[オリジナル]キンモクセイの花
変化しても傷ついても何れ何処かで咲くだろう
家の中に歩いていたら、キンモクセイの香りがした。
そろそろそんな季節か、と誘われるようにして庭に出ると咲いていないし、香りもしない。
家の中に戻るとかすかに香りがする。
どうしたものやらと思案していると、私を見かけた妻が伝えてくる。
今日の風呂はキンモクセイ、とのこと。
そうか、入浴剤か!
ぽんと手のひらを打って、最近のは自然感じになったなぁ、と納得した。
疑問は解決したが、新たな疑問が生まれた。
本物のキンモクセイはどうしてしまったのだろうか?
そろそろ咲いてもいい時期なのにどうして咲いていないのだろうか?
庭に出て、木のそばに寄ってみると、根本を掘っているような跡がある。
おそらく植木職人が木を移動するために掘り始めたところなのだろう。
日曜は職人が休みだから、最後まで出来なかったのかもしれない。
そう思って木を見ると、どこか元気が無いような気がした。
縁側に座り、キンモクセイの花を見ていると、妻が湯のみと菓子をお盆に乗せてやってきた。
二人分の茶を置き、菓子は大鉢なので真ん中に置くと、同じくキンモクセイを静かに見やる。
茶の啜る音と、せんべいを食べる音が響いた。
この光景が見られなくなる日が来るとは思わなかった。
そうですね。いつまでもここに住むと思ってましたから。
慣れ親しんだこの家は。
もうすぐ人手に渡る。
お金に困ったわけじゃない。
田舎の二人暮らしは危ないと、息子夫婦が近くに住まないかと相談してきた結果だ。
部屋を見やればガランとした空間が多い。
引っ越しで処分してしまった家具のそれもある。
貧しい上に寂しい我が家になってしまった。どこかの言葉に引っ掛けて頭の中を思いがよぎる。
されど、
旅立つ寂しさはあれど、出会う楽しさもある。
見知らぬ町、もうすぐ自分たちの住む街で出会う人達もあるだろう。
金持ちではないし、しがらみも少ない。
居を変えるのもまたいいものだ。
願わくば、ウチのキンモクセイと同じく、良い旅、良い人に会いたい、あって欲しい。
植え替えで傷ついたキンモクセイが花を咲かせる頃には、
私達も新しい街に根付くことだろう。
(余分な)おまけ
「おじいさんの初恋って私ですよね」
「そうだな」
「自作の下手な詩をそれこそ自己陶酔して告白っぽいものをしてくれたんでしたっけ」
「ぽいって言うな。あれでも頑張ったんじゃぞ」
「いや、とてもとても下手でしたよ」
「ぐぬぬ……」
「……でも、その中におじいさんの本当を見たから付き合ったんですけどね」
「けなされたり、持ち上げられたり忙しい人生だった……」
「あやしたり、叱ったりの楽しい人生でした」
「ははは、一生勝てそうにないわ」
「これからもよろしくおねがいします」
こっちの方が疲れません。
でも色々なジャンルを書いてみたい。
ダメなら試行錯誤。器用な人ではないのは分かりきっているから。傷だらけで進みます。
しかし、まぁ、この作品は誰得なんでしょうね。
ターゲット層とかすっかり忘れてました。勢いのみです。すみません。
残り@4つ。
時間を区切って書くと、自分の弱いところがありますね。
キャラクター設定など、文章にしないと細部が見えてこない。
細かく書いてみよう。