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恐怖するもの
俺の体に槍が突き刺さろうとしていた。
目を閉じる。短いけど、エルフと出会えてよかったよ。
空から落ちて、死にかけて、突き刺されそうになって死にかけて、今もう一度突き刺されそうになっている。
グッバイ。
シチューおいしかったよ。
ってやっぱりおかしい! なんでわざわざ転生させておいて…… こんなにも死にかけるんだ!
目を見開く。結論から言うと俺は死んではいなかった。かわりに「ニャー」という音が耳に聞こえた。
発声源はたぶん自分の口。視線は低くなり、テーブルからチェムの顔が覗いている。
おそらく、俺の等身が低くなったせいで空を切った槍と一緒にテーブルの上で腹這いになっていた。
彼女と目が合うと、なぜか突然叫びだした。
「ぎゃあーーーー、猫ぉぉぉぉ」
チェムは赤髪のツインテールをブンブン揺らしながら、半狂乱で椅子や床を突き刺し始めた。
俺は反射的に上から降ってくる槍を避けた。
どうしてこんなことに…… とほほ




