第1統領、D13部隊復帰を命令
第1統領府に直行だった。ワープを繰り返して、急ぎに急いだ。中央星系と言われる銀河連邦中枢部の中の中枢部である。絶対的な権限を有する存在がいる。そもそも、この星系にレア以下入ったことはない。呼ばれているケンとヘラにしてもそうだ。
戦闘艦の駐艦スペースで、イダテンの中にレア以下そのまま待機、ケンとヘラにのみ迎えが来て、2人はその迎えの車両に乗り込んで、イダテンを後にした。迎えにきた係員のケンを見る目は、いかにも胡散臭いものを見ているというものだった。
二人は、第一統領府連邦軍総司令部の奥に案内されていった。その中の親衛隊本部。たまにすれ違う男女が怪訝そうな視線を送ってくる。さらに奥の一室に通された。大きな声で、彼等を連れてきた士官が報告した。正面の人物が視界に入った。ポチ・ケンは直立不動の姿勢で最敬礼をした。アテ・ヘラは、定まらない視線で、彼に寄りかかるようにして、前をみた。中央の女が周囲を抑える指示を手で送った。長身の栗色の髪、見た目40前の、ゆったりとした、白い衣服をまとう女が口を開けた。
「二人とも久しいですね。まず、D部隊への復帰と、ポチ、臨時的措置として親衛隊大佐に、アテを親衛隊サイキック・ソルジャー少佐に復帰させました。連邦首都太陽系第5惑星中枢都市を占拠したサイキック・ソルジャー、推定1000名を速やかに殲滅することを命じます。同惑星の戦力は、全てD部隊の指揮下に入らせました。親衛隊、特別親衛隊も例外とはしません。以上、質問は?」
「D部隊は、いつ復活したのですか?」
「先ほど、復活させました、臨時的に。」
「殲滅、でよろしいのですか?」
「殲滅と言いました。彼等は既に、モンスター化しかけています。早晩、完全なモンスターになるとAIは予測しています。」
ボチ・ケンは何も言わず頭を深々と下げた。
「特別親衛隊の制服に着替えなさい。識別確認の時間は短いほうがよい。早く納得させるのには、外見からが一番ですからね。それから、最新鋭装備を好きなものを好きなだけ持っていきなさい。既に手配してあるから、案内人させます。何か質問は?」
「緊急事態と言うことなのですか。ならば、現地の状況とともに、その理由も知らなければ、作戦を進められませんが。」
側近が、ポチの言葉を窘めようとしたが、第一統領が手で制した。
「第4惑星を占拠しています。あそこは、この星系のシステムの中枢です。防御システムは、今だ保っていますが、解除され、彼らの手に落ちるのは、時間の問題です。ここが彼らの自由になったら、軍民両部門で大きな被害が出るでしょう。彼らは、大きな交渉材料、脅迫手段を得ることになります。また、銀河全体の移動手段を得ることになります。一時的とはいえ、どこにでも、何時でも、テロができるようなります。」
ポチは、ゆっくりと頭を下げた。
「さあ、二人を連れて行って。」
二人が退出すると、
「あの二人だけでいいのですか?他のD部隊のメンバーも復帰させるべきでは。あるいは、あの二人は親衛隊サイキックソルジャー部隊の囮なのですか?」
副頭領の一人が心配そうに言った。
「D部隊は3人のみ。あとの一人は、少なくとも、銀河連邦内にはいないでしょう。そして、3人でモンスター化したサイキックソルジャー十数万人を皆殺しにしたのです。」
彼女は、厳しい表情で答えた。
「その中の最強の一人は、今どこにいるかも分かりません、つまり先ほど言った一人です。3人が2人になっただけでも、大きく戦力は落ちます。まあ、あの時の1/100以下でしょう。」
「それでも、数千に対抗できると。」
「彼ら2人は、更に強くなっています。それにつけくわえて、あの頃と異なって、最新鋭の装備費を身に付けてもらいますから。」
「それでは、あまりにも危険では?」
「あくまでも、超能力戦士相手ですよ。対人、対兵器では、話は違いますよ。」
真っ青になっている副統領を安心させるように優しい調子で語りかけた。
「三竦みというやつですか。」
それなら、なにかあれば容易に始末できますね、という考えでいるのがすぐにわかった。
「そうだといいのですけどね。16名の刺客を殲滅したのも、襲撃部隊を全滅させたのも、あの二人なのですよ。」
周囲は戦慄した。彼女が、行方不明状態から帰還を果たし、再び第一統領選に復帰した時、16名の特殊兵が襲撃を受けた。後から、彼らが銀河連邦内部でも恐れられた特殊兵士達であることが判明した。その後、重火器装備の部隊の襲撃も受けた。
「その上、ソーリスト、もう一人のD13部隊員、がね、あの二人は、切り札を隠している、自分も危なくなるやつを、と言っていたわ。え?それでした彼らを?ソーリストが恐れるほどのそれが、そんなものだったら、心配はしないわ。ソーリスト?、今どこにいるのかしらねえ。」