三話 サプライズというものは
本日最後です。
中学生になった。エスカレーター校なので受験に追われることもなく……テスト勉強も学校の授業と前世の記憶だけで十分だから余裕である。
それは幼稚園からの付き合いで親友でもあるハル君とツキちゃんもおんなじようで。いや、きみたち前世あるわけでもないのになんで授業聞いただけで分かるの? これが本当の天才なのか……?
運動は、小学生高学年から部活が開始されていてハル君は陸上部に所属してエースに。ツキちゃんは女子バスケのこれまたエース。
天は二物を与えないとか言ったのはだれだ? 勉強も運動もなんなら容姿もすごいぼくの親友は自慢です。え? 神から二物与えられてるじゃんって? それが無かったら並べてないです。
ちなみにぼくはダンス部に……両親のこともあるし一番楽そうなんだもん。経験的な意味でもコネ的な意味でも(小声)。
ダンスレッスンにはお邪魔する回数が減ったけど、それでも毎月遊びに行っている。数年で、何人もの人がデビューをしたり辞めていったりして、顔ぶれは全然違うものになってる。それでもイケメンと美少女が揃ってるところが……やばいよだれが。
あ、ぼくは見て楽しむタイプだから安心してね! 最近、というか小五のあたりから男性側のレッスン教室で着替えを見ることができなくなった。直接言われたわけじゃないけど、なんとなくそういう空気が流れるのだ。髪が伸びてきたし女の子っぽくなったからかなぁ。それでも髪を帽子で隠して、すこしブカブカのパーカーとかを着ればまだまだ行ける……いや悪いことをしてる訳ではないんだけれどもね?
ハル君とツキちゃんとは、小学生のころと同じように良く遊んでいる。ただ、ふたりともクラスメートとかの子とも遊ぶのが増えているし部活もあるから、休日に集まってという形で。
ぼくの見立てだけど、ハル君とツキちゃんは両思い……片思い? 両片思いっていうのかな。中学生になって男女の差が出てきて、明らかに意識をしているのだ、ふたりとも。
どちらも他の生徒から告白を受けることがあるのだけど、そのどちらもがぼくに対して「告白してきた相手があいつだったら……」って愚痴ってくるの! 最高かな? この立場!
もうぼくらも二年生になるし、夏休みまでにはきっとできるだろう。ふたりで遊ぶ時間も取れるだろうし……いや夏の大会があるか。それでも時間は取れるし、なんとかなる! がんばれ、ふたりとも!
あ、ぼく? ドッヂボール大会のあとも、友だちができなかったよ。コミュ力はあるから円滑に物事を進められるし、なんなら仲介役とかをすることもあるけど、残念ながら。つまりは……察して? ね?
現状狭く深くの交友関係を築いているぼくの最近の楽しみが都市伝説で……あ、いま厨二病って思った? でもね、思ってたよりおもしろいんだよ~これが!
エイリアンの子ども、戦場の悪魔、予見の占い、百面相etc…。
前世のぼくならたぶん信じなかったと思うんだけど、ぼくの存在が既に都市伝説みたいなものだからどうしても興味が出ちゃうのだ。100人に望んだ力を転生させる……神様が言っていたこと。つまりぼく以外にもあと99人の転生者がいるわけで。
いや普通に怖いな、と。
だからそれに対処するためにも毎月のお小遣いを使ってそういった雑誌を買ってみたり、インターネットで調べてみたりと。
ぼくみたいな慎ましい望みをしてる人が全てじゃない、というか少数派なのは分かってるからこその備えをしておく……でも子どもだから出来ることではないけども。自己満足です、はい。
それは置いておくとして。
ぼくの13歳の誕生日、妹ができた。
もう一度言うよ。妹が、できた。
そういえば言ってなかったけど、ぼくのお父さんは日本人だけどお母さんは外国出身、日本育ちなんだよ。つまりぼくはハーフなわけだけども、できた妹はぼくのふたつ下の、純日本人なのだ。
あ、不倫じゃないよ? ぼくもそう思ったけども。あいや、ぼくはお父さんを信じていたよ!
