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暗転
なぜこのタイミングで自分が顔をあげたのかわからない。しかし、見てしまった。
前に立っていた女子高校生が突然バランスを崩したのだ。
一瞬やじろべえのように揺れたあと前に倒れこむ。
その先は線路内。電車はもう目の前まで来ていた。
「危ない!」
本を放り出し、女子高校生の手を掴もうとした。
ゆっくりと時間が動いていく。
掴み、あまりの重さにびっくりしながらも馬鹿力を出してひっぱりあげた。
横に女子高生は倒れたが、線路内に落ちるという最悪の事態は免れたようだ。
「よかっ ――」
刹那、俺の視界は暗転する。
気が付いた時には俺の体は線路に放り出されていた。
電車のブレーキ音と白い光が俺の目に焼き付いた。