1話
投稿しないと絶対にお蔵入りになるので、とりあえず投稿。
超絶遅筆です。
「チッ、逃げるぞ!」
そう声を上げた青年の後ろから巨大な熊が襲いかかる。恐ろしい巨体から振るわれる剛爪を青年は後ろに大きく飛ぶことでなんとか回避をした。
「圭太! 早くこっちに!」
杖を持った魔法使い然とした少女が青年を促す。そして、少女は呪文を紡ぐ。
『音をも置き去りにする疾き迅雷よ!』
少女の杖から一筋の雷閃が巨大熊に向けて放たれる。呪文の如く、音が響くよりも早く直撃した雷閃だが、巨大熊は身じろぎ一つして、なんとも無かったかのように再び襲いかかってくる。
「やっぱり攻撃が効いてねぇ! 冗談だろ!」
「そんなこと分かってる! 早く逃げなきゃ!」
叫びながら時々、少女が魔法を放ち、少年が攻撃を誘い、熊の足止めをするも両者の距離は徐々に縮まっていく。少女の額からは大量の汗が滲み、限界が近いことを予期させる。
「香里、お前は逃げろ」
「圭太!?」
青年は突如と立ち止まり、決意をする。
「大丈夫だ。ダメージは与えられないが、奴の攻撃だって避けられる。それに、足が早い俺ならお前が逃げ出した後にだって逃げられるさ」
少女は察した。この少年はここで死ぬつもりだと。攻撃を避けるのは紙一重のギリギリだった。体力も消耗した今では一体どれだけの間避けられるのだろうか。
それでも、少年の決意を察してしまった少女は、無駄死にする訳にはいかなかった。
「……分かった。絶対生きて帰ってきてね」
「任せろ!」
そう言って、今にも恐怖で泣いてしまいそうな表情を引き締めてで熊に相対した。
その瞬間、熊の心臓に一本の短剣が突き立てられた。
つい寸前まで気配も何も無かったというのに、一人の少女が熊の真正面に立っている。少女が短剣を引き抜くと倒れた熊は泡のように消えていく。それを見届けた少女はこちらに振り向いた。
少女は黒かった。そして白かった。
淀みの無い真っ白な左目と、濁った真っ黒な右目。
吸い込まれそうなほど美しい黒の髪に二本の白いメッシュが入っている。
灰色のパーカーと白黒のチェックのスカート、黒いニーソックスに白いもこもこの靴。
全体を見ても、白と黒以外の色が全く無い。まさにモノクロの少女。
青年、圭太もその隣にいる香里もあまりの驚きに固まっている。自分達が傷一つ付けられなかった敵を一撃で倒した少女。ひと足早く正気に戻った圭太は少女にお礼を言った。
「あ、あの、助けてくれてありがとうございます。その、貴女に助けて頂かなければ今ごろ自分達は……」
その言葉に少女は……