お茶の時間 1
「うーん。ミサ、正直に言ってもいい?」
オリーがそう尋ねてきたのは、午後の休憩時間だった。
午後の休憩時間は、たいていお茶とスイーツをいただきながら雑談をしている。
ヨハンさんたちも手があいているときは、いっしょにすごしている。
今日はクルトさんがいっしょで、場所を畜舎に移していただくことにした。
いつもは、屋敷の厨房にあるテーブルかテラスですごすことが多い。
「もちろん」
オリーはわたしより何歳か上で、クルトさんと同年齢らしい。
ほんとうは彼女のことをさん付けで呼びたかったけれど、おばさんみたいな呼ばれ方は嫌だからと嫌がったので呼び捨てにしている。
「こう言っては悪いけれど、あなたのその家族ってクズよね」
「オリー、なんてことを言うんだ。ミサに失礼すぎるだろう」
「いえ、いいのです」
クルトさんが慌ててオリーの口をふさごうとしたけれど、それを止めた。
「クルト、あなただって思うでしょう? こんなに素直で可愛いのに、奴隷みたいな扱いをして。いいえ。奴隷以上にひどい扱いだわ。そんな連中、クズどころかクズ以下の存在よ。話をきいただけで腹が立つし、王都に行ってぶっ飛ばしてやりたいくらいだわ」
「まぁたしかに、家族のすることじゃないよな。おれだって腹が立つよ。それに、もしも会ったとしたら無言で殴ると思う」
二人は、顔を見合わせてウンウンと共感しあっている。
「申し訳ありません。不快な話をきかせてしまいました」
「なにを言っているのよ。わたしたちがききだしたのに、あなたが謝る必要なんてないわ。それに、すぐに謝るのはよしなさい。ここは、あなたがいままでいたところとは違うの。だから、そんなに気を遣ったり身構えたりする必要はない」
「オリーの言う通りさ。ミサ、仕事だって適当にしていればいい。オリーを見ているだろう? これでよく大きな顔をして給金をもらった上で文句や希望をバンバン言えるなと不思議に思うよ」
「なんですって、クルト? わたしがなんだって言うのよ。ちゃんと仕事をしているでしょう? 違う?」
「テキトーにな。じつにテキトーすぎる。ローマン様じゃなかったら、とっくの昔にお払い箱だよ」
「失礼ね。そんなことないわよ。ねぇ、ミサ?」
「えっ? え、ええ、ええ」
突然尋ねられたものだから、どっちつかずの反応しか出来なかった。
だって、オリーの仕事ぶりは、クルトさんの言う通り適当なところが多いから。
だけど彼女のおおらかさや明るさは、そんな仕事ぶりを吹き飛ばすほどの効果がある。
わたしは、彼女のそんな人柄にかなり助けられている。