って、9人がみんなこっちの選んだよ!
これも、神パパ、なのか?と私は訝しんだが、メイファは素晴らしかったので、直ぐに父親の存在を忘れた。
ソバージュがかかった長い髪に、すらっとした手足、なによりその身体から溢れる躍動感と明るさ、つまり笑顔が素敵だった。
こんなコトをしているのに、屈託ない素晴らしい笑顔だった。
どうせ、この父親も撮影しているんだ、と思ったので、メイファに撮影を頼んだ。
「いいよ!」
するとメイファはお気に入りのポーズを取り出し、モデルのようにふるまった。
ベランダに出て、避暑地の少女風の写真を撮れと私にねだった。
そしてどうりで大きいカートバックだなと思っていた中から、取り出したのは夏服のセーラー服だった。
初めての中学生だから佐矢や新菜よりお姉さんだと思っていたが、未だ制服に着られている感じがして、たまらなく初々しい。
ベタだがやはりチャイナ服も着てもらって撮った。
口を閉じて・キッとカメラ目線をもうらうと大人びた凛々しい表情になるが、くすぐったり・面白いことを云うとけらけらと笑ってくれて、極上の笑顔を見せてくれる。
―本当に楽しい。
思えば、やはり子どもを己の性のはけ口にすることはいけないのだ。
というか、この世で最も重い罪だ。子どもを性的に虐待することに比べたら、強盗や殺人のほうが罪が軽い。
―なぜならば強盗や殺人は一瞬で終わるが、子どもへの性虐待は10~30分の時間は最低でもようするから。
その時間、罪の意識に苛まれずに持続して子どもの心身を凌辱するなんて、人の心を持ち合わせていない。
つまり強盗や殺人は出来心で、という言い訳は通用するが、子どもへの性虐待にそれは該当しない。
―メイファに会えて良かった。オレはこれから先も間違いを犯し続けるトコだった。
今メイフアはオレの目の前でルームサービスで頼んだ生春巻きやハムメロンを食べている。
「ちょっとくらい、いいだろう」
メイファは私の誘いにはにかむ。
だから、答えを待たずにグラスにワインを注いだ。
「舌の上に数滴だけ垂らすだけでいいんだ」
メイファはそのようにした。
そして気に入ったらしく、ごくりとひと口飲んだ。
ワインと今食べているものたちのマリアージュも直ぐに楽しみ始めた。
目がとろんとしてくる、頬が薔薇色に染まる、口角が上がる、私の横に座る。
身長差は20㎝はあったが、メイファの方から唇を絡ませきた。
それはとても甘美な経験であったが、同時に、これも父親から仕込まれているのかよ?と訝しんだのも又確か。
「おにいさん、あのコ、おにいさんの娘、かわいそうね」
そのメイファの台詞に父親からは集金のルールだけ守れば、自由にしていると理解した。
「それを言ったら、キミだって、かわいそうだ」
「キミ?いや。名前で呼んで」
「じゃあ、メイファもオレをヒロヨシと呼べよ」
「ヒロヨシ、好き」
「メイファ、愛している」
そこからベッドになだれ込むという展開はなかった。
着席のまま、オレはメイファに乳首を舐められ、口を口で塞がれ、手で果てた。
しなしなになった陰茎をスカートをはいたままのお尻で又勃起させ、今度は口で果てた。
―12歳の女の子が、これ程かよ!
2回も抜かれたこと、そして12歳の少女に手玉に取られたことの快楽で、これ以上ない程の満足感を得た。
「ねぇ、あの子、未だ小さ過ぎるよ。かわいそうだよ。交換材料にもうしない方がいいよ」
そしてメイファと私はアド交換をした。
そう、透子を相手の父親に貸さずともメイファと会えることとなった。
父親に渡らず、お小遣い稼ぎしたいということだった。
金額は一回、15万円と高額だったが、私の実家の太さでは月に1回くらいならば、余裕の金額であった。
しかも今度はどんな服を着てもらうかよ!?
―新宿丸井アネックスでメイド服やゴスロリ服を買って、ホテルでローティーンの中国少女に着てもらい、撮影や食事をして、最後射精に導かれる、って、こういう方が無表情な子ども犯しをするより楽しいや!
