嫌がらせ
イダテンは、各施設に攻撃を加えた。ヒット・アンド・ランである。一撃を加えて逃げる、である。防御システムに多少の損害を与えたものの、大したことはないが、陽動、嫌がらせにはなっただろう。カリアは、その時その時に的確な指示を与え、副長のポチ以下、それに100%応じた。親衛隊高級将校服を着たポチが、カリアの指示に従うのは、全員が奇妙に思いつつ、一人を除き、面白みを感じていた。防空システムからの攻撃は予想以上に低調だった。動かしえる人材があまりに少ないためか、そちらより超能力による攻撃により人材をあてたためか、その両方のためであったか。大した被害は与えられたとは思えないが、至る所を攻撃しまくってから、親衛隊が進出している前線基地にイダテンは着陸した。
「いつから親衛隊は、大佐に中尉が命令を下す立場になったですか?」
ケンの一言で、その場が凍りついた。銀河連邦親衛隊の権威は高い。軍の大佐に親衛隊少尉が命令を下す場合もあるくらいだ。さすがにそれは、後日問題にはなったが。しかし、ケンは親衛隊大佐としての立場である。親衛隊のサイキック・ソルジャーであっても、中尉が上にたてる立場ではない。しかも、ケンはサイキック・ソルジャー部隊としての地位であり、D13部隊は全てのサイキック・ソルジャー部隊の上位にある、初めて知る事実であるが、のだからなおさらである。レアをはじめとして、面白がって、ケンを支持する立場であったが。
「では、命令を下す。」
悔しそうに、押し黙る面々を確認すると、ケンは口を開いた。
「ポチ。本当に大丈夫なの?あなたとアテの二人で、敵の本部に正面から突入するなんてことをして。あいつらが、裏手から、あなた方の状況を見て突入するとするという命令に従ったのは、あんたが死ぬまで、出てこいかないということよ。」
イダテンのブリッジで彼の後ろから尋ねた。
「それが第一統領の意志ですから。後は、適当に暴れまくっていて下さい。」
そう言うと、アテを連れて転送室に向かった。しばらくして、相手の本拠地まえに転送された。
「アテ。ゆくぞ。」
ポチが入り口に向かって進むと、アテは続いた。表情は、視線の定まらないままだが、機関短銃を手にしていた。ポチは片手に擲弾発射機付きの強火力小銃と、もう一方の手には大型拳銃があった。躊躇なく、入り口に向かって擲弾をぶっ放した。入口は瓦礫となって崩れ落ちた。
ずらりと自信満々な男女が待ち構えていた。そして、十分後、一人だけが階段までたどり着いた。足が半ば溶けかかっていて、腕を使って這いずってようやくたどり着いたのだ。
「何があったんだ。暴食細胞能力も、溶解液能力も、火炎能力も半ば自分自身を傷つけ、仲間を攻撃して、あいつらの通常攻撃を、防げないなんて。」
首をひねると、周囲に倒れる加速能力者、テレポーターに止めを刺した、男女二人が近づいてきた。まだ、はるかに強いサイキック・ソルジャーがいるんだと牽制して時間を稼ごうとしたが、それを許さないと言うように、女は無造作に、手にした機関短銃を乱射した。