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ポチとアテ

ずっと構想している大作の中から飛び出た、肝心の本編が無いのに書きたくなった、広大な(その予定)本編の序章のはずなのですが。

「ポチはどこ?」

 銀河連邦軍重武装偵察艦艦長カリア・レアは、常に誰よりも早く艦内いる副長のポチ・ケンがいないことに戸惑いを感じた。 

「副長は、司令官に呼ばれてアテと共に司令部に行きました。」

 機関員のカリコロがレアに敬礼した。ポチは司令官トマ・スモールの直属の人間である。その「直属」という意味が分からず、レアは当初ケンに悪い印象を持った。極めて優秀だったが、反抗的、傍若無人、破天荒なカリア・レア中尉の行動は既に伝説化すらしていたから、当然彼女のお目付役だと思ったのだ。

「何なのかしらね?こちらには、連邦首都に行けと命令したくせに、詳細は後で伝えるから準備を進めておけと。それなのに副長が行方不明だなんてどういうことよ。」

 長い黒髪、やや青みがかった瞳の若い美人士官は憤慨していた。すらっとしているが、極めて女性的な魅力的な容姿を銀河連邦軍の戦闘服は隠していない。

「どういうことだと思う?」

 かたわらの小柄でハゲ頭のヨーに尋ねた。彼は、レアやケンと違い地球、テラ系の人間ではない。ただ、ケンやヘラとはイダテン配属前からの知り合いであり、ケンは「先生」と呼んでいる。

「アテが一緒なら、どちらにせよおいていけないか、アテが絡んでいるとなると二人に特別な、かなり危ない任務をということになろうし、銀河連邦軍、というよりは、銀河連邦のかなり上からの命令でしょうな。」

「まさか、あんな屑が。」

 脇からキムが、罵るように割り込んできた。兵器管制官で、レアの部下ではあるが幼馴染みである。そして、出身階級を同じくするケンを毛嫌いしてもいた。

「確たることはわかりませんがな。わしとあの二人が別れた後のことですからな。」

 ヨーはキムを無視して続けた。

「二人が将校になって現るまでの3年間になにがあったのかは、何も存じません。ただ、現第一統領とともに帰ってきたということは事実ですな。」

「あの訳の分からない階級名もその時に?」

 レアにすり寄るように脇に立つバジァが口を挟んだ。小柄で、明るい赤毛の若い女性通信員である。レアにくっついて離れようとしない。任務中は勿論別だが。

「ポチの階級名も。」

 最上位首席最上級最高最高級特別最上等下士官超主席下士官総長、銀河連邦軍で彼一人、しかも正確な意味を知る者すらいないのではないかとさえ思えるる。少なくとも大尉相当、艦長であるレアより上であるという説もある。

「アテもだけどね。」

 ヘラは、まだましだが、上級特別超能力士官、これも彼女一人だけである。 

「ふん。使い物にならない超能力者が。」

 キムはまた、馬鹿にするように、舌打ちした。彼女は、当初ヘラには友好的だった。ケンの地位が彼女を自分のものにしているからと思っからだ。彼女が支配されている、助ける、という思いもあった。しかし、ヘラが、定まらない視線の、精神の安定がなく、下着の着脱すらケンが世話している状況を見て、彼同様嫌悪の対象になった。レアは彼女の性格、考えが分かりながら、彼女への友情は変わっていなかった。

 ”あれはポチと出会って3ヶ月くらい時期か。“

 社会学者として、サモールの下で働いていた時、奴隷兵士としてサモールの元にいたポチに出会った。彼はサモールに可愛がられているわけではなく、どちらかどいうとあまり関心を持たれていないようだったが、ポチの方は、それでも彼に感謝しているようで献身的に働いていた。あの日、3人は低能力超能力者の施設視察のため訪問した。入館して暫くして、一人の少女が、いかにも待っていたというように近づいて来て、ポチの腕を、つかんで放さなかった。それが、アテ・ヘラである。その時彼女は微笑を浮かべていた。それは、天使のようでもあり、悪魔のようでもあった。どうしても離れようとしない彼女のことで、しばしすったもんだの末、サモールの元に預けられることになった。一年後、スモールが辺境での任務についたため、2人は当然彼に従い、ヨーとは別れた。それから一年後、サモールとヨーは再会したが、2人は彼の傍にいなかった。サモールは、かなり沈み込んでいた。詳しい話しは聞かせてもらえなかったが、2人は行方不明、絶望的だということにだった。それが。その一年後2人は、当時の次席統領、現第一統領、とともに彼らの前に現れた。なにがあったかは機密事項だということだった。

 そうこうするうちに、イダテンにケンとヘラが現れた。

「申し訳ありません、遅くなりました。」

 彼はレアに敬礼した。

「聞きたいけとはいっぱいあるけど、おいおい聞かせてもらうわ。出発準備よ。」

 レアは敬礼を返し、そう言って背を向けようとした。

「艦長。それが行く先が若干変更になりました。」

 ボチが申し訳なさそうに言った。

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