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名乗り
「大丈夫か。無理しなさんな」
おばあちゃんがしわがれた声でゆっくり言った。
「いえ、転生者さんを迎え入れるのは私たち一族の役目ですから」
無理に笑って見せるが、体が震えている。
「いきなりあんなドラゴン見せられたら誰だって倒れるわよ」
チェムはエルフを支えて椅子に座らせた。
「あなたの名前を聞いていませんでしたね」
彼女は少し弱々しく笑った。
なんだか申し訳ない気持ちになる。
「ああ、俺の名前は」
本名をいいかけたところで思いとどまる。
別にこの世界で本名を名乗る必要はないではないかと。チェムなんか明らか転生前とは違うだろう。
少し考えてから俺は答えた。
「サイトウだ」
やっぱりそのままでいいや。




