一歩前の切り札
肉片と血の川を作りながら、階段を進むポチとアテの前に、女の頭が現れた。その顔は既に異形のものとなりつつあった。
「ここまでよ。この化け物、殺戮者。」
その顔は怒りと自信と軽蔑とが現れていた。二人は何も言わなかった。
「どんなサイキッカーであろうと、化け物であろうと、兵器や機械を身に着けようと、精神の世界の攻撃には無力。無いと思おうとしても不可能よ。」
二人は無言で進むだけだった。
彼女、そう言うには身体すら異形なものとなっていたが、には侵入者の男女二人が幻影に怯え、逃げ惑い、自らの命の炎を消し去ろうとしているのを感じた。はずであった。
それなのに、その二人が目の前にいた。周囲は肉片と血の池だった。
「何があった?」
ポチの頭の中に、彼女の声が響いた。
「お前の感応攻撃は、その能力自体、曲げさせて貰った。お前は凄いよ、Sが三つつくくらいのサイキック・ソルジャーだったよ。お前の攻撃は仲間達に向かった、お前が私達に見ていたのは、自分の仲間達のそれを見ていたんだよ。ここの半ば、そして他の施設にいる仲間の全てはお前が葬ってくれた。え?お前が私達に接触した時には、私達はお前の考えも、感じるものも全て受け取っていたのさ。」
彼女の怒りが流れてきた。アテの思考に流れを変えた。彼女は声ともならない叫び声を上げて倒れた。その後、ポチとアテが肉片にした。
その時、精神波でも、肉体的にも、物質的にも圧力を感じた。小さな子供、外見上は、が目に入った。
「何故、我々、新人類を殺戮するのだ?」
「ラスボスがいたか。完全にモンスター化しているな。私の目的は、テラの独立…をあの崇高な兄妹のお二人に捧げているだけだ。自らの力から、モンスター化する輩など知らぬ。」
怒りがきた。
「アテ。頼む。」
数分後、全てが終わった。ポチはゼイゼイと荒い息を吐き、汗でびっしょりだった。高栄養剤のカプセルを歯で割り、中身を口の中に注ぎ込む。
「この程度で終わってくれたか。」
二人の切り札の一つ。アテがポチの身体を媒体にサイキックを使う。消耗は彼にだけ来る。アテは、面白そうに、喘ぐ彼を見おろしていた。彼は、気にする風でもなく、通信機を手に取ると、
「殲滅完了。」
ずっと前から構想して書き上げられない作品の、一部エピソード版。ここでの主人公二人は、当初の構想になく、チラッとだしたら、どんどん大きくなってしまったキャラです。
頭の中だと、名作になってしまうのですが、実際的書いて見るとそうはならない、自分ながらもどかしいというのがよく分かりました。かなり無理して、完結させてしまいましたが、このままでは挫折、エタりかねないところになりそう、それが癖になりそうに感じたため、何とか終わらせることにしました。
自分のことながら、恥ずかしい限り、創造したキャラ達にも申し訳ないと感じつつ、まだ、本編も含めてきっちり完成させたいと思っています。
最後に、少しでも関心を持っていただいて、PVしてくれた方々がいたことを感謝しております。