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濁った真実②

パトカーからおりて、入り口に近付く。

店のドアには『準備中』の札が掛かっていて、すぐ横のガレージには軽自動車が1台停まっていた。


カランカランとベルを鳴らして入店すると、スーツ姿の若い婦人警官が警部に敬礼した。


「警部!お疲れ様です。そちらが越智探偵ですか?」


「そうだ。越智先生、レムさん、こちらが私と一緒に犯人を追いかけた警官です」


「初めまして。越智侑芽です。こっちは助手のレムです」


「お二人ともお噂は警部から伺っております。捜査協力感謝いたします」


挨拶を終え、侑芽は店内を観察した。


店内はカウンター6席と4人掛けテーブルが1つという比較的こぢんまりとした広さ。一応3人掛けのテラス席が入り口の横にあったが、上からカバーがかかっていたので、ほぼ使われていないらしい。

外観と同じく、内装も木目調になっていて、床は濃い色味のフローリングだ。

トイレはカウンター席の横にあり、表記によると男女兼用のようだ。


問題の容疑者はテーブル席に座っている。

エプロンをつけた口髭の紳士、メガネを掛けた婦人、トレーナーにカーゴパンツ姿の青年の合計3人だった。


「ではお手数ですが、3名ともこちらのお二人に、もう1度話を聞かせて下さい。」


容疑者は顔を見合わせながら、エプロンの男性が口火を切った。


「僕は店長の根牟田ねむたです。昼の2時少し前、カウンターの中でお客さんが購入されたコーヒー豆を袋詰めしていたら、突然刑事さん達が来られてうちの店に泥棒が逃げ込んだ可能性があるからとのことで・・・。

うちは2時に一旦閉店するので捜査するのは別に良いんですが、5時のバータイムまでには終わって欲しいんですけど・・・」


根牟田はしきりにハンカチで額の汗を拭きながら落ち着きなく話す。


次は隣にいるメガネの婦人が口を開いた。


「私は別戸べっとと言います。ここの店にはよく来ていて、今日はここにコーヒー豆を買いに来たんです。牟田さんが豆を袋に詰めてくれているのを、頂いたお冷を飲みつつカウンターで待っていたら、刑事さん達が来たというわけです」


購入したというコーヒー豆は紙袋に入ってテーブルに置かれている。


最後の若い男は不機嫌そうに頰杖をつきながら、侑芽とレムを訝しげに見つめている。


「俺は間倉まくら。散歩してたら急に腹が痛くなっちまってよ。ここのトイレを借りに入ったんだ。

まぁ痛みはすぐに治ったんだが、トイレ借りただけじゃ悪いと思ってお茶を注文してカウンターで飲んでたら、刑事が来て足止めを喰らってるってわけだ」


間倉と名乗った男は話した後、警部にジロッと視線を移した。


「なあ刑事さんたちよぉ。犯罪が絡んでるだろうから仕方なく協力してやってるけど、なんでこのお嬢ちゃんと兄ちゃんに事情を話さないいといけねーんだよ?何者なんだよこいつら?」


警部はコホンと咳払いをして侑芽の座っている椅子の横に控えた。


「えー、こちらの方々は何を隠そう、夢中警察署の専属相談役であらせられる越智侑芽探偵と助手のレムさんです!」


なぜか誇らしげな警部をよそに、当の侑芽は顎に手を当ててメモ帳をめくりながら思考を巡らせていた。

レムはそんな侑芽を見ながらラブラドールを思わせる、人懐っこい笑顔を浮かべてニコニコしている。


容疑者たちは「探偵?この子が?」とヒソヒソ話しているが、そこは気にせずに次は質問に移ることにした。

警部たちも宝石探しに時間を取られていたので、ここからの詳しい事情聴取の内容は初耳である。


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