「この子の両親が事故で他界してな。養子として引き取ることになった。自己紹介できるか?」
「お姉様、初めまして。お姉様の妹になりました、リサです。よろしくお願いいたします」
ペコリと黒くて綺麗な髪を揺らしながらお辞儀をするリサちゃん、かわいい。数多くのイケメンと美少女を見てきたぼくにかわいいと思わせるとはなかなかやるね……! ……あれ、もしかしてぼくいま最低?
「あ、よろしくね、リサちゃん。お姉様は固いし、もっと気軽に呼んでいいからね」
「分かりました、お姉さん」
「あはは、敬語もね」
首をかしげるリサちゃん……まさか素で敬語を? とりあえず揺れる黒髪がかわいいので撫でておく。さらっさらだぁ!
「仲良くできそうで良かった。部屋はユウの隣にしたから、困ったことがあったらなんでも聞きなさい。それじゃあ、仕事に行ってくるよ」
「はーい! 行ってらっしゃい~。ほらリサちゃんも!」
「い、行ってらっしゃい」
リサちゃんのお部屋……と言っても、あるのはベッドとエアコンローテーブル、それにタンスだけだ。あとはダンボールくらい。これを片すところから始めようかな? お姉ちゃん頑張っちゃうよ!
「えっと、お姉さんは嫌じゃないんですか?」
ぼくの服の端を引っ張って、そう聞くリサちゃん。
「だって、急に家族が増えたって言われて、赤の他人と同じところに住むことになって……」
なるほど、リサちゃんは自分のことを邪魔物だと思っているということなのかな? 決めつけになりそうで怖いけども。
「ぜんぜん嫌じゃないよ? まだお互いのことを知りもしてないのに、好きになるのも嫌いになるのもなくない? だから、断言はできないけれどもね。あははは」
好き嫌いをするのなら、それを知ってからでも良いと思うのだ。食わず嫌いだけは絶対にしてはいけない……。ピーマン? 帰ってください。
「そうですか……」
あ、まだ解消できてないっぽいな~。まぁぼくの言い方が悪いんだろうけれども。ぼくはどれだけコミュ力があっても、伝えたいことが伝えやすくなったり、相手のことを知りやすくなったりするだけで常に最善を返し続けられるわけじゃないことを、今までの数年でわかっているし、しょうがないとは思うけど。
それに、人からもらった力で得たものは、自分のものではない気がするし。
「……っ! ぅっ、ひっぐ、うっううわあああああん!」
「おおおどうしたの!? あ~よしよしお姉さんがついてるからね、よしよ~し」
突然泣き出したリサちゃんを抱き締めながら撫でていると、次第に泣き声が聞こえなくなって、その代わりに呼吸音だけが聞こえるように……泣きつかれて寝ちゃったのかな? とりあえずベッドに……あ、この部屋のベッドシーツも布団もない……ぼくの部屋でいっか。
お姫様だっこをしてリサちゃんを部屋に連れていき、ベッドに寝かせて毛布をかけておく……あれぼくのベッドくさいかな? 消臭スプレーかけた方がいいかな? 起きたときに「くっさ」とか言われてそのままぼく=臭いみたいなレッテル貼られて学校で更に孤立……考えるのやめよう。
リサちゃん、あれかなぁ両親のことを思い出して泣き出したのかな……たしかにまだ小学生の子が両親亡くしたら悲しいもんね、起きたらどうしようかな……。
目にかかっていた髪の毛をそっとはらって、かわいい妹のためにキッチンに向かった。
主人公(愛称ユウ)の誕生日はまだ決めてませんし。ユウ、ハル君、ツキちゃんのフルネームも決めてません。なんならリサちゃんのフルネームも決めてません。ちなみにリサというのも愛称です。
勢いで進めてるせいで計画性がお散歩に出ているみたいで。
十話までには決まってるといいな……。