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一話 蚊に刺されない体を


 気づいたら死んでいて、気づいたら知らないところにいて、気づいたら背の低い初老のいかにもなおじいさん「神じゃよ!」……神じゃよさんが目の前にいた。


「ふはっ! じゃよはいらんよ」

「あいー。状況整理に時間もらってもいいですか? 時は金なりって言って何度も急かすタイプですか? のんびり作業してたら叩いて殴ってじゃん拳グーしてくる人ですか?」

「そんなことはない、というかわしのルックスでそんなことをするように見えるかの?」

「人は外見ではわかりませんし。それで神じゃ……神さn…神様? なんでぼく神様と話してるんですか?」

「ふっふっふ、それはのぉ……」


 神様は少しうつ向いて、肩を震わせて怪しげなオーラを放っている…!


「お主を転生させるためじゃ! ……なぜ身構えておる」

「いえ、指先からビーム飛んできそうだったので。どうしようもないですけど」

「そんなことか。わしにもできるぞ、ほれほれ」


 と言いながら適当な方向に向けて指を向ける神様……ごめんなさい何も見えてないです。眼科行った方が良いですかね?


「というか、転生、ですか? 剣と魔法と死が狂喜乱舞してる異世界ですか?」

「たしかにお主の住んでいたところよりは死が身近じゃのぉ……。異世界じゃなく地球じゃよ。同じ世界のな」

「へ~。うれしー」

「棒読みなんじゃが……。わしがの、100人に望んだ力を与えて転生させてみようと思っての。お主は選ばれたのじゃ」

「へ~。うれしー」

「さっきと一言一句違わないのじゃが……」

「じゃがってなんかジャガイモみたいで美味しそうですね。それじゃあぼくも望めばパワーを得られるんですか?」

「あぁ、いいぞ! なんでも与えてやろう」


 なんでもかぁ、特にない……。


「ほら、なんかないのかの? 触れたものを金にする力とか、前世で不便だったことをなくせる力とか、なんならジャガイモを無限に出せる力でもいいぞ」


 ジャガイモ? この神様なにを言ってるんだろ……。でも前世で不便だったことなら……蚊とかスキンケア?


「ふはっ!まず蚊が出てくるあたり相当嫌いなんじゃな、耳元に来られると…」

「黙ってください」


 思い出しただけで震えがっ。

 あとはコミュ力とかもう少しあれば、きっと良い人生になったんだろうな~。


「困ることのない体とコミュ力ほしいです」

「思考を読んでいたが、別の意味で他の転生者と同じくらい強欲じゃな」

「力イズぱわーとか言う転生者もいるんですか、それに比べれば慎ましいと思います。たぶん」

「ほっほっほ、わらえるの」


 わらわれた。でもたしかに、望んだ力と言われると魔法とかそういうのを望むのもありなのか……。


「わしは一度もひとつとは言っていないぞ」

「ですね。ぼくの望んだのもふたつですし」

「うむ。それを聞いてもお主はそれでいいのか?」

「だって他にないので。それに、人外にはなりたくないですから」


 口のはしをつりあげて、ペコッとお辞儀。

 下を向いたときに見えたぼくの手は薄くなっていた。


「それじゃあの。その力をどう使うかはお主次第じゃ」

「はい。ちなみに名前なんです」


 少し意識が遠のいて、体中が暑くなり、息苦しくもなる。


 必死に動いているとなにか大きなものに捕まれ、引っ張られ、そして――


「産まれましたよ。元気な子だ」


 ぼくは生まれた。


 大きく息をすって…鉄臭くて思いっきりむせた。なにこれ、きっつい。はやく拭いてよお医者さん!

 チョキンという音がして、おへそから少し重みができた感じがして。そのままタオルにくるまれて、眠ってしまった。




 それから五年。ぼくは健康的に成長していった。

 勉強は前世があるので余裕のよっちゃん、運動は親の仕事の関係でダンスや友だちとのお遊びを。やればやるだけ成長、上達するからとても楽しい。と言っても毎日やるほどやる気があるわけでもないけども。

 あ、そうそう! 蚊にさされないの! 素晴らしいことだよ、ワトソンくん! あ、ついでに風邪とかも全然ひかない。前世が嘘みたいな快適さなんだよ……親もね。


 両親の話でもしようか。母親は元アイドル、父親も元俳優の現アイドル事務所のオーナーっていうなかなかすごい両親でね。

 週一とかでそのアイドルの練習場に行って見学したり、見よう見まねでダンスをしたりっていう恩恵を得ています。その代わりに両親は家にいることが少ないけども、前世の経験があるから寂しくはないしなんならアイドルを目指すイケメンと美少女が見れるのが嬉しすぎる。


