2 真夜中のお散歩 ……ずっと一緒にいようね。猫ちゃん。
真夜中のお散歩
ある日、僕は夢の中で猫になった。
猫になった夢の中で僕は一人の女の子と出会った。
女の子の名前は瞳と言った。
……瞳は、僕の太陽だった。
夢の始まり
……ずっと一緒にいようね。猫ちゃん。
気がつくと、僕は夢の中で真っ黒な毛並みをした一匹の猫になっていた。猫になって、真っ暗な廊下をなれない四本の足を使いながらひたひたと歩きまわっていた。それは暖をとるための行動だった。そこはとても冷たかったから、僕は体を温めることのできる小さな炎を求めていた。
だけど、どこまで行っても世界は真っ暗なままで、炎はどこにも見当たらなかった。僕は炎が無理なら、せめて古くても、ぼろぼろのものでもいいから一枚の毛布が欲しいと思った。暖かい毛布にくるまって、朝が来るまで、この真っ暗闇の中で静かに眠っていたいと思った。夢の中で眠りにつくというのはなんだか変な話だけど、でもそうしたいと思えるくらい、ここは寒くて仕方がなかった。
でも結局、どこまで歩いても世界は真っ暗なままで、いつまでたっても現状はなにも変わりそうもなかったのだけど、でも、それでも僕はそんなものたちを求めて、暗い廊下をひたひたと小さな足音を立てながら歩き続けていた。
お腹がとても空いていた。だから力が出なかった。夢の中だというのにお腹が減るというのも、これまた変な話だった。そんなことを考えていると風が、びゅーという音を立てて僕の周囲を吹き抜けた。寒い風だ。僕はぶるっと体を震わせた。今は春のはずなのに、吹く風はまるで冬の風のように冷たかった。もしかしたらこの夢の中では季節は冬のままで時間が止まっているのかもしれないと僕は思った。そういうことは夢の中では、『よくあること』だった。