鳥小屋
「おぎゃー、おぎゃー」
「ん……」
ヨウコは妹イツコの声で目が覚めた。
寝巻き姿の寝ぐせがついたおかっぱ頭はまださえていない。
狭い部屋の中は7枚の布団が乱雑に敷いてある。たった今、寝ていた人が出て行ったようだ。
ヨウコがぼうっとした表情で布団を踏んで、イツコの所へ行く。
「よしよし…」
ヨウコがイツコを抱きかかえ、わずかに左右に振る。
イツコの鳴き声に混じって、外からかすかに雨の音が聞こえる。
「はあ、雨か…」
「あら、ありがと」
かっぽうぎを着た母が湯気まみれの台所から寝床に来て、イツコを背負う。
「ちょっと早いけど、ご飯食べちゃって」
ヨウコがつきたての餅を食べながら、窓を見ると、濡れた柿の木がある。
(お父さん、仕事が早いな…)
「コケ―!コッコッコッコ…、コケー!コッコッコッコ…」
汚れた小さな家畜小屋近くの柿の木。そこに死んだ鶏が数羽、つるしてある。
くたびれたシャツに少々汚れたズボンの父が回収していった。
「…ん!お母さん、もう行くよ」
ヨウコが2個目の餅を食べながら、慌ただしく部屋を行ったり来たりして、身支度をする。
「ご飯早く済ませたからって、早くに行かなくていいのよ」
「ふははっ、今雨が弱くなったから、急いで行くよ」