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未知との遭遇
俺の周りでは牛の鳴き声が聞こえ、元居た現実世界とあまり変わらない雰囲気だった。
もし、ここが現実世界であったなら夢と疑うか転生担当の天使とその上司であろう神に騙したなこの野郎と言ってやる。
「さて、どうしたものか。まずはこの牧場の経営主に会わないとな」
俺は腰に手を当て、眉を細めてあたりを見渡した。
すると、人間で言うところの女性と思われる知的生命体の高い声が聞こえた。
「あのー! 大丈夫ですかー」
そちらを振り返ると杖を持って駆け寄ってくのが見えた。彼女が足を駆ける度に青い髪の毛が揺れて、緑の中に川が流れるような優美さがあった。
彼女はかなりのスピードで走ってきたにも関わらず息1つ切らしていない。目の前に立った時、俺はここが異世界であることを確信した。
赤色の瞳を揺らしてこちらを見つめる彼女には一般的に人間又はホモサピエンスと呼ばれる生物よりも長い耳がついており、耳はぴくぴくと動いていた。
彼女はエルフだった。