 やっぱり顔面偏差値が高いね。中身がどうかは知らないけど。


「飴食うか? 最近販売されたやつ」

「食べる! ありがはむ」

「ふっ、せめて言い切ってからにしろよ」


 イチゴ味か……おいしい。


 こんな感じで色々くれたりする。ぼくのために飴持ってくるとか性格イケメンすぎる。

 ちなみにここに来る前に女子の方にいって違ったお菓子をもらっている。餌付けされてるわけではない。


「やっべ、そろそろ始まるぞー! 着替えてないやつははやく着替えろ!」

「ういー」

「もうそんな時間かー」

「待ってあと1クエ」


 男子は結構時間にルーズというか、女子とは違ってはやめに行動しない人が多いのだ。


 あ、筋肉すごい。うわぁひきしまってる……眼福。

 べ、べつにこれが目的で来てるわけではないですからね?


「ユウは……その格好でもう十分なのか」

「うん。それにいまは飴をなめる方が大事だから」

「ははっ、また買ってきてやるよ」


 そういって頭を撫でてくれるけど。たぶんこれぼくが女の子だって気づいてないんだよなぁ。ふっふっふ、もっと成長したあとの驚く姿が楽しみだ…。

 ちなみにユウはぼくのあだ名みたいなもので、お父さんがここに連れてきたときにぼくのことをユウと呼んだからそれが定着した感じ。


 ダンスの指導をする先生が来て、ダンスレッスンが始まった。


「はい! ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン、エイト。音楽を良く聞いて、リズムに合わせてー!」


 ダンスの先生のかけ声で、そろって同じダンスをするレッスン生の人たちを見つつ、ぼくはぼくで柔軟体操をしたり軽く真似をして踊ってみたりと……。

 ぼくも汗を流してレッスンの時間が終わると、お菓子をくれるお兄さんお姉さんたちは帰っていく。この近くに寮があるみたいなので、たぶんそこに。


「ユウさん、やっぱりセンスありますよ! 将来はぜひ、ダンスの道に!」

「はい、考えておきますね!」


 というやり取りもほぼ毎回している。

 こういう日常会話の声も、自分で聞いてていい声だと思う。きっと困らない体とコミュ力のパワーなのだろう……うん、すばらしい。


 あとは、幼稚園。一年後には卒園して小学校に通うのだけど、今は幼稚園に通っている。幼稚園指定の制服がやけに凝っているので、お高い幼稚園……いや、そういう話はやめておこう。

 通っている生徒はみんないい子で。うん、性格的な面でというよりも育ちの面でいい子なんです、前世が庶民的一般人ぴーぽーなぼくには少し遠い存在のように思える程度には。

 そのせいで、初めの頃は子どもたちの輪に入れず一人で読書をしていたのだけれども、ハル君とツキちゃんがきっかけを作ってくれたのとコミュ力チートのおかげでなんとか仲間入りできたのだ。


 ちなみにそのふたりはいまお友だちである。親友だと思ってるけどぼくが一方的にそう思っているとしたらそれはもうただただ痛いだけの勘違い馬鹿になるので言い出せずにいるというか嫌でももしかしたら親友になってるのかもしれない……いやでもやっぱりぼくから言うのは少しハードルが高いからうん、相手が言うまで友だちということに……


 まぁそれはおいといて。


 この二人とは幼稚園の外でも交流がある。というのもぼくとその二人の親が共通の知り合いらしくて、親同士の繋がりからなにかのパーティーとかに三人で行ったりと……うん、パーティー。おいしいご飯が食べられて満足です。

 もちろん遊ぶこともある。体を動かす遊びだったり、ゲームだったり、ピクニックだったり、映画だったり……前世にはなかった充実さなのですよ! ちなみにかけっこではハル君に勝てず、勉強ではツキちゃんに勝てない。

 ……ぼくは万能型なのだ。器用貧乏とも言うかもしれないけども。


 そんなぼくたち三人だけど、両親が言うには同じ小学校に入学する予定らしい。つい先日に聞いたことだけど、こうして幼なじみができるのか……と感動した。前世では親の都合で引っ越しが多かったから……うん。

 きっと幼馴染みとして腐れ縁として、ずっと仲良くいられるんだろうなぁ、という話を二人にしたら


「当たり前でしょ! わたしたちは親友なんだから!」

「そうだな。おれたちの絆は永遠に続くさ」


 と言われた。親友と言われて頬が崩れそうになったけど隠せたはずだ。あとハル君、最近読んだ小説に影響を受けているんじゃないじゃな。いつか「おれの左腕に強大な力が封印されているのさっ…!」とか言いそうでお姉さん心配だよ(経験者)。



 そんな日々を送って小学校に入学して、事件は起こったのだ。

YOU! アイドルグループの偉い人と言われると、まずその人を思いだすんですよ。

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