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モミジをもむ  作者: 寺子屋カヤ
5/5

(好き)

(へへへへ・・・)

天井を見ながら、ヨウコの顔が徐々ににやけていく。

カコはうつむいたまま暗い表情で歩いている。


「ヨウコちゃん足が大丈夫?」

「へ?足ぃ?」

いきなり夢から現実に引き戻され、ヨウコが上ずった変な声を出す。

カコが微妙にたじろぐ。

「コホン」

咳払いをしたヨウコが軽く目を細める。

「大丈夫だよ。こうしているとねえ、まーね…。フフッ」

セリフの後半、ヨウコが子供らしい無邪気な笑顔になる。

「?」

「カコちゃんちに行く時は、柿をぎょーさん持ってくね!うちの柿、とってもおいしーんよ」

「わっ、楽しみ。今年はまだ柿、食べてないんだ」

(あっ…)


ヨウコがカコの髪にモミジが一つ、のっていることに気がつく。

「あははっ、モミジひっついてるよ」

「えっ、うそ」

カコが自分の髪を撫でるが、モミジが捕まらない。ヨウコが代わりに取る。

「お嬢さんは、随分おしゃれな髪飾りしてますねぇ」

ヨウコが、モミジからカコに視線をちらりと移し、半目でせせら笑う。

「も~」

カコが泣いているような、むすっとしているような変な顔でうなる。

「冗談冗談。でも、ほぉんに綺麗な紅の花みたいなモミジやけぇ、似合ってたよ」

「…もー」

カコが先ほどより小さな声で、照れたような呆れたような表情をする。

「なんで、そんなこと言うかなあ?ヨウコちゃん、時々男の子みたい。友達は大切にしないとダメよ」

「へぇ、へぇ」

ヨウコが片手の親指と一指し指でモミジをクルクル回しながら、生返事をする。


「はあ…」

カコが「言っても無駄か」と言いたそうにため息をついて、先に教室に入る。

ヨウコがカコの後ろ姿を見送って、廊下の窓に近づく。風で髪が揺れる。

ヨウコの口元がモミジで隠れている。

(カコちゃんとの時間は、大切な思い出だよ)

雨はもう降っていない。  

モミジが風で飛んで行き、見えなくなる。

ヨウコが少し悲しそうに微笑み、静かに目を閉じる。



雨粒がのったツヤツヤな、柿が実った木がある。

その一つにひらりとモミジがのる。





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