もうメイファと直接会えるし、三多にはメイファとの裏取引を嗅ぎ取られないように「罪悪感で夜眠れなくなった」とか云って、もう紹介を断ろうと思っていた。
「では、次のコで最後にしませんか」
そう三多に言われた。
指定されたホテルのラウンジにはその父親だけがいた。
「娘、依子は、自動車の中で寝かせてあります、睡眠薬で」
その父親の話。
「娘は知恵が遅れています。精神薄弱者です。今年14歳になります。母親は出ていきました。娘をよそ様に提供するのは5年めになります。三多さんに了解は得ています。お金、10万円ください。そのお子さんは私、いりません」
―未成年の上に、更に障碍者への性的虐待とは禁忌のロイヤルストレートフラッシュか!
タブーを犯すことの快楽か、とオレは色々夢想した。
話によると顧客選びがとても難しいので、ネットでいちげんさんに娘を提供とか論外なので、三多のような神パパ組織の代表等に客を紹介してもらっているらしい。
「だけどさ、イヤだよ、知的障害者、なんて」
こう言うとそれは倫理的にイヤなのか、障碍者特有のヘンな顔やよだれを垂らしているようなイメージでイヤなのか、判らないであります。
「まずは会ってください。ご理解いただけると思います」
ああ、なるほどとオレは思った。
母親が出て行ったっていうのは、まずはこの父親が、どの程度だかは測りかねるが、娘に性的なイタズラをしたことが原因だな、と思った。じゃないとこれ程卑しい笑顔で「まずは会ってください。ご理解いただけると思います」なんて言えない。自分で味わったんだ。
母親は娘を守らなければならないという発想に行くものだが、将来の無い娘だから、別れて人生を仕切りなおすことを選択したのだろう。
苦渋の決断だったろうが、悪魔の所業であることには変わりない。
駐車場にアイボリー色のカローラ。
―わざと昭和の、たぶん70年代のモデルにレトロアしている。このおっさん、案外趣味人だな。
後部座席にはショートボブにちんまりとして女の子が横たわっている。
お人形さんみたい、という表現がよく似合う。
「あれ、お父さん」
眠い目をこすりながら、娘は目覚めた。
夢見心地のまま、娘の依子は父親に伴われ、ホテルの一室に向かった。
その後を私と透子が着いていく。
「いい子にしているんだよ、お父さんは後で迎えに行くからね」
そうして父親が部屋から出ていく。
起きたてで口の中が気持ち悪いし、身体が寝汗でべとべとすると云い、その場で服を脱ぎ始めた。
「うわぁ、かわいい女の子!私の妹にするよ」
裸のまま透子を抱き上げた。
「透子っていうんだ。一緒にお風呂入ってきなよ」
「うん!脱がせてあげるね。透ちゃん!」
なんと100分も二人で入浴していた。
その間にルームサービスでニョッキやラザニア、パエリア等女性が歓びそうなイタリアンをオーダーした。
テーブルにご馳走が置かれ、依子と私のグラスには赤ワインが、透子のそれにはシードルが注がれた。
入浴中に、透子と依子が仲良くなったのが判る。
微笑レベルだが、あの透子が笑う。
二人のもミートソースやクリームソースを口の周りにつけ、美味しそうに食べている。
依子はアルコールも手伝って上機嫌だ。
―こういう真のイノセントである依子嬢といるとメイファは高級娼婦という感じの臭味があるな。
二人ともお腹いっぱいになってのでダブルベッドに横たわる。
「美味しかったね~」と依子が云うと透子が笑顔で答える。
透子が依子の胸に顔をうずめている。
―よかったね、透子、久しぶりのお母さんだ。
「おまたがじんじんするよ~!」
私は依子にクンニリングスをしていたのだ。
心と脳は遅れていても陰核は立派に主張していた。
気を利かせてか・イヤだからか透子が向かいのソファへ移動する。
依子はいちいち発する言動が幼くて・アニメ声でたまらなかった。
知恵が遅れているためか、社会的・道徳的な罪や恥の概念を持っていないから、ダイレクトに欲情を発声するのだ。
―三多の狙いは、コレ、か。
そして最中、透子と目が合ったのだが、彼女はオレを睨んでいた。
村上春樹「1973年のピンボール」(講談社、昭和55年)