擬洋風の家
ヨウコの泥だらけの足が雨で綺麗になってはまた、泥で汚れる。
イツコをあやしながら、ゆっくりと校舎に向かう。
「ヨウコちゃんさあ…、また家に来ない?」
「え?」
「この前来た時、喜んでくれたでしょ?私が作った目玉焼き」
「ああ、うん!目玉焼きに卵2つ使うの、生まれて初めて見た!それに卵って風邪の時しか食べないし…」
「う、うん?…気に入ってもらえて良かった。また作るから、遊びに来てよ」
目玉焼きはカコにとって日常の料理だが、それは黙っておいた。
「本当!行く、行く!でも、カコちゃんって料理できるの意外だなあ。普段はお手伝いさんがご飯
作ってくれるんでしょ」
「いつもはね。でも、お手伝いの人は豪華な料理の作り方知らないから、特別な日は私が作るの」「へえー…そうなんだ!カコちゃん、しっかりしているなあ」
ヨウコとカコが校舎内を歩く。
(あー、カコちゃんち…かー)
ヨウコはカコの家を思い出す・
平屋が密集した道を歩いていると、上からモミジが一つ、ヨウコの足に落ちてきた。
視線を上げると、石塀からモミジの木がはみ出している。
カコが石塀から顔を出し、笑顔で手を上げる。
ヨウコが石段を駆け上がると、擬洋風の屋敷が姿をあらわした。
(カコちゃんのお家は、物見やぐらみたいに高くて、下からじゃ到底見えない。東京から来た大工さんに作ってもらったお屋敷は、見たこともない物がたくさんあって、よく分からなかったけど、とっても素敵なお家だった)