初戦
「艦長。失礼。」
副長、今は特別親衛隊将校の制服を着たケンが、いきなり艦長のレナに銃口を向けた。カリア・レナは、悠然として、彼を見据えた。直ぐに彼愛用の大型ピストルから、銃弾が彼女に向かって発射された。しかし、銃弾に倒れたのは見知らぬ女だった。忽然と、二人の間に現れたのだ。だれもが唖然としている中、彼は、更に3回ビストルの引き金を引いた。その度に、忽然と現れた男女が銃弾に倒れた。いつの間に取り出していたのか、ヘラが機関短銃で倒れた4人に留めを刺すように、続けざまに銃弾を撃ち込んだ。艦橋内は大量の血が床を覆った。まだ、それで終わりではなかった。一人づつ、首にナイフを突き立てた。死んだと思われたのに、何故か大きく痙攣してから、静かになった。ケンは、血の海や異臭にも無関心な表情で、淡々と掃除の指示を出した。
「テレポーター?どうして事前にわかったの?」
ポチはつまらないことを説明するように、血の海と肉片の片付けの指揮と自らもその作業をしつつ、説明を始めた。
「精神波は、サイキッカーでなくとも分かります。なにがされようとしているのか、なにがされつつあるのかは、それを分析すれば分かります。何かをする又は阻止するのは難しいことですが、曲げるのは容易なことです。」
「感じて、出現場所をここに曲げて、出現時に銃をぶっ放したわけね。」
ポチはレナに感嘆するような表情を向けた。
「でもね、何もここにしなくてもよかったのではないの?」
「申し訳ありません。もうここから、テレポータでの攻撃を仕掛けてくるとは思いませんでした。そのため、ここに、とっさに誘導せざるを得なかったのです。」
「でも、酷い殺し方じゃない?あなたは、サディストかと思っちゃうくらいにね。」
彼女のからかいと不信感を交えた問に、彼は顔色も変えずに、
「モンスター化しているサイキッカー、ソルジャーは、細胞レベルでの再生能力の発動、若返りも含めて、精神レベルでの解放、再生も可能です。それを、別の方向、場所に誘導して断つ。完全な残留思念も、殺せます。」
「あなたが?それともアテが?」
彼女の目は彼を見通そうというように鋭いものに成っていた。
「アテと私が、です、と言うべきでしょうね。」
「あなたが、アテに命じてやらせているとは言わないのね?」
「アテは、純粋な天使ではありませんよ。」
彼の表情には嫌悪感はなかった。カリアは、確かに相手を殺す度に、日頃表情がない彼女が微かに見せる喜びのような表情に気がついてはいた。
「とりあえずは、攻撃は止んだと見ていいのかしら?親衛隊大佐殿?」
皮肉を込めた言い方に、流石にポチも嫌そうな表情を見せた。彼女はそれを見て、少し態度を改めた。
「これから、こちらの残っている拠点、第8基地に直行する予定だけど、若干変更しない?」
「変更内容は?」
彼は、彼女の考えを実行する前提で尋ねた。
「イダテンで、幾つかの拠点を攻撃させてちょうだい。イダテンには、対サイキッカー装備があるし、あなた方が彼らの攻撃を、あなたが言うように曲げればいいでしょう。通常攻撃は、イダテンなら何とか避けながらできるし、それに彼らの人数では防衛システムを動かすのですら不足しているし、これは単なる推測だけど扱える人数はさらに少ないと思うのよ。彼らの動揺を多少とも誘えるわよ。」
ポチは笑って
「分かりました。許可しますよ。」