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以外に現実主義者

 前話では指数関数のふるまいを見てきた。ちょっと現実には有り得なさそうな関数である。では、指数関数と現実はまったく関係ないのだろうか?


 指数関数とは何か。その本質とは”再生産”だ。再生産とは自分で自分を生み出すこと、要するに分裂するのである。指数関数の式を思い出してほしい。


 y=x^2=x*x


xにx自身を掛け合わせることでyを生み出している。これが”再生産”だ。 


 再生産というのは自然界にありふれている。例えば猫。猫の親は猫である。猫の子供もやっぱり猫。猫から犬が生まれることはない。猫は猫を再生産するのである。

 さて、もし再生産が線形関数に従うのならば、どういうことが起きるだろうか。線形関数の式は


 y=x


である。

 今、親世代の二匹の猫がいる。 x=2 である。この親猫が生む子供世代は y=2 、つまり二匹だ。子供世代が孫を生む。やっぱり x=2 なので y=2 となり二匹。猫全体で見れば二匹から六匹に増加した。しかし、各世代では二匹で固定されてしまっている。この猫は自然界で生き残っていけるだろうか。なかなか厳しそうだ。

 では、指数関数に従うとどうなるか。親世代の猫は二匹である。よって


 y=2*2=4


となり、子供世代は四匹だ。孫世代では


 y=4*4=16


となり、十六匹だ。世代が進む毎に世代規模が増えていく。これなら自然界を生き残れるだろう。

 自然界では子供が大人に成長することは稀だ。生まれた子供の多くは飢餓や病気、外敵などによって死んでしまう。そうした環境で数を増やしていくには線形関数ではなく、指数関数のパワフルさが必要とされたのだ。


 この自然の摂理への無理解が引き起こす問題がある。「多頭飼育による飼育崩壊」だ。先の例を思い出してほしい。親世代二匹から始まったものが孫世代では十六匹、総数では二十二匹になっている。実際の猫はもっと子供を産む。妊娠期間も短い。一年後にはとんでもない数になってしまう。

 この飼育崩壊を防ぐ手段として用いられているのが不妊手術。そもそも増えなくするのである。しかし

「手術なんてかわいそう」

そう感じるかもしれない。ではどうするのか。答えは一つだ。

「 x=1 以下で管理する」

前話で、指数関数が x=1 を境にそのふるまいを変化させる様子を見てきた。この x=1 を閾値しきいちという。どこかに存在するだろうこの閾値を超えないように管理できれば飼育崩壊は起こらない。しかし、そこに待っているのは不妊手術よりもはるかに残酷な現実かもしれない。


 ここまで猫を題材に指数関数を見てきたが、別のものにも目を向けてみよう。新型コロナウィルスだ。新型コロナも自然物である以上、その増殖は指数関数に従う。増殖の結果感染がおこるのだから、感染者数も同様だ。感染者数の僅かな増加に神経をとがらせる専門家を見て

「大げさだな、ちょっと増えただけなのに」

そう思うかもしれない。しかし、それは指数関数に従うのである。もし感染者数が閾値を下回れば感染は収束に向かう。しかし、閾値を超えてしまうと制御不能の感染爆発だ。そして、どこに閾値があるのか誰にも分からないのである。


 最後に大事なことを。私達が生活しているこの社会、資本主義も指数関数になっている。資本主義では資本が資本を生む、資本の再生産が行われる。再生産である以上、当然指数関数的な特徴を持つ。この中で利益を最大にしようとしたのがアメリカ、なるだけ閾値に近づけて管理しようとしたのが日本だ。資本主義を指数関数の目を借りて眺めてみれば、大金持ちになる秘訣が見えてくる。

「大金持ちになるためには一定以上の金を持っていること」

世知辛い。

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