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1 いつも、本当にどうもありがとう。

 思い出の一ページ


 プロローグ


 いつも、本当にどうもありがとう。


 本編


 みんなのこと、大好きだよ。


 死後の世界って本当にあるのかな? って、そんなことを思ってしまうときがときどきある。(……ちょっと、なさけないけど……)

 倉田美糸は暗い窓の外を見る。

 そこにはいつものように美しい、光り輝く大都市の夜景が広がっていた。

 その一つ一つのあかりが、まるで誰かの今、輝き続けている命の光のように思えて、美糸はなんだかとっても、希望に溢れるような、感動するような気持ちになって、泣くつもりなんて全然なかったのだけど、病院の真っ白なベットの上で、一人、涙を流して泣いてしまった。


「大丈夫、美糸ちゃん」

 少し時間がたったあとで、美糸の病室に入ってきたいつも優しい看護婦さんが、そう言って、いつものように優しい声と優しい笑顔で、美糸に声をかけてくれた。

「はい。大丈夫です」

 にっこりと笑って涙をピンク色のパジャマの袖で拭きながら、美糸は(真っ白な看護服を着ている)看護婦さんを見てそう言った。

 すると優しい看護婦さんは安心して窓のカーテンを閉めて、明かりを消してから、美糸の病室を出て行った。


「おやすみなさい」と優しい看護婦さんは言った。

「おやすみなさい」と美糸は言った。


 それから少しして、美糸はごそごそと体を動かしてベットの中に隠してあった一冊の画用紙スケッチブックを取り出した。

 その画用紙にはまだ、なんの絵も描かれていない。

 そのすべてのページが真っ白なままの画用紙だった。(そこには無限大の可能性があると美糸は信じていた)


「『……私たちは一日一日新しく生まれ変わる』」

 美糸はその真っ白なページの一枚をじっと見つめながら、とても小さな声で、まるで魔法の呪文のように、あるいはおまじないのように、……あるいは神様に祈りを捧げるようにして、そう言ってから(それは美糸が毎日眠りにつく前に行っている『おやすみの儀式』のようなものだった)美糸は今日も、いつものように安心できる場所で、ぐっすりとした眠りについた。

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